■ ユーロ2008 準決勝 |
スペイン(3-0)ロシア ・後半 5分 シャビ(スペイン) ・後半28分 グイサ(スペイン) ・後半37分 シルバ(スペイン) |
■ スペイン24年ぶりの決勝進出 |
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大会前から、スペインの優勝、その前に決勝進出を予想していましたが、あくまでもそれは希望的観測にすぎず、心のどこかでは「また、ベスト8くらいで負けるんじゃないか?!」と思っていました。私と同じような心境の人ってのは、日本だけでなくスペイン国内にもいたと思うのです。しかし、ベスト8でイタリアにPKの末に勝利したスペイン。この勢いのまま決勝まで行けるかも・・・と徐々に思い始めたと思います。ただ、それでも尚、「まぁ今大会のイタリアは誰が見ても“良いチーム”ではなかったよな・・・」という多少自虐的な思いもあったはずです。
スペインを応援する人ってのは、イングランドやオランダ、はたまたインテルみたいに期待しているけども心のどっかで勝利への確信度という部分では決して高くないと思います。つまり、ちょっと引いた見かた、あくまでも「希望」の域を越えなかったと思うのです。それは、ドイツやイタリア、近年のフランスのような強さと結果(成績)を出していないからです。
多分、日本での盛り上がりの数百倍スペイン国内では盛り上がっていると思われます。なかなか、現地スペインの話題など日本のTVを中心としたメディアには登場しませんけど、今回のユーロでの勝ち上がりでスペイン国内ではきっと「希望」から「現実」のものへと変わりゆくファンやサポーターの気持ちってのがあると思います。
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◆ ロシアを上回ったスペインのパフォーマンス
ユーロ2008準決勝「スペインvsロシア」大雨と共に雷鳴轟く中行われた試合。その天候に3点目が決まるまで常に一抹の不安を心のどっかに抱いていました。しかし、終わってみれば3-0でスペインが勝利しました。グループリーグ第1戦で対戦した両者ですが、その時と同じ得点差で勝利したスペイン(グループリーグ第1戦は、4-1でスペイン勝利)。24年ぶりの決勝の舞台に立つこととなりました。
試合前、ヒディンク・マジックということでロシアの快進撃が注目されていました。しかし、蓋を開けてみるとロシアは、これまでの勢いがなく試合を掌握していたのは、スペインでした。
例えば、ロシアの枠内シュート数は、たったの1本。今回のロシアの活躍で一躍世界レベルの注目を浴びている、アルシャービン、パブリチェンコですが、ほとんど試合から消えている状態。一方のスペインの枠内シュート数は、11本。単純なシュート・データを比較しても両者のピッチ上のパフォーマンスには差がありました。
■ ロシアが悪かったのか?スペインが良かったのか? |
◆ ロシア走破距離データ
この試合ロシアの低調ぶりが、コンディション面(疲労)にあるんじゃないか?という見解を持った人は多かったと思います。私も見ながら、「ボール狩り」から攻撃に転じるロシアのスピード感というのが感じられませんでした。ちょっとこの辺にクローズアップして、久し振りのデータ系記事をお送りします。
ロシアには、疲労による運動量の低下はあったのか?!
グループリーグ第1戦スペインに敗れたロシアは、その後、ギリシア、スウェーデンと破り、ベスト8ではオランダを延長戦の末破りベスト4まで進出してきました。単純な日程だけを見れば、ロシアの方がスペインより休みは1日多かったのです。また、両チーム共にほぼスタメンは固定の状態で戦って来ました。リーグ戦途中らしいロシア、そしてリーグ戦終了のスペイン。一般的に言えば、スペインの方がフィジカルコンディションは良くないと思うはずです。1日休みが多かったとは言え、短期決戦の中でロシアは、オランダと延長戦まで戦いました。その辺の差ってのは、多少あったかもしれません。しかし、データ上ではそれほど選手の運動量(走破距離)は違っていません。
グループリーグ第3戦(スウェーデン戦)とベスト8(オランダ戦)そして、ベスト4(スペイン戦)のロシアの選手の走破距離のデータをUEFA.comより拾ってみました。ロシア走破距離データ
オランダ戦は延長まで戦ったので、走破距離の数値は大きいのですが、今回のスペイン戦とスウェーデン戦では大きな違いはありません。また、「走る選手は、走る!」ってのも明確です(笑)
なので、単純な選手が疲労による運動量の低下により、ロシアのプレスが決まらなかったという問題ではないような気がします。
ちなみに、この“走破距離”ですが、(多分)「兎にも角にも走ったデータ」なので、その走りの内容(質)まで明確に現している訳ではないのです。つまり、スウェーデン戦も今回のスペイン戦も走破距離に大きな数字上の差はなかったものの、その「走りの質」は違っていたと思うのです。スウェーデン戦はほぼロシアがゲームを支配して自分達のリスムで試合を進めました。しかし、今回は違う。
単純に、「攻撃的に走ったか!?」「守備的に走らされたか!?」という内容(質)の差は、内在していると考えていいと思います。よって、試合を見た人は、このデータを見て「意外とロシア走ってたんだな・・・」なんて思うかもしれません。これまでの好調のロシアであれば、攻守において走りの内容(質)がバランスよかったが、今回のスペイン戦は、走りの内容(質)は良くなかったと思うのです。よって・・・
・プレスによる「ボール狩り」が決まらず
・サイドでの起点・攻撃の形を作れず
というロシアの特徴が、この試合では完全に消えていた。そして、その理由、全てが疲労などによるコンディション面にあったかと言うとそうとも言えないような気がしています。むしろ、単純にスペインの方が良かったんじゃないか?という見かたが妥当なのかもしれません。
◆ スペイン守備の安定
個人的には、スペインが良かったという見かたをしていました。やはりロシアのパフォーマンスは単純に良くはなかった。しかし、スペインがロシアの良さを消したという見かたも出来るんじゃないかと・・・
スペインは、今回のユーロで試合ごとにチームとして守備力が高くなっているような気がしてます。
それは、個々の選手に対しても同様の評価で・・・特に、セナの中盤でのボール奪取は、チーム対する影響力が強くなっている。まだまだ伸びしろを感じさせますし、全盛期のマケレレ並に今後なるんじゃないかと思うくらいです。むしろマケレレを越えれるんじゃないかとさえ思ってしうのは、攻撃参加をして強烈なミドル・シュートも持っているからです。
また、この試合、個人的なマン・オブ・ザ・マッチは「セルヒオ・ラモス」です。
彼は、右SBとしてスペインの攻撃の一部を大きく担っています。と同時に彼の上がったスペースを狙われるという危険性もはらんでいます。イタリア戦では、彼の上がりは抑え気味でしたが、この試合ではサイドでの上下動が非常にクレバーでした。攻め上がりのタイミングが秀逸だった。さらに、守備面でも「ロシアがサイドで起点を作る・・・」というタイミングでボールを奪ったりタッチに逃れるなど上手い具合にロシアの流れを寸断していました。
この辺のDFラインの守備は、セルヒオ・ラモスだけではなく他の選手にも言えることです。例えば「ラモス、シルバ」、「カプデビラ、イニエスタ」この縦の関係は守備面では上手く機能していたと思うのです。逆にロシアには、こういう2~3名によるグループ戦術としての守備で足りなかった。
◆ パス配分データによる両チームの差
もう一つスペインの方が良かったんじゃないか?という見かたをパス配分データ(誰から誰へのパスが多いかを示したデータ)という視点で見ると興味深い発見がありました。
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(下は、オランダ戦でのロシアのデータ)
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ロシアのパス配分データとスペインのパス配分データの比較
まず、ロシアのデータを見ると顕著な点が一つあります。
それは、ズリヤノフへ配給されるパスが非常に多いということです。両サイドで言えば、左サイドを攻撃の起点としている。ズリヤノフの前にはアルシャービンが位置していますし、左SBジルコフのオーバーラップもポイントです。
ところが、スペイン戦とオランダ戦のデータを単純に比較すると異なる部分があります。それは、アルシャービンへの配給されるパスが、データの上位値に入っていないということです。
これを逆の視点(スペイン側)から見ると、シルバが配給元になっているパスが異常に多い。この辺は、もう少し突っ込んだデータを拾う必要があるかもしれませんが、前述の「ラモス、シルバ」の部分で対面のズリヤノフを封じていたという可能性はあります。この中盤で寸断すれば、アルシャービンに渡りませんし、セルヒオ・ラモスが攻撃的に出れば、ロシアの左サイドはおのずと守備に回らざるを得ない。
そして、セルヒオ・ラモスへの展開並びにファブレガス、イニエスタへへの配給も多く、ロシアと比較するとバランス良く中盤でのパス配給されている。
また、前半34分ビジャの負傷交代によりファブレガスを投入後、スペインは[4-1-4-1]という形にした。これにより中盤に更なる厚みが出た。さらに、これまでいまいちだったトーレスもいくつか速攻の形を作った。しかし、この試合で明確に思ったのは、(詳細は割愛しますが)トーレスのコンディションが悪いということです。
(極論、決勝戦にトーレスを使わなかったとしても致し方ないと思う)
※ 注意 ※ 1.ロシア・スペイン共に、SBへのパス供給は、バックパスだけではなく、高い位置取りをSBへの配給も含まれる 2.スペインのイニエスタ、シルバはポジションを左右入れ替わったり2トップの下へ動いたりと適宜ポジションが変化するので、図解の矢印は必ずしも純然たるポジションの関係に則っていない。(2者によるパス配分データ) |
■ アラゴネス・マジック |
![スペイン全ゴールと皇太子妃がカワイイ件](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/68/ce/5db9e32d25561ee7bcc51805f5f61384_s.jpg)
後半11~12分にロシアが選手をしてきました。
セムショフ → ビリアレトジノフ
サエンコ → シチョフ
この時点で、スペインは1-0でした。(イニエスタのパスからシャビのゴールは素晴らしい形だった)
ただ、この交代は、得点差を考えるとちょっと怖さがありました。ところが、さらに、驚くべきことをアラゴネス監督がやってのけました。1-0とリードしている状態で交代枠を“一度に2つ”使うという(サッカーの常識からすれば)暴挙に出ました。
「テンパったか!?」と思ったのですが・・・これがアラゴネス・マジックでした(笑)
シャビ → シャビ・アロンソ
トーレス → グイサ
まだ、トーレスを変えるだけなら分かりますが、数分前にゴールを決めたシャビまで変えるとは・・・まぁもう一人のシャビ(・アロンソ)が出来てきたんですけど、正直、この試合の流れに自然に入ってこれるか心配でした。
ロシアは、選手を二人変え中盤でのプレスがちょっと激しくなってきましたが、ここでのスペインの応対にびっくらこきました(笑)
日本も中盤の人材が武器(?)で、パス大好きっ子が揃っていますが、それを遥かに凌ぐスペインの中盤。2人3人とプレスに来てもダイレクトで叩いたり、取られそうになっても上手く身体を使いつつキープしたりと、とにかくここから数十分のスペインのプレーには驚きを隠しえませんでした。あのスリルが良いね。但し、今回のように結果出したうえでの話ですけど。
後半28分 グイサがセスクのDFラインへダイレクトで出したパスに反応して2点目のゴールを決め突き放す。
後半37分 駄目押しのゴールをシルバが決めて、ロシアに引導を渡す形となりました。まさに、アラゴネス・マジック(笑)
もしかしたら、前半にファブレガス投入したのをアラゴネス爺さん忘れていた可能性あるかもしれないし、ここ数試合の癖で2枚変えしたのかもしれない(笑)
◆ スペインは、優勝しなければ意味がない
最初に書いたのですが、この試合を見終わってスペインの優勝が「希望」から「現実」に変わったなぁとリアルに感じる試合でした。ロシアは、コンディション的には多少悪かったでしょうけど、ロシアの問題を差し引いてもスペインの方がこの試合では勝っていたと思います。決勝戦の相手は、ドイツです。ベスト8のイタリア同様、歴史と実績という面では大きな壁と立ちはだかりる相手です。
ドイツは、これまであまり良い状態でないにも関わらず勝ち上がってきた「負けないドイツ」
まさにそう思わせる力を持っていると思うのです。そのドイツに、スペインが立ち向かう。過去の両者の関係であれば、「スペインが負けるであろう」と予想する人が多かったと思うのです。(ドイツが調子悪くてもね)しかし、今のスペインであれば、その予想が多少は五分五分に近いくらいの状態になっているような気がします。それでもなお、両者には、差(違い)がある。
やはり、ここで書いたように、内容はどうであれ、優勝しなければスペイン代表の歴史も印象も評価も変わらないと思います。勝利することによって得られることがあると思うのでね。準優勝では意味がない・・・頑張れスペイン!決勝でのアラゴネス・マジックは「なし」の方向でお願いします。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
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セナは本当に目立ってましたね、やたら拾ってました 笑。レッズ来てくれーって感じです。文章みてるとコージさんのテンションもよく読めるから不思議だ。
「読むサッカー」恐るべしです。
スペインがここまでくるとは、、かく言う私も少数派の一人でしたがこれほどとは。
往年の人気クイズ番組「巨泉のクイズダービー」で一問目から
「篠沢教授に全部!!」
みたいな感じで、怖くて声をだいにして 「優 」 とはとても言い出せませんよ。。。
こんにちは。
多分、決勝の舞台最後の最後まで油断出来ないと思いますし、“その瞬間”になるまでは、確信持てないと思います。それくらい両者の歴史的実績には開きがあるし、これまでスペインが期待されながらだめだったという事実もあるんでね・・・ただ、勢いそのままに攻撃的にいくか、ある程度慎重に行くかは、チームとして考えどころでしょうけど・・・難しいなぁ