~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No22 金融緩和の解除はNG?・・囚人のジレンマへ陥る危険性

2005年11月17日 | 金融・経済全般
11/16日経新聞 社説 ・・・政府は日銀による金融量的緩和の早期解除をけん制。中川政調会長は「日銀法改正もある」小泉首相も「量的緩和はまだ早いのではないか」と異例の言及をした。
他の政府与党関係者の発言の中にも、物価が0%以上になっても日銀は量的緩和を続け長期金利を低く抑えつけてほしいという思惑ものぞく。  (文中抜粋)

・・・

当ファイルNo13<小泉およびブレーンの本音推定>(10/21)で“推定”しそれから一ヶ月、金融緩和の解除に政府から正式に「待った」がかかりました。

政府の「待った」の大きな理由は以下の二つであることは各社報道の通り明らかですね。
①金利上昇⇒景気に水を差す⇒税収が減る&増税しづらくなる⇒財政危機回避できなくなる
②金利上昇⇒膨大な国債の利払いが増える⇒財政危機リスクが増える

そしてNo13の繰り返しですが、万一景気悪化トレンドへ突入しても、国には以前のような景気刺激策(財政出動)するだけの資金が残っていません。国の借金を減らすあの手この手で精一杯な状況に追い詰められているからです。

数年間節約したり国民負担を増やしただけでは、全く追いつかないレベルの借金なので、
この国は相当長い期間景気上昇トレンドをずっと続けなければならないという理屈なわけです。現在は回復基調が当分続くだろうという楽観的な見方が多いですが、それでも果たして何年間見込めるでしょうか? 米国の景気悪化による影響も心配です。大増税による悪影響も心配です。労働力減少も心配です。それらが大丈夫でも景気は循環するものです。

日銀やマーケットを信頼し、良い意味で政策金利緩和の解除⇒緩やかなインフレ基調⇒実質的な国の債務軽減、という忍耐強いソフトランディングな図式は政府の辞書にはないのでしょうか? 
たぶん目先の国家都合のほうが大事で優先したいからでしょう。

仮に景気上昇局面において今後もずっとゼロ金利を続けていったとした場合の、ハイパーインフレ容認(放ったらかし)⇒実質的な国の債務帳消し、という乱暴なやり方を国はあえて採用したいのでしょうか? まさか、ですよね。
その場合まず犠牲になるのは大幅な物価高に苦しむ消費者である庶民ですが、それはすぐに国債の暴落(急激な長期金利上昇)を招くわけで結局国も破綻します。それは最悪の道です。

ゼロ金利を解除するのはNGで、かといってずっとゼロ金利政策を続けたあげくインフレを放ったらかしにすれば市場金利が暴騰するリスクが・・・

これは為すべきか為さざるべきかというハムレット選択肢のような単純なものではなく、国家vsマーケット(日銀含む)の“囚人のジレンマ”に陥ってしまう危険性をはらんでいます。

国家の事情だけを主張するのではなくマーケットとの誠実な対話と協調が絶対条件であるのは明らか。にもかかわらず独りよがりな現政権は短期的な自己都合によるゼロ金利解除NGを実力行使して、のちに自ら市場金利暴騰リスクを増大させてしまうワナにはまる恐れがあります。

※このファイルの源泉記事として当ファイルNo13<小泉およびブレーンの本音推定>を今一度ご参照いただければと思います。