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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『アレクサンドリア』 (2009) / スペイン

2011-04-10 | 洋画(あ行)




原題: AGORA
監督: アレハンドロ・アメナーバル
出演: レイチェル・ワイズ 、マックス・ミンゲラ 、オスカー・アイザック 、マイケル・ロンズデイル、サミ・サミール
鑑賞劇場 : 新宿ピカデリー
公式サイトはこちら。


これがgooで書く最初の記事になります。
というか、gooブログっていうのは過去日記が設定できない?
ということは観たその日に下書きをしておかないと、へんてこりんな日付になる?
私のように、いつ書くかわからない人にとっては大変だね(笑)
あ、でも今見たら投稿できるようになってたけど、引越し記事が埋もれてしまうので
開設日の日付にしておきます。




こちらも確か3月5日公開ということで、
歴史系&女性の生き方系ということで、予告からツボをぐりぐり押しまくりな作品だったんで、
絶対に行きたかったんですけど、震災があってねえ・・・。
それどころではなくなってしまった。
そうこうしているうちに近所での上映がなくなってしまって、新宿しかないじゃん f^^;
仕方ないのではるばる行きました。 
でもこれわざわざ行って本当によかったです。 観る価値あり。



古代史って実は大して詳しくないのですけど、いくつか本は読んでいます。
あの頃から学問は宗教に左右されていたわけですね。
劇中で古代学問の最高の権威・アレクサンドリア図書館の様子を再現した場面は本当に見事です。

アレクサンドリア図書館 wiki


『薔薇の名前』なんかもそうなんですけど、
宗教の名のもとに学問が操作され、本質が歪められ、そして破壊されてきたのが
いわゆる「正史」に残る「学問の本流」というものなんだと思います。
つまりは、破壊と狼藉の陰で消えて行った研究も数多くあり、
もしもその研究が途絶えなかったら、もっと人類は早くにその恩恵を受けていたことも
あったに違いないと推測する。
歴史は常に勝者によって塗り変えられ、どんなに優れた先人たちの功績も、
勝者の論理の範囲がであれば容赦なく蹂躙されて行くのだから。


本作は古代エジプトの女性哲学者・ヒュパティアがヒロイン。
史実は検索すれば出てきてしまいますが、敢えて映画鑑賞後にしておきたいところです。


ヒュパティア wiki



この映画の舞台は4世紀ということで、
物語の設定が古代になればなるほど時代検証が難しくなっていくという欠点を抱えての映画化だったと思いますが、
そのハンディを持ってしても尚有り余る表現力には驚かされます。
何しろアレクサンドリアの都市を再現させるところからのスタートですからね・・・。
図書館はもちろんのこと、原題にもなっている "AGORA" 、広場の様子までも再現させています。
ということは周辺の建物はもちろん、そこに生きる人々までもを
検証する作業がある訳です。
エキストラはCGではなくて全てマルタの人々が演じたそうですので。
衣装小道具、セットその他、一体いくら製作費かかってるんでしょう。。。 と思いますが、
それでいて大味ではなく、きちんと映画が作られていることが何よりも嬉しいのです。


「テオン(著名な数学者と哲学者であった)の娘であり、400年頃アレクサンドリアの新プラトン主義哲学校の校長になった。彼女はプラトンやアリストテレスらについて講義を行ったという。そして、彼女の希に見る知的な才能と雄弁さや謙虚さと美しさは、多数の生徒を魅了した。」(wikiより)

と評されるヒュパティア。
女性でありながらも、卓抜した才能は万人が認めるところであったのでしょう。
劇中の彼女の講義の様子もとても魅力的だし、達観した講話は彼女に難癖を突き付ける男たちを沈黙させ、
そして思慕の念を抱かせる。 
それは単に師としてだけではなく、学問を通じて得た連帯感や尊敬も入り混じったものだっただろうし、
子弟の側もそうであったはず。
さらにヒュパティアにつく奴隷ですらも、本来なら敵であるはずの彼女の論理に魅かれていくわけです。
宗派や性別を超えて魅了するものというのは、実は権力者にとっては最大の脅威となっていきます。
いくら法や力で抑えようとしても制御できないパワーが他にあるということは、
自分たちの立場が危うくなることを意味します。


ヒュパティアは女性であることと学者であることの狭間で悩みますが、
でも結局自分には哲学や天文学しかないと、究めることを選択します。
その決断の前には最早迷いはなく。
もしも彼女の研究が世に出ていたら、科学の進歩ももっともっと早く、人類を救ったのに・・・ 
とも思う。 砂の上で実験をするヒュパティアは神秘的ですらありました。
そして彼女の論理の中には身分というものは存在しないというのも素敵なところです。


また彼女を取り巻く男性たちのそれぞれの苦悩の描かれ方も深い。
治世のために信仰を曲げたオレステスですら、ヒュパティアへの思慕には勝てなかったし、
シュネシオスは逆に最後には己の道を選択した。
そしてダオスもまた、最後には自らのルーツを守りしものの声に従う。
結局人は皆、己を支配するものから逃れることは不可能なのかもしれない。


そしてこの映画では、キリスト教がかなりな「悪のイメージ」として描かれていました。
ヒュパティアたちの「白」に対しての、黒。
徹底的に破壊しつくす様子はまるで野獣のよう。
「クオ・ヴァディス」を思わず思い出してしまいました(あちらは逆にキリスト教徒受難の話でしたが)。
宗教とは何ぞや? ということです。
力を持ったものが自らの論理を通すことで歴史は作られてきたとは言え、常に無情さを感じます。
しかしながらこの表現がよくスペインで作ることができたなとちょっと驚きもしました。
カトリックの国だから?




キャストは総じて素晴らしかったです。
まずヒュパティア役のレイチェル・ワイズの魅力がこの映画を支えたと言ってもいいでしょう。
聡明だけではなく誰をも魅了する荘厳さと美を兼ね備えた、大変難解な役をよく演じていました。
また嬉しかったのはテオン役のマイケル・ロンズデールですね。
彼は今公開中の『神々と男たち』でも、医師リュックを演じていて、こうして良質の映画で続けて彼を見ることができるのは素晴らしいことです。
マックス・ミンゲラの、己の内なる声と、ヒュパティアとの間で揺れる表情もいい。
偽りなく誠実に作られた、壮大な映画、こういう作品に出会うことができると、
映画観ててよかったなと心から思います。
「クオ・ヴァディス」は1度映画化されていますが、このアレハンドロ・アメナーバル監督でリメイクしたら
面白いものが出来そうな気もします。。。





★★★★☆ 4.5/5点









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18 Comments

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TBありがとうございました! (ナドレック)
2011-04-13 08:24:02
こんにちは。
見応えのある映画でしたね。
おっしゃるとおり、ヒュパティアを取り巻く男性たちの苦悩が、物語を豊かにしていました。みな、ヒュパティアの講義に学ぶ者たちだったはずなのに、みずからの思想・信条に忠実であるがゆえに異なる立場に至ってしまうやり切れなさがありました。
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ナドレックさん (rose_chocolat)
2011-04-13 19:19:23
こんばんは。

私こういう感じの映画が元々好きっていうのがありましてね・・・。
ポイントをきっちり押さえてる感じが好きです。
ただこれブロガーさんの間では評判今一つみたいでちょっと残念。

4世紀という、ほぼ想像上でしか再現できない世界をここまできっちりと雰囲気出してくれたことにとても感謝です。
結局人は己の内なる声にしか従わないということなんでしょうね。
返信する
こんばんは (象のロケット)
2011-04-14 00:39:00
TB有り難うございます。
移転後初めてのコメントとなります。

生憎と、当方からgooブログへのTBは成立していませんので、これからはTB返送ができませんが、記事はいつも大切に反映させて頂きます。

これからも変わらず宜しくお願いいたします。(K)
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上映館。 (BC)
2011-04-15 02:01:58
rose_chocolatさん、こんばんは。

この作品、私はチェックしてなかったんだけど、なかなか良さそうですね。
なので、上映館調べたんだけど、
兵庫・京都では3月にすでに上映されていて、
大阪では上映館が一つもない珍しいケース。。。
奈良では5月から公開なので、奈良まで遠征するしかないかも~。
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象のロケットさん (rose_chocolat)
2011-04-15 06:01:24
ご挨拶ありがとうございます。

そうなんですか、gooにはTBが来ないんですね。
来るようにして下さい(笑)
今後ともよろしくお願いいたします。
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BC。さん (rose_chocolat)
2011-04-15 06:05:06
私はこういう歴史もの映画って好きなんですよね。
ちゃんと作られてるやつです。
ただ、映画にエンターテインメント性を強く求める方には不向きです。
この史実の背景や、人としての選択の苦渋に入れる方じゃないと、この映画の良さはたぶんわからないと思います。 
そういう意味では「人を選び」ますね。

BC。さんと私だと、びみょ~に映画の好みが違うんで(笑)、まあ試しに観て下さいとしか言えないですが・・・。
奈良ですかあ。 お時間ありましたら頑張っていらしてください。
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玉手箱。 (BC)
2011-04-16 16:47:55
rose_chocolatさん、こんばんは。

BCは映画に何かを求めるというよりかは
作り手のコンセプトや見せ方を感じとりたいタイプかも?
なので、自分が期待していた内容とは違っても、
その中に共感出来る部分や共感出来なくても一理あるような気がしたら
大目に見て満足しちゃう事もあります。^^
そういう意味ではBCは映画の見方が甘いのかもしれないです~。

roseさんとは意見が一致する時と真逆の時が半々という印象だけど
自分といつも同じ意見のブロガーさんだとつまらないし、
かと言って、いつも真逆の意見のブロガーさんだと話しづらかったりもするので、
BC的にはroseさんは話しやすいブロガーさんですよ。

映画は中をのぞいてみるまではわからない玉手箱のようなものだと私は思っています。
なので、この作品も自分の感性に合うかどうかはわからないけど、
スペイン映画はディテールにこだわりを感じる良質の作品が多いから
観て損はないような気はするので、
気が向いて体力あったら奈良まで遠征して観てこようかと思っています♪
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BC。さん (rose_chocolat)
2011-04-16 18:40:54
>自分が期待していた内容とは違っても、
>その中に共感出来る部分や共感出来なくても一理あるような気がしたら
>大目に見て満足しちゃう事もあります。^^

その感覚は何となくわかるなあ。
そういう映画は、私ならたぶん日記書いた段階では★4とか★4.5とかつけるんだろうけど、
年間ベストには入れないタイプの作品かな?
基準がいい加減だから(笑)

>BCは映画の見方が甘いのかもしれないです~

そんなことないと思うよー。(笑)
ただこの作品に関しては、レビュー拝見していると、ご自身の中で映画が消化できなかった方が多いようでつくづく残念だなと感じました。

私は映画鑑賞の前に勉強したほうがいいよとまでは言わないけど、
正史を作ってきたのは勝利者であり、その陰には捏造されたり葬られた幾多の才能があったことをあらかじめ知っていると知らないとでは、
この映画の「厚み」の感じ取り方がまるで違ってくるように思いました。

これはBC。さんならどうかな~?
確かに映画は玉手箱なんですよね。
人がいくらいいよと言っていても自分がそうとは限らず、また逆も然り。
だから自分の言葉で消化することが必要なんだと思います。

>スペイン映画はディテールにこだわりを感じる良質の作品が多いから
>観て損はないような気はする

おっしゃる通り重厚でしたね。 製作費もたぶん相当かけているはずですから。 
感想お待ちしております^^
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Unknown (mig)
2011-04-17 00:12:28
こんばんは☆
私はこの監督作これまで全部好きなので
期待しちゃったので今回は全くダメだったぁ、、、、、
roseさんがツイッターで観たいってつぶやいてたのみて、いややめてもいいかもって言いたかったけど言わないで良かった(笑)
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migちゃん (rose_chocolat)
2011-04-17 05:58:35
なるほど、監督の作風知ってる方はそう感じるかもしれないのかな。
私はお初だったんで特に何も思わなかったのが良かった!?

個人的にこの時代の歴史を調べたことがあるので、如何に残酷なものかということはわかっていたから、その陰でこういうことが起きていたっていうのもね。 気の毒で。
実際はこんなに上品な展開ではなかったと思う。 もっともっと残忍なはず。
なのでそこをうまくストーリー起こしてロマンチックにつなげたってことでは、この映画うまかったと思いました。
女性蔑視にもつながる内容だったし、現代でも似たような話は結構ありそうです。
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