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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『イマジン』 (2012) / ポーランド・ポルトガル・フランス・イギリス

2015-05-10 | 洋画(あ行)


原題: Imagine
監督・脚本・製作: アンジェイ・ヤキモフスキ
出演: エドワード・ホッグイアン 、アレクサンドラ・マリア・ララ
鑑賞劇場: シアターイメージフォーラム

公式サイトはこちら。


「反響定位」というテクニックにより、白い杖を使わずに歩くことができる視覚障害者のイアン。リスボンの視覚障害者施設で教師として働く彼は、子どもたちに自分と同じ技術を教え、外の世界に出ることの素晴らしさを説いていた。引きこもりがちだった女性エヴァも、そんなイアンに興味を抱き、彼のノウハウを学んで2人で街へ出かけるが……。(映画.comより)


結構前に観ていた作品ですが、なかなか書けなかったので忘れないように。

白状なしで盲目の人が街を歩くことなんて本当にできるんだろうか。ここで紹介されている「反響定位」がすごく有効で、使える人が多くなってきたら、そんな場面も目にすることがあるのかもしれません。ただ現実はなかなかそうもいかないんじゃないでしょうか。日本では法律の関係もあるし。

杖なしで盲人が歩くことは危険極まりない。確かにそうですが、そこをなしで歩く術が習得できたとしたら。想像以上に世界が広がると思うし、自分と同じように目が見えない人にもその喜びを味わってほしい。ましてその人が愛する人ならば尚のこと。イアンがそう思うのも自然なことでしょう。盲学校の教師として伝授したい、しかし各人で年齢や経験、盲目の程度も、他の感覚器官の鋭敏さも違う以上、その技術を一律に教えることは困難である。

なのでイアンの伝授に疑問を持つ者が現れてもそれはちっとも不思議ではなくて、しかもその疑問は恐らく憧れや妬みもしっかり混ざっているがために、実際に他の盲人たちに教えたとしても受け止め方は様々でしかない。それでもイアンへの不信感を隠さなかったセラーノが、イアンとの夜中の外出によって体験したことは、きっと生涯彼の記憶に残ることだろう。暗闇の中、音だけによる体験がどこまで真実なのか。視覚以外の感覚だけでもきちんと他者と感覚を共有できることは、セラーノの自信になったに違いない。

「他者と感覚を共有する」ことを、好意を寄せている人間との間でしてみたい。エヴァの行動こそ、その欲求に基づくものである。彼女はイアンに教わった通りに、嗅覚や音を頼りに街に出る。まるでそれが達成できたなら、夢まで叶うかのように見えない未来に向かって必死に歩く彼女はいじらしい。音を頼りに歩いていく過程はどこか官能的でもある。街ですれ違う人たちの会話、車の音、潮の香り、どれもが見えない不安を伴いながらも記憶に刻み込まれていく。そしてイアンと共有した時間をエヴァはひたすら慈しむ。

あの時カフェで彼が言った言葉は真実なのか? その答えがわかる時、私達はイアンの持ち合わせた感覚の正確さに驚くと共に、これからの2人の関係性もとても知りたくなってくる。これは夢か幻か、それとも現実なのか。それでも観客はそこに真実があってほしい、2人の関係もまた然りと思わずにはいられない。


★★★★★ 5/5点






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