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飼い犬とボール遊びをするジミー・スチュワート。こうして飼っていた犬の一頭がBeauだったのだろう。
数多い主演・出演作品の中で、ジミー・スチュワート(ジェイムス・スチュワート)は本人の一番好きなのは、Harvey(ハーヴィ)だったそうだ。初期の作品のひとつで、店のクラーク役の小作品も、クリスマスの頃には、必ずTVで流す”It's A Wonderful Life" (邦題:素晴らしき哉、人生!)も、ヒッチコック作品の四作も、私は大好きだ。長男は自分の娘を”It's A Wonderful Life"に出てくるジミー・スチュワート扮するジョージ・ベイリーの幼い娘ズズになぞって、その名前で呼んでいる。一作品(After the Thin Man 邦題は、何故か、夕日特急)での悪役を除き、ほとんど全作品で良き人柄の人物を演じた。
1908年ジミー・スチュワートは、ベンシルヴァニア州インディアナの裕福な家庭に生まれ育ち、プリンストン大学を卒業したインテリだが、温厚な性格故、私生活において非常に信頼のおける良き市民であった。第二次世界大戦には1941年志願し、以前から長い航空時間を重ねていた飛行好きのため、爆撃機のパイロットとして1945年まで従軍し、活躍した。ただ一人の女性と生涯結婚し、彼女の連れ子の息子二人を我が子のように育て、また夫人との間に双子の娘を得て、円満な幸せな家庭を築いた。1969年にベトナム戦争に従軍していた息子の一人を失った時は、彼は妻と同様に心から悲しんだ。双子の娘たちの一人は後に人類学者となった。ジミー・スチュワートは、栄誉あるSilver Buffalo Award(シルバー・バッファロー章)というボーイスカウトアメリカ連盟の功労章も受けている。俳優という華やかな職業を得たが、彼自身嘘のない謙虚で誠実な人生を送ったのである。
ジミー・スチュワートは、ひとりの詩人として、ジョニー・カーソンのTonight Showでたびたびその心温まる詩を披露したが、その中でも秀でていたのは、犬についての一篇で、これを朗読した時、ジョニー・カーソンは涙し、視聴していた夫や私も多くの人々同様心を動かされたのだった。その詩の名は、”Beau"である。Beau(ボウ)は死んでしまったが、ジミー・スチュワートは1997年89歳で逝去し、おそらくあちらの世界で再びBeauとまみえただろうことは間違いない。この詩は少々長いので、まずはジミー・スチュワート自身の朗読のヴィデオからどうぞ。英語、それから和訳が続く。
He never came to me when I would call
Unless I had a tennis ball,
Or he felt like it,
But mostly he didn't come at all.
When he was young
He never learned to heel
Or sit or stay,
He did things his way.
Discipline was not his bag
But when you were with him things sure didn't drag.
He'd dig up a rosebush just to spite me,
And when I'd grab him, he'd turn and bite me.
He bit lots of folks from day to day,
The delivery boy was his favorite prey.
The gas man wouldn't read our meter,
He said we owned a real man-eater.
He set the house on fire
But the story's long to tell.
Suffice it to say that he survived
And the house survived as well.
On the evening walks, and Gloria took him,
He was always first out the door.
The Old One and I brought up the rear
Because our bones were sore.
He would charge up the street with Mom hanging on,
What a beautiful pair they were!
And if it was still light and the tourists were out,
They created a bit of a stir.
But every once in a while, he would stop in his tracks
And with a frown on his face look around.
It was just to make sure that the Old One was there
And would follow him where he was bound.
We are early-to-bedders at our house -- I guess I'm the first to retire.
And as I'd leave the room he'd look at me
And get up from his place by the fire.
He knew where the tennis balls were upstairs,
And I'd give him one for a while.
He would push it under the bed with his nose
And I'd fish it out with a smile.
And before very long He'd tire of the ball
And be asleep in his corner In no time at all.
And there were nights when I'd feel him Climb upon our bed
And lie between us,
And I'd pat his head.
And there were nights when I'd feel this stare
And I'd wake up and he'd be sitting there
And I reach out my hand and stroke his hair.
And sometimes I'd feel him sigh and I think I know the reason why.
He would wake up at night
And he would have this fear
Of the dark, of life, of lots of things,
And he'd be glad to have me near.
And now he's dead.
And there are nights when I think I feel him
Climb upon our bed and lie between us,
And I pat his head.
And there are nights when I think I feel that stare
And I reach out my hand to stroke his hair,
But he's not there.
Oh, how I wish that wasn't so,
I'll always love a dog named Beau.
私が呼んでも、彼はそばに来たことはなかった
私がテニスボールを手にしていたり、
あるいは、彼がその気でない限り、
大概彼はまったく来なかった。
若い時分
彼は決して「ついてこい」を学ばず
あるいはお座りや伏せもせず、
自分のやり方で物事を運んできた。
調教されるのを彼は好まなかったが、
彼といると、物事がだらだら長引いて退屈なことはなかった。
私への面当てに彼は生垣の薔薇を引っこ抜き、
そんな彼をつかまえれば、振り向いて私を噛んだ。
日増しに彼は多くの人々を噛み、
配達少年は、彼の格好の餌食だった。
ガス検針員は検針できず仕舞いで、
私達が本当の人食い犬を飼っていると言った。
彼は家に火をつけたが、
その件は話すに長い。
彼が生き残ったと言うだけで十分で
そして家も無事だった。
夜の散歩で、グロリアが彼を連れて行き、
彼はいつも真っ先にドアから出て行った。
妻と私はしんがりを務めた
何故ならば私たちの骨はきしんで痛かったからだ。
ママが連れていると、彼は通りを煽動したものだった、
この二者はなんと美しいペアだったことか!
そして、まだ明るく、観光客が通りを行きかっている場合、
彼らは少しばかりどよめきを起こした。
だが、時々彼は自分の来た道で止まり、
顔をしかめながら、周りを見回していた。
老飼い主がそこにいるか確認するためだった。
そして彼はつながれているその老飼い主についていくのだった。
我が家では私たちは早くに就寝するー私がその最初に寝室へ行く者だと思う。
そして私が部屋を出るとき、彼は私を見て
暖炉のそばの彼の居場所から立ち上がる。
彼はテニスボールが上の階にあり、
私が彼にボールをあげるのを知っているのだった。
彼は鼻でそれをベッドの下に押しやり、私はそれを笑顔で釣り出す。
そして、やがて彼はボールに飽き、
自分の居場所で眠るのだった。
そして彼が私たちのベッドに登るのを感じた幾夜があり、
私たちの間に横たわり、
私は彼の頭を撫でたものだった。
そして、この凝視を感じる夜もあった
私が目を覚ますと彼はそこに座っていた
だから私は手を差し伸べ、彼の毛並みを撫でるのだ。
そして、ある時、彼がため息をつくのを感じ、
私は、その理由を知っていると思う。
彼は夜に目を覚ますと、
この恐怖を感じていた
暗闇への、生きていることへの、そしてたくさんのことへの、
だから彼は私の傍らにいるのが喜ばしかった。
そして今は彼は死んでしまっている。
彼がベッドの私たちの間に上り、
私が彼の頭を撫でてやるのを感じる幾晩かある。
そして彼のあの凝視を感じる夜があり
私は腕を伸ばして彼の頭を撫でるのだ。
だが、彼はいない。
ああ、どれほど私はそうでないと願っていることか、
私はいつまでもBeau(ボウ)という名の一匹の犬を愛するだろう。