マスク氏は銃撃事件を受けてトランプ氏支持を公言した=ロイター
シリコンバレー=山田遼太郎】
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は15日、起業家のイーロン・マスク氏が共和党のトランプ前大統領を支援する政治団体に毎月4500万ドル(約71億円)程度の献金を計画していると報じた。
マスク氏はトランプ氏が演説中に銃撃を受けた事件を受け、11月の米大統領選で同氏を「全面的に支持する」と13日に表明した。米国有数の大富豪であるマスク氏の支援は、トランプ陣営への追い風になりそうだ。
WSJは関係者の話としてマスク氏の計画を伝えた。献金するのはトランプ氏を支援するスーパーPAC(政治活動委員会)の一つ「アメリカPAC」。米連邦選挙委員会(FEC)への報告によると5月に登録したばかりの新しい団体だ。
15日に開示された6月末までの報告書には、マスク氏による寄付の記録はなかった。
アメリカPACは6月に約880万ドルの資金を調達し、およそ780万ドルを支出した。米電気自動車(EV)大手テスラの成功により巨額の資産を持つマスク氏の献金で、同団体は資金力が大幅に増すことになる。
アメリカPACへの寄付者には他に、米石炭大手アライアンス・リソース・パートナーズのジョー・クラフト最高経営責任者(CEO)や米データ解析企業パランティア・テクノロジーズ共同創業者のジョー・ロンズデール氏が名を連ねた。
米暗号資産(仮想通貨)交換業者ジェミナイの共同創業者、キャメロン・ウィンクルボス氏とタイラー・ウィンクルボス氏らも献金した。
WSJなどによると、アメリカPACは激戦州で共和支持層に早期の有権者登録を呼びかける活動に重点を置く。トランプ氏支持票を掘り起こして、民主党現職バイデン大統領の陣営に対抗する。
マスク氏を巡っては米ブルームバーグ通信が12日、アメリカPACへの資金提供を報じていた。マスク氏は従来、米大統領選で支持する候補者を公言してこなかったが、不法移民の流入増加などについてバイデン氏を強く批判していた。
マスク氏は3月にトランプ氏と面会したことも明らかになっていた。EVなどを巡りたびたび意見を交わしているという。マスク氏は15日、共和が副大統領候補にJ.D.バンス上院議員を選んだことについても「トランプ氏の素晴らしい決断だ」とX(旧ツイッター)に書き込んだ。
ブルームバーグ通信の世界長者番付「ビリオネアインデックス」によると、マスク氏の資産は2600億ドルを超えて世界首位に立つ。
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伊藤忠総研 エグゼクティブ・フェロー
トランプ再選がEVシフトを再加速させる可能性はある。
WSJはトランプ大統領が再誕した場合にマスク氏が新政権のアドバイザーのひとりになる可能性を両者が議論したとも報道している。
共和党政策綱領が採択されたが、自動運転車の進化・普及の後押しとなるAIの技術革新を阻害するバイデン大統領令を撤回することはロボタクシーを年内に発表するテスラの追い風に。
EV税制優遇措置を廃止する法案を提出したバンス上院議員が副大統領候補に選ばれたが、トランプ政権による原子力・再エネを含めた“あらゆるエネルギー”のインフレ抑制がEVの電費削減を通じた総保有コストの低下につながり、EV需要が再び拡大する可能性は否定できない。