ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

この一年

2021-03-21 | アメリカ事情

Credit: npr.com

 

 

怒涛の如く世界中を襲ったパンデミックがそれまでごく普通だった日常生活を一変させ、自宅退避・隔離に始まり、多くの人々の自由、命さえも損わせ、憤懣が人々を狂気に走らせ、人種差別問題が噴出し、そんな惨憺たる一年が過ぎた。今年になって、ワクチンが出来、接種者も増え、暗いトンネルの向こうに微かな明かりが見え始めた。惨憺たる一年とは言え、人間の尊厳、希望への渇望、そして他者を思いやる心は、決して失われてはいなかった。今日はそうしたこの一年の一コマのいくつかを紹介したい。

 

COURTESY: TOM MURRAY

Covid-19による肺炎がパンデミックと認められた途端に、マーラーキィ蒸留酒会社の共同経営者の一人であるトム・マレイは、手指消毒剤を探している人々からの電話で殺到した。需要が高い故、在庫がすぐなくなる状態にあったアイテムは、当時クラフト蒸留所の製品在庫の一部ではなかった。ますます問い合わせ電話がかかってくると、マレイと彼のチームは手指消毒剤製造へ方向転換する判断をした。最初の消毒剤製品は、地域や家族などに配布され、次に同社はヴァジニア州北部の緊急医療従事者、救急医療隊員、医療機関、病院、および必要不可欠な企業向けへの製造を開始した。

新たに大量注文が行われるたびに、蒸留所は自費で追加の手指消毒剤を製造し、2週間で500本の個別サイズのボトルを地域コミュニティに無料で配布した。マレイ氏によると、ドライブ・スルーを通じて、さらに300〜400本の4オンスのボトルを無料でコミュニティに配布する予定をたてた。 「正しいことをするまでです」と彼は説明し、「一般大衆はまだ手指消毒剤を店で見つけることができません。」と当時マレイ氏は語った。(2020年春時点)

 

COURTESY:STACEY HATTON

ああ、布マスク!世界中で針仕事のできる、あるいはミシンを持っている人々は、何百枚ものマスクを縫った。家族に、友人に、同僚に、そして医療関係者や老人介護施設へと製作・配布範囲を段々に拡げていった。去年初めてマスクを製作した人々は多い。中に不織布を入れたり、プリーツ型にしようか、それとも二枚を合わせる嘴型にしようかと工夫し、いっぺんに世界中が製作を開始したために、不織布や白糸や細いゴムが品薄になり、靴紐をなんとか代用したり、HEPAという種類の家庭用掃除機のフィルターを用いたり、家庭で個人で製作する人々は様々な工夫を重ねて製作した。マスク以外にも介護施設のために、防護ガウンをシーツから作り、何十着、何百着も作ることに私も些少ながら参加した。

 

COURTESY: KELSEY BROWN

マスクを長時間着用して片頭痛と耳の痛みに悩まされていた医療従事者の友人に触発されて、ケルシー・ブラウンはペンシルベニア州の自宅から、プラスチック製のマスクのゴムを直接耳の後ろにかけないためのフォルダーを製作し始めた。彼女はスクラップ・ブック制作に使用する型を切り抜くクリケット社の機械を使用して、マスクのゴムが着用者の耳の後ろに食い込むのを防ぐアダプターを作成した。いくつかのアダプターには医療従事者応援のための感動的な言葉を加えてある。「患者が看護師の頭の後ろを見るとき、そこに看護師が「戦い続ける」ことがわかるように」と。その言葉は、「英雄が働いています」や「戦い続けましょう」などであった。

当時、ブラウンは200個のイヤーガードを無料で配布しており、その後も無料で作成および配布していった。それらを作る方法を学びたがっている全国のスクラップ・ブック作りを趣味とするクリケット裁断機を持つ人々からの70以上のEメイルがあり、彼女はその制作方法を送り、又インスタグラムでもその情報を発した。趣味のスクラップブック作りに使う道具が、こんなところで思わぬ助けとなるとは、誰が想像しただろうか。

パンデミック最前線で献身的に身を粉にして働く医療従事者への救済を提供したい気持ちは様々な形で実現されていった。

 

COURTESY: MARY ANNE BABINEAU

マサチューセッツ州ソーガスにあるチョコレートショップは、イースターの1週間前に、医療従事者と救急隊員にとって普段のイースターよりも少し甘いものとなった。 ラッソ高級チョコレート社は、ウサギの形のチョコレート、クリーム入りの卵、さらに多くのその他のチョコレートを詰めたイースター・バスケットを3台のバンに積み込み、Covid-19発生に伴い、日夜必死で患者を看護する隣接する病院と地元の消防署に配布した。。 店のオーナーであるヴィンセント・ヴァナ氏はそれまでにも定期的にフードバンクに貢献してきている。

 

COURTESY: THERESA SULLIVAN

医療従事者・緊急医療隊員への支援は、レストラン所有者たちにとっても奉仕する機会となり、多くのレストランは写真のように美味しい食事を用意し、無料配布してきている。レストラン自身も、店舗閉鎖で経済的に困窮しながらも、こうした奉仕を続けている。

 

COURTESY: DANI ANDUJO/LOVE BEYOND WALLS

コロナウイルスの蔓延と戦うために、手を洗うように常に注意を促す中、定期的に清潔な水を利用できないホームレスにとっては難しいことである。 テレンス・レスターと彼のボランティアチームは、非営利団体である「壁を超えて愛」を通じて、ジョージア州アトランタ全体に移動水道とシンクを各所に提供・設置している。 また、それらすべてのユニットを掃除し、毎日水と石鹸を補充する。 彼らが最初に始めたとき、反応は即座にあった。 「人々は手を洗い始め、与えられたこの機会に感謝の意を表した」とレスターはブログに書いている。 「手洗いが必要なので、これはホームレスを経験している人々を保護するための私たちの小さな努力です。」 このグループは、このキャンペーンを通じて、30の移動手洗い設備の資金を調達し、市内に100設備を設置することを望んでいる。

 

COURTESY :JOYCE SINGLETON

3月中旬、アリゾナ州メサで幼稚園とアフターケアの教師としての仕事から帰る途中、ジョイス・シングルトンは不安なニュースを含む一連の電話とテキストメッセージを受け取った。彼女の職場は無期限に閉鎖されてしまった。 1時間後、降りしきる雨と稲妻の中を運転していると、ついていないことにパンクした。彼女が駐車場にやっとそこのディスカウント・タイヤショップは閉店していた。彼女を見たショップのメカニックは彼女を助けることにした。パンクしたタイヤが修理されている間、彼女はこの予想外の出費をどのように支払うかを家族に電話で話していると、そこにたまたまいた客の見知らぬアダム・ルリーは彼女の会話を聞き、その修理費用をカバーすることを思い立ち、彼女に申し出た。そしてタイヤの一部料金を支払いながら、彼はジョイス・シングルトンに彼女の電話番号を彼の携帯電話に入力するように頼んだ。

2日後、ルリー氏は、彼と彼の友人が彼女を助けるために設定したGo FundMeアカウントについて彼女に電話した。その後、彼は店に戻り、残りのタイヤを完済した。彼の行動はシングルトンだけでなく他の人々にも役立った。翌日、シングルトンはパンデミックを乗り越えて他の人々を助けるために今度は彼女がその役割を果たし、家を出ることができなかったさまざまな年配の友人たちに物資や食料箱を届けた。

ルリーの行いは、彼女にとって非常に多くのレベルで大変意味があった。 「それは本当に人間へのあなたの信頼を回復します」とシングルトンは言う。 「本当にあなたのことを気にかけてくれる良い人たちがいます。それは私とみんなにとってとても意味がありました!」

 

COURTESY: NICK MUNRO

皆さんのご無事を思っています、という愛を広めたくて、ある人は付箋でハートの形を窓に貼った。

 

COURTESY: CANDI RAMBO

あるいは医療関係者の目につくように病院近くの歩道に感謝と励ましの言葉をチョークで書いたりした。「私たちは皆一緒にこの渦中にいます。先導してくださってありがとう。」

 

LISEGAGNE/GETTY IMAGES

お互いに励まし合い、労わり合い、明日への希望をしっかり持って。突如として来た大きな試練にも惑わされない人々がいて、人に奉仕したいと願い、行動に移す人々の持つ人間性が垣間見れたそんな一年だった。何があっても、いつの時代にも、希望を持っていきたい。

そうすれば、大丈夫!

 

 

参考:Reader's Digest05/2020

 

 

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