rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

人の愚かさを幻想的映像で不気味に描いた、「パンズ・ラビリンス」

2011-03-11 00:18:54 | 映画
この「パンズ・ラビリンス」のDVDも、綺麗なジャケットの絵とファンタジーコーナーにあったおかげで、選ぶきっかけとなった。
小さい人たちと見始まってすぐに、この映画に漂う不穏な雰囲気を感じた。
レジスタンスと間違われた親子の尋問と処刑の仕方があまりにも凄惨だったので、小さい人たちにはもう見せないことにした。

スペイン内戦下において、レジスタンス掃討を指揮する冷酷無比な継父と無力な母に満たされない少女オフェリアは、現実と幻想の狭間に踏み込んでしまう。
辛く厳しい日常に耐えがたかったオフェリアは、悪魔のような容貌のパン(牧神)の誘惑にまんまと乗ってしまった。
「あなたこそ、地底の王国の姫君だ。」という甘美な言葉に誘われて。
パンから文字の書かれていない大きな本を渡されて、3つの試練に耐えてこそ「地底の王国の姫君」の資格があるといわれる。
それから彼女は、一人で難しい試練に挑まなければならない。
それは、王国の入り口が試練を追うごとに遠く小さくなっていく、まるで「天国の門は、らくだが針の穴を通るより難しい」という聖書の言葉を連想させる。
最初は勇気、次は誘惑に抗う力、最後に愛。
試練を遣り果せた彼女を待ち受けていたのは、約束の地か。

「死んで花実が咲くものか」という言葉がある。
一方で、「真の宝は誰にも盗まれないところ、天ある」。
現実の世界での幸せは、かりそめのもの。
しかし、少女にそれを強要するのは無慈悲というもの。
この映画を観ていると、胸にどんよりと重いものが少しずつ蓄積されていく。
救いのない人生にたいする疲労だ。
経験の少ないこどもであっても、様々な選択は始終付きまとう。
極力正しい選択を心がけなくてはいけないのは、大人も子供も人としての責務だが、その重さはやはり同じではない。
だから、なおのこと少女が哀れでならないのだ。

人生は、選択の連続。
人生の過酷さは、みな同じではない。
不平等が基本なのだ。
これらのどれもが、人を苦しませる。
それが、辛い人生を全うさせるべく生み出されたのが、「約束された地」への手形を得るべく試練をくぐりぬけよとの声なのか。

この映画を観るきっかけとなった、安易な選択法を修正したのは、いうまでもない。