Nice One!! @goo

観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『ある過去の行方』 (2013) / フランス・イタリア

2014-04-23 | 洋画(あ行)


原題: Le passe
監督・脚本: アスガー・ファルハディ
出演: ベレニス・ベジョ 、タハール・ラヒム 、アリ・モッサファ 、ポリーヌ・ビュルレ
鑑賞劇場: 新宿シネマカリテ

公式サイトはこちら。


夫と別れて4年がたつシングルマザーのマリーは、子持ちの男性サミールとの再婚を予定し、新たな生活を始めていた。しかし、正式な離婚手続きをしていないため、イランにいる夫のアーマドをパリに呼び寄せる。アーマドはマリーの新しい家庭と生活を目の当たりするが、そこにはどこか不穏な空気が流れていた。長女リュシーとの関係がうまくいっていないというマリーから、娘の本音を探ってほしいと頼まれたアーマドは、リュシーの話を聞くことになるが……。(映画.comより)

前作『別離』はかなり見事に夫婦間の些末な感情を描いてたかなという理由で、こちらも重たそうな題材と思いつつも期待して行ってみました。


とにかく家族関係が超複雑(苦笑)
『別離』は単家族をめぐる物語をじっくり描いたので、複雑な背景や描写ものめりこむことができましたが、
こちらは頭を整理するのにまず一苦労。ざっと書くんで違ったら教えてください(もう結構前に観てるので)

マリーの前夫はアーマド、しかし、マリーと一緒に暮らしているリュシーとレアはアーマドとは血のつながりはない。
しかしこの2人の娘たちはアーマドになついていて、信頼もしている。
(だけどレアの年齢が低いことから、私はこの子はアーマドと別れた後に別の男性との間にできた子だと推測するんですが違うかしら)
そしてこれまたマリーと一緒に暮らしている、小さい男の子のフアッドですが、この子はサミールの連れ子。
そしてマリーは現在、新しい恋人のサミールの子を妊娠中。 サミールには妻がいるが夫婦関係は破たんしていて、マリーと結婚する予定。

というのが大体の関係ですが、なんかここまでわかるのにもとっても疲れた(苦笑)

アーマドとマリーの離婚理由って別に詳しく述べられている訳じゃないんですね。
冒頭はもう、離婚手続きのためにアーマドがフランスにやってきた、というだけ。マリーはもうアーマドは過去の人として扱ってはいるけれど、娘たちは血のつながりがないのにアーマドを慕っているので、それなりに信頼は置ける、といったところか。

このアーマド目線で話は進んでいきます。
娘たち2人を完全に差し置いてどんどんサミールとの交際を進めるマリー。しかも妊娠までしちゃってる。結局マリーは性的には無頓着なのでしょう。その場しのぎの感情で次々と交際する結果どんどん子どもが増えていく。しかしそこに対しても完全に責任を持ってはいない。ある意味「毒親」ですね。
娘たちの年齢が上がれば上がるほど、毒親マリー(!)の犠牲になっていると感じているのは当然のことであって、短期間の滞在なのに娘たちの心の傷にアーマドは気が付いてしまう。あまりにも不憫に思っていろいろと進言してもマリーは全く聞く耳持たず。実に気の毒な話です。

リュシーの明らかな変化、サミールへの嫌悪の理由がわかってしまって、しかしながら観客はマリーやサミールに同情はする気にはなれないっていうのが本音だと思います。これだけやりたい放題やって、それでも原因を作った人が悪いとは私なら言えないかな。大元の原因はいったい誰なんでしょうか、因果応報ですから。

・・・とまあ、何とも後味悪く進んでは行きますが、途中からアーマド→サミールへと、物語を語る視点軸がブレてきてしまってます。加えて前半部分ではサミールは全く掘り下げ不足なので観客は消化不良感にあふれちゃいます。
設定を複合家族にしてしまったためにカオスの出口がわかりづらいと感じる人も多いことでしょう。マリーのあまりにも奔放すぎる生き方が、完全に周りを振り回す。こういう人は実際いると思いますが、どうにも救われない展開というか、恐らく今後マリーとサミールが一緒になったとしても同じことを繰り返す予測で終わるだけに、着地点のつけようがなかったというところ。
『別離』はまだ「イスラムと女性」という筋があったのでよかったんですが、こちらはあくまでも男女関係に終始してしまったためにかえってカオスのまま終了したという感じです。最もそれを狙ったのかもしれませんが。

ベレニス・ベジョは、『アーティスト』『タイピスト!』で役が固定されつつあったので、今回のように「どうしようもないのに男が途切れない役」を演じきったのはよかったですが、作品全体としてはどうでしょうね。ちょっと失敗作だと思いました。


★★☆ 2.5/5点







最新の画像もっと見る

10 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは ()
2014-05-06 11:10:51
うーん、そう言われるとレアはアーマドと別れた後の別の男との間にできた子供かも。そこは何も説明していませんね。確かマリー=アンヌが「3度結婚した」というセリフがあったと思うんですが、その3度にサミールが入るのかどうか、映画を見ながら疑問を持ちました。レアが別の男の子供だとすると納得いきます。

となると、いよいよマリー=アンヌは家族のことも考えず自分の欲望だけで突っ走る身勝手な女性で、男から見ても「かなわんなあ」ですね。
返信する
レアの父親 (CHARADE)
2014-05-06 16:29:48
レアの年齢については気になっていました。リュシーの言う「三人目」はサミールのことだと思い込んでいましたが、サミールの前の相手と考えれば辻褄が合いますね。サミールとは付き合っているけれど、マリーはともかくサミールに結婚する気があるのかどうか怪しいですし。

でもそうなると、アーマドとの正式な離婚を今まで抛っておいたのが疑問です。とにかく彼らの関係性は明確な説明がなく、個々の状況の積み重ねから「察してくれ」という描き方だったので、疲れました……
返信する
こんばんわ (にゃむばなな)
2014-05-07 01:29:38
揉め事の真相がアーマドやマリアとは直接関係のないところで起こっていたのはいただけませんでしたね。
なんか嫌な肩透かしを食らったような感じでしたよ。
返信する
こんにちは (オリーブリー)
2014-05-10 16:00:37
確か、アーマドが庭でレアとフアッドに声をかけた時、レアが「アーマド」と言った記憶があるのですが、、、そして、「こっちの子は知らないよ、ダレ?」みたいな会話があったと思いますから、レアは一緒に暮らしていたのではないでしょうかね~。
姉と同じ父親なのかどうかもハッキリと分からなかったですよね?
って、ホント、随分経っても話が見えてこないし、要約本題かと思ったら、メインが移行するし、疲れましたわ(苦笑)
しかし、奥さんが植物人間となっているのに、妊娠とか再婚とか、不謹慎じゃないですかぁー(汗)
返信する
雄さん (rose_chocolat)
2014-05-10 17:17:50
>そこは何も説明していませんね
結構大事かなとは思いましたが、なかったです。
なので考えるしかないんですが、私はイメージ的にそう考えました。
奔放、という言葉だけでは片づけられない何かが、マリーにはあるのでしょう。
付き合った相手の子をいちいち産むことに何のためらいもないというのは、母としての情がそうさせるのかもしれませんが、
見た目は「かなわんなあ」そのものにしかなってませんでしたね。
返信する
CHARADEさん (rose_chocolat)
2014-05-10 17:21:25
サミールとは結婚しないで終わると予想します。そして子だけは産んで、連鎖から抜け出せないというのがマリーの生き方でしょうね。

>アーマドとの正式な離婚を今まで抛っておいたのが疑問
これも予測ですが、マリーは先のことは全く考えないタイプなのでしょう。今回も再婚に支障があったから手続きしただけで、そうじゃなかったらそのまま放置してたと思いました。
返信する
にゃむばななさん (rose_chocolat)
2014-05-10 17:22:37
>揉め事の真相がアーマドやマリアとは直接関係のないところで
風が吹けば桶屋が・・ ってパターンでしたね。
それでも映画のトリックとして成立すればいいのかもですが。
返信する
オリーブリーさん (rose_chocolat)
2014-05-10 17:24:42
>随分経っても話が見えてこないし
なので各人が勝手に想像するしかないのでしょうね。

日本人の感覚だと不謹慎に見えるのは致し方ないと思いますが、
恋愛の国・フランスでマリーのような生き方が容認されているのかどうかは気になりました。
返信する
原作 (sakurai)
2014-06-28 10:34:03
あるんでしょうかね。
どっちにしても監督の技巧に走りすぎと、まったく主人公に共感できないので、不快感ばかり募って行きました。
まあ、あんな女じゃ、アーマドも国に帰りたくなるでしょう。
それでもなんとか調整役をするアーマドが、子供のことをキチンと考えてる。次に生まれる子供の行く末が心配。
期待が大きかっただけに、がっくり感が大きかったです。
返信する
sakuraiさん (rose_chocolat)
2014-06-30 08:49:02
徹底的にアーマドは他人を思いやって、マリーは自分大好きさんにしてましたね。
今回のファルハディ作品はうーん・・・でした。
返信する

post a comment