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『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』 (2013) / イギリス

2014-10-05 | 洋画(あ行)


原題: Under the Skin
監督: ジョナサン・グレイザー
出演: スカーレット・ヨハンソン 、ポール・ブラニガン
鑑賞劇場:横浜ブルク13

スコットランドの街で、とあるセクシーな黒髪美女に誘惑された男たちが次々と姿を消していた。彼女の正体は、地球外生命体で、はじめのうちは無表情のまま男たちを捕食していくが、顔に障害を持つ孤独な男との出会いをきっかけに人間的な感情に目覚めていく。(映画.comより)


女が男に襲われるというパターンは世界中日常的に発生している。残念ながら。
しかしながらこれは美女がスケベ心だらけの男たちを次々襲っていく。
女からしたら何かとんでもなく痛快じゃないか。いつもいつも男たちからセクハラを受け、痛めつけられている女たちにとって、男を懲らしめてるみたいでどうにも心地よさを感じてしまうのだけど。美女と見ればすぐ口説く、レイプすることを考える男たちに対しての、強烈な反発や抵抗という側面も考えられる。力づくで女を屈服させる男たちに対しての復讐だ。

美女の正体は不明だが、冒頭の焦点合わせ(?)のようなシーン、他の女性の死体を見下ろしていたり、バイクに乗った男との関係性からして、ここが正体を解く鍵のようだけど、そこは敢えて説明しない。この映画にはくどくどとした言い訳めいたもの、種明かしは絶対に似合わないからだ。
全体を通じて流れる不協和音、不穏な音楽、無駄なく残酷、しかしながらスタイリッシュにも見えてくる展開には、取ってつけたような正体の説明はダサくなってしまう。ジ­ョナサン・グレイザー監督はジャミロクワイのMV等も手掛けているのでこういう部分にはちゃんと気を遣ってくれているところが嬉しい。

地球外生命体が人間を捕食するということだが必ずしもそこがポイントでもなく、むしろ人間関係を重視して描いているように見える。
女が男を食うというのはまさに復讐的な要素。だが場当たりであっても、相手にちゃんと家族がいないことを確認して、滅んでも問題ない男だけを復讐的に捕食していた女が変わるきっかけは、顔面にコンプレックスを持つ男との出会いだった。
この男は(恐らくだけど)顔面コンプレックスのせいでそれまでの人生において女性との関わりはほぼ皆無だったであろう。彼の顔を見た瞬間に逃げ出す女性の方が圧倒的に多かったに違いない。異性と恋愛関係に陥るなど、生涯ないと諦めていた彼の目の前に現れた美女。同情心からだけではなく、彼の心の琴線に触れてくれた美女に対して、心を開く気になったのも無理はない。そして美女もまた、劣情よりも(一瞬だけだけど)人間性を重んじる男の出現によって、それまで刹那的に行っていた捕食に対してどこか戸惑いのような表情を見せている。
しかしそんなことはとても稀なことで、多くの事実として別の劣情に押しつぶされていくだけなのだろうか。一瞬でも森の中で出会った男を信じてしまった美女が迎える結末もそうだけど、せめてもの抵抗は「自分という存在と関係性を持たせないこと」だけとは、やはり虚しい。

それにしても、何も疑わずにどんどん進んでいく男たちは、まるで喜んで水中に行進していくように見えるのは私だけだろうか。女神の魔術にでもかかったかのように嬉々として美女を見上げる男たちの、呆けた表情を見るにつけ、哀れな生き物のような気がして仕方がない。それはこの映画に対しての、一部の男性に見受けられるスタンスにも表れていて、こんなにスタイリッシュに人間としての関係性を説いているにも関わらず、スカヨハのヌード目当ての方が垂れ流す文句には閉口する。そこが目当ての男たちこそ食われとけって思わなくもないんだけど(笑)

とにかくスカーレット万歳!なのである。個人的には『Lostin Translation』あたりからずっと彼女を「推してきた」だけに、あれから10年ほど経ってもまだまだ若く、そして才能を伸ばして映画界でキャリアを積んできたスカちゃんよ、あっぱれ!なのである。これパンフレットがなくて本当にもったいないなあ。


★★★★☆ 4.5/5点







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8 Comments

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Unknown (mig)
2014-10-16 09:11:11
ふふふ。ほんとだ
roseさん評価高いね★
これは一般にはつまんないってなっちゃうタイプの映画。
みどころを見出すひとが楽しめるね。
もちろん好みにかなりわかれるところ
さすが「記憶の棘」の監督。あれも不思議だった~
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migちゃん (rose_chocolat)
2014-10-17 10:33:43
なーんか、楽しめちゃいましたね。これ。
>「記憶の棘」の監督
これ観てないんだけど、よさそうなのかな。今度チェックして見ます。
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こんばんは (ノラネコ)
2014-10-18 23:11:39
この映画、30年ほど前に日本で作られた「REM」というインディーズ映画にムードが良く似てるんです。
観ていてすごく懐かしい感覚にとらわれました。
スカヨハの裸ばっかり話題になってるけど、これあえて体型を締めてないと思うんですよね。
中の黒い人が意識するのが、リアルな生身の女という事を明確にするために。
とても切ない映画なんだけど、たぶん半分以上の人たちは観終わって「えっ?」って思うんだろうなw
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ノラネコさん (rose_chocolat)
2014-10-24 08:29:38
SFに詳しくないんですけど、どこかオマージュ感あるんですね。
そこに新たなテイストを入れた感じかな。

中の黒い人、人たる感情と、本来の生きる目的との
間で悩んだんでしょうかね。いろいろ想像できて面白かった。
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Unknown (ふじき78)
2014-12-28 08:47:09
あの沼に沈んでいくシーン。
キリスト教の洗礼を意味しているのなら、洗礼によってナンパ男はバリバリ破壊され、象男はそれまでの人生から神の弟子となる事を拒否するという事だったりするのかもしれない、とか思い付きました。
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ふじきさん (rose_chocolat)
2014-12-28 11:37:36
沼のシーン、私結構好きなんですよ。
うわーまた引っかかったって(笑)

洗礼ですか。そんな解釈もできそうですよね。
何というか、あほみたいに沈んでく男たちが何とも面白かったです。
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こんばんは! (ヒロ之)
2015-05-02 18:17:37
コメント&TBありがとうございました。
出だしから引き込まれはしました。
なんじゃ?と思いつつも、じっと見入っちゃう内容ではありましたね~。
でも結局「なんだったんだろ?」という疑問しか起きず、どうにも心がしっくりこないままの鑑賞終了だったので、この辺自分なりに答えが出させていたらまた作品に対しての感想なり評価なりが変わったのかもしれません。
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ヒロ之さん (rose_chocolat)
2015-05-02 18:42:53
摩訶不思議な作品でしたよね。
でも、なーんか響いちゃったんでした(笑)
スカちゃん生命体の心境が面白かったです。
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