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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

野田首相との面会に臨む脱原発デモ主催者には、小泉首相と面談した拉致被害者家族と同じ罠が待っている

2012年08月07日 | 原発ゼロ社会を目指して

(これまで、内閣総理大臣が市民団体と会ったのは、すべて謝罪して市民側の要求を呑むことで、支持率が上がる場面ばかりだった)

 

 

 野田首相は、原発再稼働への抗議活動を毎週金曜に首相官邸前で行っている市民団体メンバーと2012年8月8日に面会する方向で調整に入ったそうです。

 市民団体側は当然、関西電力大飯原発を含めた全原発の停止や脱原発政策への転換と、政府が示した原子力規制委員会の田中俊一委員長などの同意人事案の撤回などを要求するでしょう。

 これに対して、野田首相は大飯原発の再稼働について、電力の安定供給の必要性を説明し、原発再稼働に理解を求めるにき待ています。

 まあ、議論が噛み合うわけがないですね。

 原発比率の意見聴取会も案の定0%の意見が7割を占めたわけですが、パブリックコメントだってそれ以上に脱原発の意見が多いに決まっています。これで、2030年には15%だとか20~25%にしますといえるわけもなく、やぶ蛇ですよね(むしろ、2030年までは原発を続けられることに、彼らにとっては意味があるのでしょうが)。

 今回の市民団体との面会にしても、野田首相一時は「大きな音」と軽んじて批判を受けた官邸前デモが無視できなくなり、減り続ける支持率低下をなんとかストップするべく会うのでしょうが、国民の脱原発志向に火に油を注ぐ可能性も高い、難しいさじ加減が求められるところで、見ものです。

 だから、原発容認にはっきりと転じた橋下大阪市長もデモ側をけん制しているのでしょう。

橋下さん。脱原発デモ主催者が野田首相に会うのを批判する、あなたの民主主義ってなんですか?

(そろそろ、野田内閣不支持が支持の3倍になる)



 野田首相にとっては難しい決断だし、市民側との面談方法の条件交渉も困難でしょうし、国会には問題山積だし、面談が実現するかどうか、いつになるかはまだ流動的です。

 他方、市民団体側も実り少ないことがわかっている首相との面会に臨むのは冒険です。運動歴が豊かな人だって、こんな場面を経験した人はまずいないわけですし、まして官邸前デモ主催者はそんなに市民運動歴はないと聞きますから、今から緊張で大変でしょう。

 あまりに野田首相が門切り型の説明に終始すれば、野田首相も批判されますが、主催者も何やってんだと仲間からつきあげられるでしょうし、かといって、首相が会うと言っているのに断る手はないし、辛いところです。

 実は私が心配しているのは、2004年に小泉首相と北朝鮮拉致被害者家族が面談したときの再現です。

 このとき、拉致被害者の救出について、当時の小泉首相らが先に日本に帰国していた拉致被害者の子どもを取り戻したものの、安否不明者に対する取り組みは先送りされたのに対して、家族会は「最悪の結果だ」として面会に来た小泉首相に不満を訴えたところ、

「小泉総理に感謝していない」「総理に対する暴言があった」「小泉首相を批判する家族会は非国民」

等という内容の批判メールや抗議電話が家族会に殺到したんですよね。

 あの頃は、今以上に、余拉致被害者側が批判されるなんて考えられない雰囲気でしたから、小泉人気恐るべしとも感じましたし、いかに日本が「お上にたてつく」ことが許されない社会であるかを実感しました。

(拉致被害家族会と面談する小泉首相 当時)



 今の野田首相と当時の小泉首相の人気は比べるべくもないわけですが、逆に拉致被害者に比べると脱原発デモ主催者には、原発推進派という狡くて強力なライバルがいます。彼らは手ぐすね引いて、最初から邪魔な脱原発デモをなにがなんでも批判しようと待ち構えているわけです。

 かたや、野田首相は大飯原発は安全が確認されているだの、ふざけたことばかり言うに決まっているわけですから、野田首相が特に挑発するつもりがなくても、面談しているデモ主催者が憤激する場面がありうることは容易に想像できます。

 そもそも、冒頭の図のように、これまで内閣総理大臣が市民と面談するのは、政権側が人気取りのために「ごめんなさい」することに決めている場面ばかりでしたが、今回は、野田首相には折れる気はありません。

 もちろん、折れる気はない首相が会わざるを得ないところまで押し込んだ官邸前デモは、日本の民主政治の歴史の中でも画期的です。

 しかし、首相面談後、原発推進派の用意周到かつ意地の悪い策動に乗せられて、ネット世論やマスメディアが安易にデモ主催者を袋叩きにすることだけはないように、日本国民の民度の成熟を期待したいと思います。

 

 

不安的中とならなければいいのですが。

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 野田佳彦首相は6日、脱原発を掲げ首相官邸前でデモを繰り広げている市民団体「首都圏反原発連合」の代表者と8日午後に面会することで最終調整に入った。関係者が明らかにした。首相は面会を通じて、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働への理解を求めたい考えだ。

 関係者によると、面会はインターネットで中継され、公開される見通し。首都圏反原発連合は簡易ブログ「ツイッター」で、「会談は官邸ホームページ上で、最初から最後まで生中継される予定」と説明している。面会場所については衆院議員会館とする案などが出ており、官邸と代表者側の調整が続いている。

 デモ代表との面会をめぐっては、首相は3日の内閣記者会とのインタビューで、「(面会の)やり方や日程を含め調整させているところだ。遠くない将来に実現できる」と前向きな姿勢を示していた。 

[時事通信社]




毎日新聞 2012年08月06日 22時17分(最終更新 08月06日 23時57分)

野田佳彦首相
野田佳彦首相

 野田佳彦首相は6日、原発再稼働への抗議活動を毎週金曜に首相官邸前で行っている市民団体メンバーと8日に面会する方向で調整に入った。面会の様子を官邸のホームページ上で、インターネット中継することも検討している。ただ、消費増税法案をめぐる与野党対立の激化で国会日程が不確定なことから、面会日がずれ込む可能性も残っている。

 市民団体側は面会で、関西電力大飯原発(福井県おおい町)を含めた全原発の停止や脱原発政策への転換、政府が示した原子力規制委員会の同意人事案の撤回などを要求する方針。首相は大飯原発の再稼働について、電力の安定供給の必要性を説明し、当面の原発再稼働に理解を求める考えだ。

 首相官邸は当初、面会に否定的だったが、抗議活動の急拡大を受けて方針を転換。首相は3日の内閣記者会のインタビューで、近く面会する意向を明言していた。【飼手勇介】

 

 

野田首相と市民団体面会に反対=公平・透明性に疑問-枝野経産相

 枝野幸男経済産業相は7日の閣議後記者会見で、野田佳彦首相が脱原発を訴える市民団体の代表者と面会する方向で調整していることについて「私は反対だ」と明言した。特定の団体代表者と面会することは「公平性、透明性を考えれば、誤解を招く可能性がある」と疑問を呈した。
 政府は将来のエネルギー政策に関する意見聴取会を全国の11都市で開き、国民から広く意見を聞いた。枝野経産相はこうした機会を例示し、「全ての国民が参加可能なシステムがある」と説明。その上で「経済界をはじめ、直接意見を聞くことはしていない。統一して徹底したい」と強調した。

(時事通信 2012/08/07-10:20)

 



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2 コメント

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同感です (kei)
2012-08-09 00:17:51
あの魂を売ってしまった首相と会ったところで、言葉が噛み合うとは思えません。
良くて「2030年までに脱原発します」程度かな。
返信する
エネルギー戦略会議が抗議 (堺市民)
2012-12-16 11:36:06
原発ゼロを目指すのは火星旅行を企てるに等しいとの
暴言を吐いた維新代表代行ですが,どうやら意図的な
事実誤認(これを普通は嘘と言います)だったようです.

自分が任命した府市統合本部の委員の発言を事実
ねじまげて喧伝した結果,自分の作ったエネルギー
戦略会議から抗議を受けることになったようです.

エネルギー戦略会議から出る最終答申と維新の会の
政策が齟齬をきたした場合,どうするのか今から
楽しみです.(^_^)v
返信する

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