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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

原爆症認定訴訟で原告17人が全員勝訴!→福島原発事故では広島の原爆の100倍セシウムが出ている。

2015年10月29日 | 被爆者援護と核兵器廃絶

 

  2015年10月29日、原爆症認定訴訟、東京地裁でまた原告全員勝訴です!

 広島や長崎に投下された原爆で被爆した17人が原爆症と認められないのは不当だとして、本人や遺族計19人が、国を相手に認定申請の却下処分の取り消しを求めていたのですが、増田稔裁判長は、17人全員を原爆症と認め、却下処分を取り消しました。

「原爆症認定基準は合格するのが司法試験より難しい」

と私は言っていたのですが、その後2回基準が緩められたにもかかわらず、この17人の被爆者の方々は原爆症ではないと厚生労働省に蹴られていたのです。

 その方々が全員原爆症と認められたということは、厚労省の認定が全員が全員間違っていたということですから、いまだにいかに原爆症認定基準が放射線被害を矮小化した、歪んだものであるかがわかります。

 これは厚労省が、「遠距離」被ばくの過小評価、残留放射線の影響を極小化、なにより内部被曝による病気の発症を認めようとしないことが原因です。

 つまり、国民の健康を守る官庁であるはずの厚労省が、原発推進やアメリカの核のカサ正当化のために、放射線の脅威をできるだけ小さく見せようとしているも同然なのです。

被爆者の平均年齢が80歳を超える。原爆症認定訴訟、国は被爆者が死に絶えるのを待っているのか!

原爆症認定訴訟大阪地裁 またも原告被爆者全員勝訴!

 

 

 さて、今回の原告の方々の症状は全部、被曝後半世紀以上経って発症したものばかりです。

 今回の原告の方々は、がん、狭心症、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、肝障害などが原爆症として認められたのですが、厚労省の「新しい審査の方針」で「積極認定」とされる病名は、

①悪性腫瘍(固形ガンなど)、

②白血病(悪性リンパ腫、骨髄異形性症候群含む)、

③副甲状腺機能亢進症(高カルシウム血症)、

④放射線白内障(加齢性白内障を除く)、

⑤放射線起因性が認められる心筋梗塞、

⑥放射線起因性が認められる甲状腺 機能低下症、

⑦放射線起因性が認められる慢性肝炎・肝硬変

です。


 さらに、裁判所で勝訴が確定した原爆症の病気はこれだけではありません。

 以下、全国の地裁・高裁で原爆症だと認められた疾病名を上げると以下のように多種多様なものがあります。

 放射線の影響はまさに全身に顕われるわけです。

骨        変形性脊椎症 変形性膝関節症 骨粗鬆症

血液・血管    貧血 骨髄異形成症候群 白血球減少症 網膜動脈閉塞症

脳        脳梗塞 椎骨脳底動脈循環不全

消化器      糖尿病

皮膚       熱傷瘢痕(ケロイド)

その他      体内異物

福島原発事故から1年 原爆症訴訟がまた勝訴! 裁判で確定した放射線に起因する全病名はこれだ

 

 これだけの病気が、放射線に被曝してから何十年も経ってから出てくるのが、被ばくの恐ろしいところなのです。

 福島原発事故の影響が本格的に出るようになったらどんなことになるのか想像もつきません。

 え?

 原爆と原発事故は違うでしょうって?

 それは原爆投下の凄まじい破壊力が印象に残るからです。

 半減期が30年と長いセシウム137で見ると、福島原発事故は広島に投下された原爆の100倍以上のセシウムを放出しているのをご存知でしょうか。

 広島原爆については「原子放射線の影響に関する国連科学委員会二〇〇〇年報告」を基に試算されているのですが、これによると、広島の原爆は

89テラ(兆)ベクレル

です。

福島原発事故でセシウム137が広島型原爆の168倍放出 うち22%が陸地に落ちた=原爆37発分

 

 ところが、首相官邸HPにある東電福島第一原発事故に関するUNSCEAR報告についてによると、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の報告した「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」によると、福島原発事故で大気中に放出されたセシウム137は

6000~2万テラベクレル

だというのです。

 桁が二ケタ以上違うでしょ?実に、広島原爆の100~200倍ですよね。

 ちなみに、これ以外に、海洋に直接流出したセシウム137は

3000~8000テラベクレル

だそうです。

 

 しかも、これ、原発事故があった2011年3月だけの数字で、その後もいまだに放射性物質って福島原発から漏れ続けているんです。

 広島の原爆の100倍、200倍のセシウム。

 その影響が今も出ているかもしれないし、数年後、数十年後になっても出続ける。

 誰が放射線感受性が強くて、誰のどこにいつ病気が出るかわからないのです。

 放射性物質は人類の手に余ります。原発はやめにしませんか。

 

 

被爆者が死に絶えるまで待つようなやり方はまさに棄民政策。

それは、沖縄の方々や、震災の被災者の方々に対しても同じだと思います。

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被爆者の思いを胸に―原爆症認定集団訴訟をともに闘った医師たちの勝利の軌跡
全日本民主医療機関連合会  (著, 編集), 民医連= (編集)
かもがわ出版

「内部被ばくは影響しない」「爆心地から遠いから大丈夫」という政府の認定基準により原爆症と認められなかった被爆者が起こした訴訟。本書は勝利を導いた医師たちの闘いの意義を明らかにする。福島につながる貴重な記録である。


裁かれた内部被曝―熊本原爆症認定訴訟の記録
牟田 喜雄 (監修), 熊本県原爆被害者団体協議会原爆症認定訴訟熊本弁護団 (編集)
花伝社

内部被曝の健康影響を明らかにし勝利した熊本原爆症認定訴訟。福島原発事故による内部被曝の危険性を問う。

 

被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか (岩波ブックレット)
伊藤 直子  (著), 中川 重徳  (著), 田部 知江子  (著)

岩波書店

近年の研究によって,放射線は,がんに加え,心筋梗塞や脳卒中等の発症を促進することが明らかになっています。ところが,被爆者が病気になって自分の病気を「原爆症」と認定するように申請しても,ほとんど却下されてしまいます。

原爆被害を小さくみせる国の政策によって,残留放射線や内部被曝等,放射線による被害が否定され隠されてきたのです。


全員勝ったで!―原爆症近畿訴訟の全面勝訴を全国に (かもがわブックレット (160))
原爆症認定近畿訴訟弁護団 (著), 安斎 育郎 (監修)
かもがわ出版

「全員を原爆症と認定すべき」という原爆症認定近畿訴訟判決までの道のりをたどり、同判決の画期的な意義を明らかにするとともに、全国の集団訴訟の全面勝訴への展望を示す。

 

原爆症認定集団訴訟たたかいの記録
原爆症認定集団訴訟刊行委員会 (編集)

日本評論社

広島、長崎に投下された原爆被害の補償から排除さた多くの被害者。集団訴訟の提訴から原爆症認定を勝ち取るまでの過程を克明に記録。

 

原爆症認定訴訟が明らかにしたこと―被爆者とともに何を勝ち取ったか
東京原爆症認定集団訴訟を記録する会 (編集)

あけび書房

ブックレビューより。

国がこれを原爆症と認めたがらないのを、本書の当事者達は米の核の傘に守られているから、加えて国策として原発を推進しているために原爆被害を小さく見せたいからだとしています。


にんげんをかえせ―原爆症裁判傍聴日誌
長谷川 千秋  (著), 京都原爆訴訟支援ネット (編集)
かもがわ出版

近畿訴訟の6年半、全ての裁判を傍聴。首相との確認書、原爆症基金法を実現した力とは何か、核兵器廃絶へと動き出した時代に何をすべきかを伝える。

 

 

 被爆者17人の原爆症認定申請を却下した国の処分取り消しを本人や遺族が求めた集団訴訟の判決で東京地裁は29日、全員を原爆症と認め、処分を取り消した。

 同様の訴訟で、一度に原爆症と認められた人数としては最多となった。

 増田稔裁判長は「爆発直後だけでなく残留放射線の影響や、放射線への感受性の個人差も考慮すべきだ」と指摘。国の基準で原爆症と認められなくても、疾病の原因が放射線と認められる場合があるとした。

 17人は要件を緩和して2008年に導入された認定基準で申請を却下され、さらに一部緩和した13年末の新基準でも認められなかった。

(共同)

 原爆症認定をめぐる集団訴訟で全員が勝訴し、喜ぶ原告ら=29日午後、東京地裁前

 原爆症認定をめぐる集団訴訟で全員が勝訴し、喜ぶ原告ら=29日午後、東京地裁前
 
 
 

 政府が、東京電力福島第一原発の1~3号機事故と、一九四五年の広島への原爆投下で、それぞれ大気中に飛散した放射性物質の核種ごとの試算値をまとめ、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出していたことが分かった。半減期が約三十年と長く、食品や土壌への深刻な汚染を引き起こすセシウム137の放出量を単純比較すると、福島第一原発からの放出量は広島原爆一六八・五個分に相当する。

 福島第一原発事故は今年六月の国際原子力機関(IAEA)閣僚会議に対する日本政府報告書、広島原爆については「原子放射線の影響に関する国連科学委員会二〇〇〇年報告」を基に試算されている。

 セシウム137の放出量は、福島第一原発1~3号機が一万五〇〇〇テラベクレル(テラは一兆)、広島原爆が八九テラベクレル。このほかの主な核種では、福島事故で大量に飛散したヨウ素131(半減期約八日)は、福島が一六万テラベクレル、広島が六万三〇〇〇テラベクレルで、福島は広島原爆約二・五個分。半減期が約二十八年と長く、内部被ばくの原因となるストロンチウム90が、福島が一四〇テラベクレル、広島が五八テラベクレルで、広島原爆約二・四個分となる。

 ただ、政府は特別委に対し、福島事故と広島原爆との比較自体には「原子爆弾は爆風、熱線、中性子線を放出し、大量の殺傷、破壊に至らしめるもの。放射性物質の放出量で単純に比較することは合理的ではない」と否定的な考えを示している。

 試算値は川内博史衆院科学技術・イノベーション推進特別委員長が八月九日の同委員会で「広島型原爆の何発分かを政府として正確に出してほしい」と要求していた。

(東京新聞)

 


 3月11~29日に福島第1原発から放出されたヨウ素131(上)とセシウム137(下)が地面1平方メートル当たりに沈着した量。単位はいずれもキロベクレル(国立環境研究所提供)

 

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質は、東北だけでなく関東や甲信越など広範囲に拡散し、ヨウ素131の13%、セシウム137の22%が東日本の陸地に落ちたとの分析結果を、国立環境研究所の大原利真・地域環境研究センター長らが25日までにまとめた。

 大原さんらは、大気汚染物質の拡散を予測するモデルを使い、3月11日の事故発生から3月下旬までに、放射性物質が東日本でどう拡散したかを分析した。

 放射性物質は風に乗って移動し風や雨の影響で地面に沈着。北は岩手や宮城、山形の各県から、南は関東を越え静岡県にも届き、新潟や長野、山梨の各県にも到達した。

(共同通信 2011年8月25日)

 

 

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3 コメント

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変U+203C (リベラ・メ)
2015-10-29 21:03:59
確かにその日その時間、原爆が投下された場所に居たのに、ホンの数メートルの差で“認定・不認定”が分かれるなんて、変です。放射能は形を持たず、眼に見えないものなのに…。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-10-30 09:28:24
70年かけて...やっと認定。

先日、福島第一原発の労働者で、19ミリシーベルト/hの被曝 (あくまで線量計上。実際の被曝量はもっと多い?) で白血病を発症した人に労災認定が下りた。過去に20ミリシーベルトの被曝で脳腫瘍を発症し、亡くなった労働者にも認定が下りているので、整合性のある結果であろう。

放射線への感受性は、個人個人でだいぶ違うらしい。年齢が若いほど、男性より女性がより大きな影響を受けるというのが一般論だが、実際には屈強な大人の男性でも被曝由来の病に倒れている。

一般住民を年20ミリシーベルトまでの汚染地に無理矢理帰還させるという措置は、問題大アリである。旧ソ連ですら、事故後数年を経てではあるが、年1ミリシーベルト以上の被曝可能性のある地域では、移住の自由が保障された。
日本は旧ソ連以下の人権意識しか持たない三流国家だ。

体調の異変を感じる度、「あぁ、被爆が原因の病気かも...」と怯えながら暮らしてきた被爆者。これからはその重荷を、福島、東北、関東、そして日本全体で背負って生きていく。福島はもちろんだが、日光、つくば、松戸でも小児甲状腺ガン患者が発生した。都内でも患者が出るのは時間の問題だろう。いや、もうすでに出現しているのだが、隠蔽されているのか?
返信する
記名忘れ (僭越ながら バードストライク)
2015-10-30 14:14:33
僭越ながら...9:28の投稿は、わたくしです。またやってしまいました (てへぺろ!)。
返信する

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