■メキシコに完敗。1-2。
スコアは1-2だったが内容的にはほぼ完敗だった。ザックの試合後のインタビューの通り。日本が主導権を握ったのは前半立ち上がりからの25分くらいだけだった。前半はかろうじて0-0で終わらせた。
しかし、後半9分に香川の同僚エルナンデスにヘッドで決められると、最後までほぼ防戦を強いられた。
21分にはドスサントスのCKからゴールニアでミエルのバックヘッドに再びエルナンデス合わせる。後半13分酒井宏樹と交代した内田がついていたが何もできなかった。
酒井は試した要素が大きかったので、内田にここで替えたのはまだ理解できるとして、負けているにもかかわらず、このCK直前に、前田に代えて麻也を入れた意味はまったくわからない。もともとスタメン落ちは疲労のせいと言われているが、最後まで精彩がなかった。
2点を取ったメキシコは、26分にグアルダード、33分にドスサントスと活躍した攻撃の主力をディフェシブな選手に代え、あきらかに引いて守る作戦に出る。
そのおかげで日本に少し攻撃の時間が長くなったが、決めきれなかった。
メキシコは明らかに「1点取られても負けない」意識でプレーしていたと思う。故障の長友に代えて、憲剛をそのまま後退するなどかなり強引に点を取る姿勢を見せたということもある。
41分左サイド香川から右で駆け上がったフリーの遠藤にファークロスが出る。ゴール中央へ切り返したボールを飛び込んできた岡崎が確実に決めてようやく1点返すにとどまった。
これはもうメキシコの想定内だろう。45分には2トップの1人ヒメネスも代えてさらに守りを固めるメキシコ。
にもかかわらず、ロスタイム早々に内田のファールでエルナンデスにPKを奪われる。ハットトリックを狙ったエルナンデスだったが、見事にコースを読んだ川島がこれをはじき返す。こぼれ球にも反応したエルナンデスだったがバーにあたって事なきを得た。
5分のロスタイムも時間をうまく使われあっという間に終了。
完敗だった。
■順位、勝ち点通りの実力だった
終わってみれば3戦全敗。勝ち点0。この試合への期待が大きかっただけに、結局何も証明できずに終わってしまったことに落胆は大きい。
ブラジル、イタリア、メキシコとの差はまだまだ開きがある。というより決定的な実力差があることを確認するだけにとどまった。
いい試合はするが勝てない日本。世界の評価はそのままだ。
当たり前だけど、サッカーはいい内容だったかどうかで勝負するわけではない、パスは回るし、負けてる時には点を取れるけど、同点、逆転の点は遠いチームが相手にとって脅威となるはずもない。
Aグループは実力どおりの結果、順位となった。ブラジルが地の利もあるけど、それを差っ引いても圧倒的に強かった。何をとっても他の3チームに勝ち目はなかった。
イタリア、メキシコは大きな差はなかったかもしれないが、そこはやはりW杯を何度も制している「格」の違いだろう。
そしてメキシコは間違いなく日本より上だった。残念だけどしかたがない。自分たちの世界での立ち位置を見極めることもこの大会の課題だったはずで、そう言う意味でははっきりとわかった。
あと1年。ここからが勝負。今の日本の実力は、「うまくいけば予選を突破できるかもしれない」というあたりじゃないだろうか。メキシコはベスト16の常連だし、前回はともかくイタリアはベスト8、ベスト4、時には優勝を争うようなチームに違いない。
そしてブラジルはもちろん優勝争いの常連なのだ。
■個の力
世界のトップで活躍する選手が今回も口々に語ったのは「個のレベルアップ」がもっともっと必要だということ。香川、本田、長友、岡崎といった日本の主力が繰り返し口にした。
大会を通じてもっとも働きが目立ち結果も残したのは岡崎だろう。得点力はもちろんだが、前戦での守備の激しさを継続し、長友並の身体能力を獲得したと感じる。本来の裏を突くプレーのキレもさらに磨かれ、決定力をさらに高めている。
本田。全試合を通してチームの核となり、プレーでも存在感でも、サムライブルーに熱くて強いスピリットを吹き込み続けたのはやはりこの男だった。
メキシコ戦でも、みるからにコンディションは厳しそうだったが、それでも前線でのチェイスは(メリハリはつけながらも)やめようとしない。やはりこの男の世界へ向かう野望は半端ではない。ほとんど精神力だけで動いていた気がする。
そして香川。ブラジル戦を除けば出来は悪くなかったし、自由に動いて得点の可能性を感じさせるプレーを随所に見せた。とくにイタリア戦での反転からのボレーは世界中の目をくぎ付けにし、その実力を示した。
この三人は間違いなくワールドクラスの実力を持っていると思う。
攻撃陣では、3戦目にして初めて前田のパフォーマンスを評価したい。メキシコ戦の前田は悪くなかった。
ポストプレーもスムーズでチャンスに絡むシーンが多かったし、その役割でもハーフナーより格段にいいと思う。あとはストライカーとして、ここぞという時にきちっと点を取ってほしい。いいシュートを何本か放ったがエースストライカーとしては物足りない。結果がすべてだし、貪欲さが伝わってこない。
前線の守備でも頑張ってたと思うけど、「チェックに行ってます」感がぬぐえない。時にはもっと激しく詰めて奪い取っるんだという気迫をみせてほしい。そこが岡崎と違うところだ。
ブラジル戦で数分出ただけの乾の評価はしようがないが、ブンデスリーガでの活躍を見れば代表でももっとできるはずだし、日本人らしい俊敏な動きでのドリブルが特長である乾は日本が勝つために必要なのじゃないかと思う。
日本らしさを出さないで、どうやって世界と戦えるのか?
憲剛はどこまでもサブの扱いではあったが出た時間は短いながら、その中でそれなりの存在感は見せたと思う。ただ、無難と言えば無難で、劣勢の試合をひっくり返すような可能性は見つけられなかった。
ボランチ。
遠藤はメキシコ戦でのアシストなど、相変わらずの攻撃センスを見せてくれたけど、個の参戦を通じて、パスミスも目立ったし、中盤で取られたことから危ういシーンがいくつかあったと思う。それが何かしらの衰えなのか、周囲との連動の問題なのか見極めが必要な気がする。ただ、失点のリスクである事は間違いない。
長谷部の献身的な動き、キャプテンシーはやはり貴重だとは思った。コンディションはあまりよくなかったのかもしれない。ひょっとしたら精神的な面のほうが大きい気もしたけど。根拠があるわけではない。ただ、そんな気がした。いつもの長谷部とはちょっと違うような。
それから長谷部にはとにかくミドルシュートの精度を上げることともっと数多く打つことを期待したい。枠の中に行かなきゃどうやっても得点は奪えないのだから。
イエロー累積で長谷部が出場停止のためメキシコ戦に先発した細貝は、周囲との関係性による部分もあるのかもしれないが、まず判断スピードが遅いと思う。プレーも凡庸で気迫も足りない(というか気迫を出すようなシーンに絡んでいない)。この試合は大きなチャンスだったはずだが・・物足りなさしか残らなかった。
サイドバック。
もちろん長友の速さ、フィジカルの強さ、インテルで格段の進歩を見せたクロスの精度など、個の力としては世界レベルなのだろう。ボールの扱いも別人のようにうまくなったと思う。
ただ、代表ではバックパスが多いというか、簡単に戻し過ぎる気がする。攻撃面でももっと得点に結びつく決定的な仕事ができてもいいと思う。
メキシコ戦での負傷交代が気がかり。
内田もクラブでの実績からいっても力があるのは間違いないけど、守備での貢献はあったにせよ、この大会では失点に直接からむシーンが多くて、それがどの程度内田のせいなのか(100%内田が悪いはずはない)、守備陣全体の問題として分析が必要だ。結果としては期待を下回ったという点で物足りなく、コンディションのことはわからないが、酒井宏樹の起用につながった
その酒井だがイライラする場面も多くて、守備も攻撃もいまいちだった。酒井高徳は出番なし。
そして最後はセンターバック。言うまでもなく守りのかなめ。今大会3試合で9失点の責任は重い。とりわけ吉田麻也のできはあまりよくなかった。オリンピック代表としてもプレーをし、プレミアに移籍して目いっぱい戦ったシーズン。おそらくその疲労度はハンパじゃなかったに違いない。それでも出る以上言い訳はできない。それは吉田自身がよくわかってるだろう。
その吉田に代わって今日のメキシコ戦先発した栗原はひじょうによかったと思う。積極的な攻め上がりも見せたし、ディフェンスでもいい仕事をしていた。
そしてザックジャパンの絶対的守備のエース今野。守備に攻撃に随所にいい働きを見せたけど、どうせならもう一皮むけてもらいたい。
それはおそらくメンタル面だと思う。W杯出場決定の会見で奇しくも本田に指摘されてしまった通り、安定感は抜群だし、見かけと違って闘志も高いのだが、どこか満足してしまっている感じがある。本気でW杯上位を目指している感じが伝わってこない。
GKは川島に文句はない。世界のトップレベルかどうかわからないが、今の日本では彼をおいて他のキーパーは今さら考えようもないくらい不動のGKに成長した。今日もハットトリックを狙ったエルナンデスのPKをはじき、その後のシュートにも果敢かつすばやく対応しゴールマウスを守った。あとは実績を積むのみだ。
最後の最後にザッケロー二の采配について。基本的にとても素晴らしい監督だと思っているが、まずイタリア戦はあまり闘志を感じられなかった。「ユーロ準優勝のチームだから負けても仕方がない」という感覚が見え隠れした。もちろん「シナリオになかった」という母国との対戦でもある。
これこそがW杯で母国監督以外で優勝したチームがこれまで一つもない理由ではないかと思った。
選手交代もイタリア戦、メキシコ戦と続けて理解しがたいものだった。メキシコ戦で言えば、負けているのになぜ1枚目が内田(酒井と交代)、2枚目が吉田(なんと前田と交代!これはちょっと信じがたい)。3枚目はフォーメーション関係なしの負傷した長友と中村憲剛。しかもロスタイムに入ってから。
これは多くの人が思うように明確な説明が必要だろう。テストという側面があるにしても、この試合は(そしてイタリア戦も)勝ちに行かなくてはならない試合だったのだ。
セルジオさんとか金子達仁はすでに交代の可能性に言及している。3戦全敗という結果と不可解な選手交代に対して--ここまでのザックの貢献はいずれも認めるところなわけだが--いくばくかの責任論議が巻き起こる可能性は少なくないと思う。
ザックが素晴らしい監督である(少なくともここまではそうであった)ということとは切り離して考えることになってしまう。それがナショナルチームの代表監督というものだからだ。
その点についてザッケローニは少し油断か思い違いをしているかもしれない。自らの貢献を考えれば、ここはテストが必要なのであり、結果は問われないだろうというような。
しかし、日本にも当然いろんな見方があり、常に結果は問われる。こんな大きな大会で期待が大きくなればなるほど。
もともと就任時にはザックは2年以上監督をやることはないだろうといった趣旨の発言をしていたと記憶する。それ以上1人の監督に教えるものはないからだ、と。また別の監督から別の貴重な経験なり知識なり戦術なりを受け取るべきだ、と。
しかし、日本で仕事をする心地よさ--サッカーに限らず環境や人間性、国民性、熱いサポーターなどまで含めて(もちろん世界のだれもがそれを気にいるわけではないかもしれないが)--に気づいてしまった。もっといっしょに仕事を続けたい、W杯も指揮をとりたいというように変わったのじゃないかと思う。ファンとしては嬉しいことでもある。
そこに慢心というか油断が生まれる可能性は多分にあり、いずれにしてももう一度褌を締め直すことが、まずは必要になるに違いない。
ここで言及しなかった選手。GKの二人。権田と西川。伊野波、高橋、清武、ハーフナーと6人いるが、GKはおいて、伊野波と高橋には出番がなかった。清武はブラジル戦に先発したのみで、あまりいいところなく後半早々途中交代。ハーフナーもイタリア戦で10分余りの出場でメキシコ戦には二人とも使われなかった。
これを見ても、日本の攻撃陣では試合の流れを変える可能性を持った爆発力のあるスーパーサブがほしいところだ。
それにしてもブラジルサポーターのサッカーの楽しみ方はすごい。彼らは(セレソンは別だが)公平だし、どんな対戦にも楽しみを見つけ、ときに鼓舞し、つまらないバックパスには全員でブーイングする。試合を盛り上げるすべを心得ている。
場外のデモも気になるが、サッカーの大会をやるにあたってこれ以上も観客はいないだろう。
スコアは1-2だったが内容的にはほぼ完敗だった。ザックの試合後のインタビューの通り。日本が主導権を握ったのは前半立ち上がりからの25分くらいだけだった。前半はかろうじて0-0で終わらせた。
しかし、後半9分に香川の同僚エルナンデスにヘッドで決められると、最後までほぼ防戦を強いられた。
21分にはドスサントスのCKからゴールニアでミエルのバックヘッドに再びエルナンデス合わせる。後半13分酒井宏樹と交代した内田がついていたが何もできなかった。
酒井は試した要素が大きかったので、内田にここで替えたのはまだ理解できるとして、負けているにもかかわらず、このCK直前に、前田に代えて麻也を入れた意味はまったくわからない。もともとスタメン落ちは疲労のせいと言われているが、最後まで精彩がなかった。
2点を取ったメキシコは、26分にグアルダード、33分にドスサントスと活躍した攻撃の主力をディフェシブな選手に代え、あきらかに引いて守る作戦に出る。
そのおかげで日本に少し攻撃の時間が長くなったが、決めきれなかった。
メキシコは明らかに「1点取られても負けない」意識でプレーしていたと思う。故障の長友に代えて、憲剛をそのまま後退するなどかなり強引に点を取る姿勢を見せたということもある。
41分左サイド香川から右で駆け上がったフリーの遠藤にファークロスが出る。ゴール中央へ切り返したボールを飛び込んできた岡崎が確実に決めてようやく1点返すにとどまった。
これはもうメキシコの想定内だろう。45分には2トップの1人ヒメネスも代えてさらに守りを固めるメキシコ。
にもかかわらず、ロスタイム早々に内田のファールでエルナンデスにPKを奪われる。ハットトリックを狙ったエルナンデスだったが、見事にコースを読んだ川島がこれをはじき返す。こぼれ球にも反応したエルナンデスだったがバーにあたって事なきを得た。
5分のロスタイムも時間をうまく使われあっという間に終了。
完敗だった。
■順位、勝ち点通りの実力だった
終わってみれば3戦全敗。勝ち点0。この試合への期待が大きかっただけに、結局何も証明できずに終わってしまったことに落胆は大きい。
ブラジル、イタリア、メキシコとの差はまだまだ開きがある。というより決定的な実力差があることを確認するだけにとどまった。
いい試合はするが勝てない日本。世界の評価はそのままだ。
当たり前だけど、サッカーはいい内容だったかどうかで勝負するわけではない、パスは回るし、負けてる時には点を取れるけど、同点、逆転の点は遠いチームが相手にとって脅威となるはずもない。
Aグループは実力どおりの結果、順位となった。ブラジルが地の利もあるけど、それを差っ引いても圧倒的に強かった。何をとっても他の3チームに勝ち目はなかった。
イタリア、メキシコは大きな差はなかったかもしれないが、そこはやはりW杯を何度も制している「格」の違いだろう。
そしてメキシコは間違いなく日本より上だった。残念だけどしかたがない。自分たちの世界での立ち位置を見極めることもこの大会の課題だったはずで、そう言う意味でははっきりとわかった。
あと1年。ここからが勝負。今の日本の実力は、「うまくいけば予選を突破できるかもしれない」というあたりじゃないだろうか。メキシコはベスト16の常連だし、前回はともかくイタリアはベスト8、ベスト4、時には優勝を争うようなチームに違いない。
そしてブラジルはもちろん優勝争いの常連なのだ。
■個の力
世界のトップで活躍する選手が今回も口々に語ったのは「個のレベルアップ」がもっともっと必要だということ。香川、本田、長友、岡崎といった日本の主力が繰り返し口にした。
大会を通じてもっとも働きが目立ち結果も残したのは岡崎だろう。得点力はもちろんだが、前戦での守備の激しさを継続し、長友並の身体能力を獲得したと感じる。本来の裏を突くプレーのキレもさらに磨かれ、決定力をさらに高めている。
本田。全試合を通してチームの核となり、プレーでも存在感でも、サムライブルーに熱くて強いスピリットを吹き込み続けたのはやはりこの男だった。
メキシコ戦でも、みるからにコンディションは厳しそうだったが、それでも前線でのチェイスは(メリハリはつけながらも)やめようとしない。やはりこの男の世界へ向かう野望は半端ではない。ほとんど精神力だけで動いていた気がする。
そして香川。ブラジル戦を除けば出来は悪くなかったし、自由に動いて得点の可能性を感じさせるプレーを随所に見せた。とくにイタリア戦での反転からのボレーは世界中の目をくぎ付けにし、その実力を示した。
この三人は間違いなくワールドクラスの実力を持っていると思う。
攻撃陣では、3戦目にして初めて前田のパフォーマンスを評価したい。メキシコ戦の前田は悪くなかった。
ポストプレーもスムーズでチャンスに絡むシーンが多かったし、その役割でもハーフナーより格段にいいと思う。あとはストライカーとして、ここぞという時にきちっと点を取ってほしい。いいシュートを何本か放ったがエースストライカーとしては物足りない。結果がすべてだし、貪欲さが伝わってこない。
前線の守備でも頑張ってたと思うけど、「チェックに行ってます」感がぬぐえない。時にはもっと激しく詰めて奪い取っるんだという気迫をみせてほしい。そこが岡崎と違うところだ。
ブラジル戦で数分出ただけの乾の評価はしようがないが、ブンデスリーガでの活躍を見れば代表でももっとできるはずだし、日本人らしい俊敏な動きでのドリブルが特長である乾は日本が勝つために必要なのじゃないかと思う。
日本らしさを出さないで、どうやって世界と戦えるのか?
憲剛はどこまでもサブの扱いではあったが出た時間は短いながら、その中でそれなりの存在感は見せたと思う。ただ、無難と言えば無難で、劣勢の試合をひっくり返すような可能性は見つけられなかった。
ボランチ。
遠藤はメキシコ戦でのアシストなど、相変わらずの攻撃センスを見せてくれたけど、個の参戦を通じて、パスミスも目立ったし、中盤で取られたことから危ういシーンがいくつかあったと思う。それが何かしらの衰えなのか、周囲との連動の問題なのか見極めが必要な気がする。ただ、失点のリスクである事は間違いない。
長谷部の献身的な動き、キャプテンシーはやはり貴重だとは思った。コンディションはあまりよくなかったのかもしれない。ひょっとしたら精神的な面のほうが大きい気もしたけど。根拠があるわけではない。ただ、そんな気がした。いつもの長谷部とはちょっと違うような。
それから長谷部にはとにかくミドルシュートの精度を上げることともっと数多く打つことを期待したい。枠の中に行かなきゃどうやっても得点は奪えないのだから。
イエロー累積で長谷部が出場停止のためメキシコ戦に先発した細貝は、周囲との関係性による部分もあるのかもしれないが、まず判断スピードが遅いと思う。プレーも凡庸で気迫も足りない(というか気迫を出すようなシーンに絡んでいない)。この試合は大きなチャンスだったはずだが・・物足りなさしか残らなかった。
サイドバック。
もちろん長友の速さ、フィジカルの強さ、インテルで格段の進歩を見せたクロスの精度など、個の力としては世界レベルなのだろう。ボールの扱いも別人のようにうまくなったと思う。
ただ、代表ではバックパスが多いというか、簡単に戻し過ぎる気がする。攻撃面でももっと得点に結びつく決定的な仕事ができてもいいと思う。
メキシコ戦での負傷交代が気がかり。
内田もクラブでの実績からいっても力があるのは間違いないけど、守備での貢献はあったにせよ、この大会では失点に直接からむシーンが多くて、それがどの程度内田のせいなのか(100%内田が悪いはずはない)、守備陣全体の問題として分析が必要だ。結果としては期待を下回ったという点で物足りなく、コンディションのことはわからないが、酒井宏樹の起用につながった
その酒井だがイライラする場面も多くて、守備も攻撃もいまいちだった。酒井高徳は出番なし。
そして最後はセンターバック。言うまでもなく守りのかなめ。今大会3試合で9失点の責任は重い。とりわけ吉田麻也のできはあまりよくなかった。オリンピック代表としてもプレーをし、プレミアに移籍して目いっぱい戦ったシーズン。おそらくその疲労度はハンパじゃなかったに違いない。それでも出る以上言い訳はできない。それは吉田自身がよくわかってるだろう。
その吉田に代わって今日のメキシコ戦先発した栗原はひじょうによかったと思う。積極的な攻め上がりも見せたし、ディフェンスでもいい仕事をしていた。
そしてザックジャパンの絶対的守備のエース今野。守備に攻撃に随所にいい働きを見せたけど、どうせならもう一皮むけてもらいたい。
それはおそらくメンタル面だと思う。W杯出場決定の会見で奇しくも本田に指摘されてしまった通り、安定感は抜群だし、見かけと違って闘志も高いのだが、どこか満足してしまっている感じがある。本気でW杯上位を目指している感じが伝わってこない。
GKは川島に文句はない。世界のトップレベルかどうかわからないが、今の日本では彼をおいて他のキーパーは今さら考えようもないくらい不動のGKに成長した。今日もハットトリックを狙ったエルナンデスのPKをはじき、その後のシュートにも果敢かつすばやく対応しゴールマウスを守った。あとは実績を積むのみだ。
最後の最後にザッケロー二の采配について。基本的にとても素晴らしい監督だと思っているが、まずイタリア戦はあまり闘志を感じられなかった。「ユーロ準優勝のチームだから負けても仕方がない」という感覚が見え隠れした。もちろん「シナリオになかった」という母国との対戦でもある。
これこそがW杯で母国監督以外で優勝したチームがこれまで一つもない理由ではないかと思った。
選手交代もイタリア戦、メキシコ戦と続けて理解しがたいものだった。メキシコ戦で言えば、負けているのになぜ1枚目が内田(酒井と交代)、2枚目が吉田(なんと前田と交代!これはちょっと信じがたい)。3枚目はフォーメーション関係なしの負傷した長友と中村憲剛。しかもロスタイムに入ってから。
これは多くの人が思うように明確な説明が必要だろう。テストという側面があるにしても、この試合は(そしてイタリア戦も)勝ちに行かなくてはならない試合だったのだ。
セルジオさんとか金子達仁はすでに交代の可能性に言及している。3戦全敗という結果と不可解な選手交代に対して--ここまでのザックの貢献はいずれも認めるところなわけだが--いくばくかの責任論議が巻き起こる可能性は少なくないと思う。
ザックが素晴らしい監督である(少なくともここまではそうであった)ということとは切り離して考えることになってしまう。それがナショナルチームの代表監督というものだからだ。
その点についてザッケローニは少し油断か思い違いをしているかもしれない。自らの貢献を考えれば、ここはテストが必要なのであり、結果は問われないだろうというような。
しかし、日本にも当然いろんな見方があり、常に結果は問われる。こんな大きな大会で期待が大きくなればなるほど。
もともと就任時にはザックは2年以上監督をやることはないだろうといった趣旨の発言をしていたと記憶する。それ以上1人の監督に教えるものはないからだ、と。また別の監督から別の貴重な経験なり知識なり戦術なりを受け取るべきだ、と。
しかし、日本で仕事をする心地よさ--サッカーに限らず環境や人間性、国民性、熱いサポーターなどまで含めて(もちろん世界のだれもがそれを気にいるわけではないかもしれないが)--に気づいてしまった。もっといっしょに仕事を続けたい、W杯も指揮をとりたいというように変わったのじゃないかと思う。ファンとしては嬉しいことでもある。
そこに慢心というか油断が生まれる可能性は多分にあり、いずれにしてももう一度褌を締め直すことが、まずは必要になるに違いない。
ここで言及しなかった選手。GKの二人。権田と西川。伊野波、高橋、清武、ハーフナーと6人いるが、GKはおいて、伊野波と高橋には出番がなかった。清武はブラジル戦に先発したのみで、あまりいいところなく後半早々途中交代。ハーフナーもイタリア戦で10分余りの出場でメキシコ戦には二人とも使われなかった。
これを見ても、日本の攻撃陣では試合の流れを変える可能性を持った爆発力のあるスーパーサブがほしいところだ。
それにしてもブラジルサポーターのサッカーの楽しみ方はすごい。彼らは(セレソンは別だが)公平だし、どんな対戦にも楽しみを見つけ、ときに鼓舞し、つまらないバックパスには全員でブーイングする。試合を盛り上げるすべを心得ている。
場外のデモも気になるが、サッカーの大会をやるにあたってこれ以上も観客はいないだろう。