TSMCの運動会で運動場を一周し、従業員にあいさつする創業者の張忠謀氏
(14日、台湾北部の新竹県)=小林健撮影
【竹北(台湾北部)=龍元秀明】
半導体世界大手、台湾積体電路製造(TSMC)の創業者である張忠謀(モリス・チャン)氏は14日、台湾北部で開かれた同社のイベントに出席し「自由貿易はすでに死んだ。
安全保障が国家の最重要事項になり、TSMCは皆が必要とする会社になった」と述べた。
本社近くの北部・新竹県で開いた同社の社内運動会に出席し、あいさつした。TSMCは半導体の自国生産を重視する各国の誘致に応じ、日米欧への工場進出を進めている。
張氏は「競合他社も(各国による誘致などの)地政学的な流れを利用してTSMCに対抗しており、今後数年間の挑戦は過去より厳しいかもしれない」と述べた。そのうえで「TSMCなら克服できると信じている」と強調した。
張氏は18年にTSMCの経営から退いたが、92歳を迎えたいまも業界に強い影響力を持ち続けている。従業員や家族が参加する社内運動会への出席は恒例で、今年は運動場を幹部らと一周した。「1日40分の運動が健康に役立っている」と語り、健在ぶりを示した。
張氏はあいさつの後、記者会見を開き、半導体産業の発展が期待される国として日本とシンガポールを挙げた。TSMCも工場を設ける日本の強みについて「土地や水力発電による電力供給が豊富で、仕事文化もよい」と指摘した。
イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突を巡っては「半導体サプライチェーン(供給網)への影響は小さい」との見方を示した。
TSMCの社内運動会は新型コロナウイルス禍の影響で今年は4年ぶりの開催となった。子会社で熊本工場の運営を担うJASMの代表も参加した。
台湾大手紙の自由時報(電子版)は14日、11月中旬に米サンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の台湾代表に、張氏が起用される見通しと報じた。
台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は中国の反対で同会議に参加できない状況が続いており、張氏が起用されれば6年連続7回目となる。
日経記事 2023.10.14より引用