監督・脚本: パベウ・パブリコフスキ
出演: アガタ・クレシャ 、アガタ・チュシェブホフスカ
鑑賞劇場: シアターイメージフォーラム
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60年代初頭のポーランド。孤児として修道院で育った少女アンナは、初めて会ったおばから自分の本当の名前がイーダ・ベルシュタインであること、そしてユダヤ人であることを明かされる。両親はなぜ自分を捨てたのか、自身の出生の秘密を知るため、イーダはおばとともに旅に出る。(映画.comより)
予告からとっても惹かれてて、自分的にはもう傑作の予感しかしなかったんですよね。去年のポーランド映画祭は行かなかったんだけど、寡黙で重ためなタッチは同じポーランドのアンジェイ・ワイダ監督を思わせるような。無言の中にも感じ取れるストーリーや心情だけど、その中に無駄がなくきちんと伝わってくる。
モノクローム、寡黙な台詞、場面転換の早さ。1960年代のポーランドは今と比べたら、物質面でもそうだが、精神的な好奇心を満たすものが格段に何もない世界ということが一見してわかる。それに合わせて省けるだけの無駄を省き、シンプルに作り上げた効果が出ている。
修道誓願直前のイーダに、伯母がいるという報が来る。天涯孤独だと信じていた自分にできた、大胆な血縁者の存在は彼女を大きく揺るがしていく。生まれてから今まで修道院の中の世界しか知らず、それが当然だと思っていたイーダにとって、伯母の存在はそれ自体が衝撃的なことだった。きちんとした職業を持つ反面、それとは全く相容れないようなインモラルな行動も取り、自由奔放さに生きる伯母は、次第にイーダを新しい世界へと導いていく。
知ってしまった両親の過去、そして伯母にも真実がもたらされたその先に選び取った結末の酷さ。
伯母がイーダにもたらしたもの、それは生活習慣の違いだけではなく、1人の人間として精一杯の今を魅力的に生きることだった。規律と教義のみが全てである修道院の中では絶対に教わらないこと。人として、また女として生きることへの渇望は万人にあるはずなのにそれを推し込めて生きてきたことにすら気が付かなかったイーダ。伯母との出会いでその呪縛から解き放たれ、人を愛する喜びを知ったことは、彼女にとっては貴重な人生の体験だっただろうし、人生とはそれを追い求める旅のはず。しかし、物心つく頃からの長きに渡る修養は、彼女の基本的な人格を作り上げてしまっていた。自分自身を生きる選択もできただろう。だが全てを飲み込んだイーダの晴れやかな表情の中に、我々は既に彼女自身の救いを見る。
シンプルに、無駄なく、それでもこんなに映画は衝撃的だ。こんな作品が最近はめっきり減った。饒舌過ぎた、装飾ばかりの映画に胸やけがしているなら、これをどうぞ。飾り気のない凛々しさがどこまでも素晴らしい。
★★★★★ 5/5点
この映画どうしても劇場鑑賞したかったんですが、半休とって上映終了ギリギリに行きました。
本当に素晴らしかったですね。私はアンジェイ・ワイダとか古いポーランド映画を知らないのですが・・・。
遠くのミニシアターってなかなか行けないので、こういう作品に飢えてます。
これ、傑作と思いました。
アンジェイ・ワイダ、この監督さんのは本数は観ていなくて、
しかもそんなにすっごく好みって訳じゃないんですけど(汗)、
本作はワイダ作品の唐突さとかわかりにくさを修正して、スッキリと、しかも奥深いものに仕立て上げてたような感じですね。
もう1回観に行きたいと思ってたら終わってしまってました。どこかの名画座でまた観たいです。
ユダヤ教があり、割礼なんてわけのわからない因襲があるためこんな物語ができるんですね。
レノンの歌ったno religionが実現したとしても、別の事で人間は同じような争いをする。それが人間の業というものでしょう。とにかく色々考えさせられる映画でした。(つまんなかったけどw)
シンプルこの上ない作品なんだけど。