合気道龍大阪 村川真啓のブログ

主として、合気道龍大阪の稽古内容をアップしています。

正面打ち

2007-02-12 13:29:48 | 合気道

安藤毎夫師範のブログhttp://aikidoryu.exblog.jp/に、植芝盛平先生の『武道練習』に基づいた解説が載っています。まず「正面」ということで、つまり、今の養神館の技法でいう「正面打ち」の解説です。

植芝盛平先生は、「動作も陰陽合致の業を手刀に及ぼして打ち込む」という表現をしており、「陰陽合致」と言った場合、その意味あいはいろいろな取り方があり、解釈も拡がっていくことと思います。

しかし初心者はまず、安藤師範が書かれているとおり、「手刀に心を乗せて打ち込む」というところから始めてみるのがいいのではないかと思います。

私の生徒も言っていたのですが、「正面打ち」という動作は現代人の感覚からいうと武術的にあまり有効でないようにも思えるかもしれません。もしかしたら、「片手持ち」よりも非現実的かも。なぜなら、相手の腕や衣服の一部を掴んで動きを封じて次の攻撃に変じるというのは、戦術的にはわりとオーソドックスだからです。

ここで視点を変えてみましょう。合気道は「剣の理合」に基づいているとは、よく言われることです。日本は江戸時代まで武士階級が存在し、武士はみな日常生活でも真剣を差して往来を闊歩していたようです。武士として生まれた人は、程度の差はあれ、ほどんどが剣術をたしなんでいたことでしょう。そういう人たちが徒手による当身を行うとなったとき、手刀による打ち込みというのは、我々よりも自然な動作であったろうし、また、威力もあったことだろうと想定できます。

つまり我々は、正面打ちが実戦的か実戦的でないかを問う前に、正しく威力のある正面打ちの打ち方ができているかを、まず検証しなければならないということです。

試しに、今、手刀を頭上に振りかざし、自分の正中線から逸れないように何回か真下に切り下ろしてみるとよいでしょう。速くしたり遅くしたり、力を込めたり力を抜いたり・・・。

どうでしょうか。すべて同じ軌道で切り下ろすことができたでしょうか。多くの人が右に曲がり左に曲がり、ギザギザになったりと安定しなかったのではないかと思います。まず、こういうことが正確にできなければ、正面打ちを論ぜられないでしょう。

こういう練習は、肉体的な苦痛もほとんどありませんし、部屋の中でも座ってでもできます。また、木剣や杖などの武器を用いての素振りも効果的です。木剣を使うと木剣の重みがガイド役をはたしてくれますので、軌道のブレを修正しやすくなります。ですから注意点としては、最初は力をあまり入れないことです。剣を上に振りかざしたら剣の重みに身をゆだねてゆっくりと振り下ろすようにします。慣れてきたら少しずつスピードを上げればよいでしょう。そして止めるときに全身を引き締めるようにして、ピタッと止められるようにする。

普段の稽古でも、実は、手刀の切り下ろしの練習はしています。それは、臂力の養成(一)の戻りの動作です。おそらく、かなりの人が、行きの動作には注意を払っていても戻りの動作にはあまり気を付けてないのではないでしょうか。臂力の養成(一)は行きで振りかぶり、戻りで切り下ろす動作であり、これがセットになってひとつの循環が生じます。出した力は収めなければなりません。この戻りの動作で、無駄な力みなく手刀を切り下ろし、切り下ろしきったところで、最初の構えの姿勢に戻っていなくてはなりません。

余談になりますが、体の変更でも戻りの動作は重要です。体の変更(一)の戻りの動作は、正面打ち三ヵ条抑え(二)で前足を引く動作と類似してます。体の変更(二)の戻りの動作は、肘締めや三ヵ条(二)の極めのときに使われてます。

話を戻しまして、手刀を真っ直ぐ垂直に振り下ろすことができて初めて有効な正面打ちができます。我の正中線と相手の正中線を結んだ面を、空手家の柳川昌弘氏は「正中面」と呼んでいますが、その正中面に沿って正面打ちを打ち込んでいきます。正面打ちが当たった際には、磐石の構えの姿勢ができているようにする。そのような正面打ちができると、受けが中心を守る力が弱い場合、それだけで受けを腰砕けにすることも可能です。