初めてキスを交わした夜から、当たり前の様に二人の距離は近づいて行った
“近づく”と言う表現はきっと間違っていると思う
“二人に戻った” という事なのだと思う
俺にとっても海にとっても、一緒に過ごす時間は総て必然だし、それが自然そのものだったから
『光、私ね 友達から“あんた急に大人っぽくなったね、恋してるでしょ?”って言われたんだ』
南青山にあるカフェで、外の雑踏を遠く見ながら海が言った
『俺もかな 自分が作る曲調が変わったって言われたのは海に逢った頃だけど、
人間まで変わったとか言われるよ、最近』
片手にハンバーガー、片手にアイスコーヒーを持ってふがふが話す俺に
『もう、落ち着いて食べなさい』
と笑いながら叱る海の顔は、誰が見ても輝いて映るだろう
毎朝、海からのモーニングコールで目を覚ます
電話を掛けてくる海も『ベッドの中だよ』と笑う
お互いの目が完全に覚めるまでもごもご話し、必ず最後に
『じゃあ ル・デコの前でね』と電話を切る
ル・デコとは、俺の通っているスタジオの前にあるカフェで、今二人が笑っている場所の事だ
いつもその後は、俺がスタジオに、海が大学に向かう
夏休みだから、俺がスタジオに入っている間、海は何かの研究をしに大学の図書室に通っていた
俺は渋谷、彼女は青山だからこの場所がとっても気に入っていたのだ
『ところで海ってなんの研究をしてるの?』
この頃の俺は何度この質問をしたのかな
『言ったでしょ、珊瑚礁の研究だって 日本の近海では見られない珊瑚礁で、
とっても珍しい種類のプランクトンの塊が付着してね、虹色に変色して見えるの
この珊瑚礁は薬としても注目されていてね、医学の・・・』
『はいはい 解った 解りました ~ すいませーん』
だいたい同じ話の同じ場所でさえぎっては
『もう 最後まで聞かないんだから』
と少し不貞腐れて見せる海に
『ほんと、ごめん 怒った?』
毎回あわてる俺 そして毎回決まって
『うっそだよーん』
あの笑顔に戻る海
この時の俺は、海の顔がほんの一瞬だけ 曇る事に気が付きもしなかったね
沢山の人通りがある表参道の交差点で、軽いキスをしてそれぞれの時間に向かって別れる
そして当たり前の様に、遅くなっても夕方にはまた同じ場所で再開し、
夜ご飯を食べたり、映画を観に行ったりして ごく普通のデートを過ごし 海を家まで送っていく
毎日が同じ繰り返しでも、お互いにとってなんの不安もない幸せな時間だった
『光、今度光のライブだけど、初めて見に行くじゃない その前に光の曲、全部聴きたいな』
新宿のロフトと言うライブハウスで、俺のバンドのライブがある数日前に海が切り出した
『良いよ ちょうど俺も海に話そうと思っていたんだけど、
バンドの仲間とかに「彼女紹介しろよ」って責められてたんだ
今まで女っけなんてなかったから、皆に冷やかされるんだよな
照れ臭いって言うかさ 苦手だなぁって思いだったんだけど、
今度スタジオに呼ぼうと思っていたんだ 当然、海が嫌じゃなかったらなんだけど・・・』
『嬉しいよ』
本当は、誰にも見せたくないと言う気持ちと、皆に自慢したい気持ちが入り混じって
なかなか言い出せなかっただけなのだ
人を好きになるとか、皆の輪の中で心から笑っている自分とか、
海に再開する前までは、想像も出来なかった筈なのに・・・
俺自身が凄く変わっていっている事が心地良かったな あの頃
俺の横できらきら輝く妖精は、毎日まったく新しい俺へと覚醒させてくれる
俺の総てが海だし、それ以外の事は海が居るからこそ存在しているのだと思っていた
だからこそ、気が付かない事がある
この時はまだ・・・
夏の物語が始まる
“近づく”と言う表現はきっと間違っていると思う
“二人に戻った” という事なのだと思う
俺にとっても海にとっても、一緒に過ごす時間は総て必然だし、それが自然そのものだったから
『光、私ね 友達から“あんた急に大人っぽくなったね、恋してるでしょ?”って言われたんだ』
南青山にあるカフェで、外の雑踏を遠く見ながら海が言った
『俺もかな 自分が作る曲調が変わったって言われたのは海に逢った頃だけど、
人間まで変わったとか言われるよ、最近』
片手にハンバーガー、片手にアイスコーヒーを持ってふがふが話す俺に
『もう、落ち着いて食べなさい』
と笑いながら叱る海の顔は、誰が見ても輝いて映るだろう
毎朝、海からのモーニングコールで目を覚ます
電話を掛けてくる海も『ベッドの中だよ』と笑う
お互いの目が完全に覚めるまでもごもご話し、必ず最後に
『じゃあ ル・デコの前でね』と電話を切る
ル・デコとは、俺の通っているスタジオの前にあるカフェで、今二人が笑っている場所の事だ
いつもその後は、俺がスタジオに、海が大学に向かう
夏休みだから、俺がスタジオに入っている間、海は何かの研究をしに大学の図書室に通っていた
俺は渋谷、彼女は青山だからこの場所がとっても気に入っていたのだ
『ところで海ってなんの研究をしてるの?』
この頃の俺は何度この質問をしたのかな
『言ったでしょ、珊瑚礁の研究だって 日本の近海では見られない珊瑚礁で、
とっても珍しい種類のプランクトンの塊が付着してね、虹色に変色して見えるの
この珊瑚礁は薬としても注目されていてね、医学の・・・』
『はいはい 解った 解りました ~ すいませーん』
だいたい同じ話の同じ場所でさえぎっては
『もう 最後まで聞かないんだから』
と少し不貞腐れて見せる海に
『ほんと、ごめん 怒った?』
毎回あわてる俺 そして毎回決まって
『うっそだよーん』
あの笑顔に戻る海
この時の俺は、海の顔がほんの一瞬だけ 曇る事に気が付きもしなかったね
沢山の人通りがある表参道の交差点で、軽いキスをしてそれぞれの時間に向かって別れる
そして当たり前の様に、遅くなっても夕方にはまた同じ場所で再開し、
夜ご飯を食べたり、映画を観に行ったりして ごく普通のデートを過ごし 海を家まで送っていく
毎日が同じ繰り返しでも、お互いにとってなんの不安もない幸せな時間だった
『光、今度光のライブだけど、初めて見に行くじゃない その前に光の曲、全部聴きたいな』
新宿のロフトと言うライブハウスで、俺のバンドのライブがある数日前に海が切り出した
『良いよ ちょうど俺も海に話そうと思っていたんだけど、
バンドの仲間とかに「彼女紹介しろよ」って責められてたんだ
今まで女っけなんてなかったから、皆に冷やかされるんだよな
照れ臭いって言うかさ 苦手だなぁって思いだったんだけど、
今度スタジオに呼ぼうと思っていたんだ 当然、海が嫌じゃなかったらなんだけど・・・』
『嬉しいよ』
本当は、誰にも見せたくないと言う気持ちと、皆に自慢したい気持ちが入り混じって
なかなか言い出せなかっただけなのだ
人を好きになるとか、皆の輪の中で心から笑っている自分とか、
海に再開する前までは、想像も出来なかった筈なのに・・・
俺自身が凄く変わっていっている事が心地良かったな あの頃
俺の横できらきら輝く妖精は、毎日まったく新しい俺へと覚醒させてくれる
俺の総てが海だし、それ以外の事は海が居るからこそ存在しているのだと思っていた
だからこそ、気が付かない事がある
この時はまだ・・・
夏の物語が始まる
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