『合気ニュース』という季刊誌が名前を変えまして『道(どう)』という名前になったのですが、そこで、空手家の金澤弘和氏と空手家の宇城憲治氏が対談してます。金澤氏が養神館で稽古したときのことを語っているので引用してみます。
塩田先生は、空手は直線だけれども、合気道は円だよとおっしゃるんですね。直線には円が一番なんだと。当時意味がよくわからなかったのですが。「金澤君、ちょっと突いてきなさい」と言われるので、最初は躊躇したんですが、言われたとおり思いっきり突いた。あ、危ない、当たったかなと、どきっとした瞬間、もう僕は投げられていたんですね。飛んでる間に、しまった、ああなるほど、と思いました。直線には円でちょっと方向を変えればまわれる、というようなことを理解したこともあります。(『道』春号p.29より)
塩田剛三著の『合気道修行』p.158あたりにも金澤氏が養神館で稽古したことが書かれてますが、やはり同様の内容ですので事実であったのでしょう。
金澤氏はその対談で次のようなことも言っておられます。
いろんなことやってましたから、先輩たちには金澤は浮気者だ、いろいろなものに手をつけるといわれてました。ある先輩に「おまえ本当に強くなろうと思ったら細く深く掘らなきゃ駄目だ」と言われたので、僕は言ったんです。「僕はほかをやったからって、空手の練習量を少なくしているわけでは決してない。むしろ練習量は人に負けないくらいやっている。その他の時間でほかの勉強をしている。やはり深く掘るならば、幅広く掘ったほうが崩れない。細く深くでは、途中でぽんと崩れてつまってしまう危険性がある」と。
他の武道を経験しなけれは幅広く掘れないということもないでしょうが、他のものを経験することにより幅広い視点を得やすくなるのは確かだと思います。よく言われることですが、コップを上から見たら丸く見えるが横から見ると四角く見える。同じひとつのコップなのですが、視点を変えることで見え方が違う。つまり、人間というのはたいがい二次元的にしか物事を見れないわけですが、見ているものは三次元的な物体なので、あらゆる角度から見てそれを綜合することで実像である三次元の対象物を把握しなければならない。そういうことなのかなと思います。