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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

2023年9月1日は関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺から100年目。歴史修正主義の政府を正し、内なる差別意識を直視し、我々のような普通の市民が二度と同じ惨劇を繰り返さないようにしたい。

2023年09月01日 | 外国人の人権・人種差別反対・嫌中嫌韓反対

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 私は郷里の兵庫県を離れ、古巣の東京弁護士会に戻ってもう9年目。

 東京都世田谷区に出稼ぎに来ています(笑)。

 今ゴミ出しに行ってきた世田谷の朝は気持ちよくって、もうすっかり秋の気配です。

 これが地球温暖化など影も形もなかったろう100年前の東京は、さらに涼しくて気持ちのいい朝だったかもしれませんね。

 午前11時58分、少し雨も降ったそうですが、マグニチュード7・8~7・9と推定されている関東大震災はそんな日に起きました。

 この地震では、発生が昼食の時間と重なった事から、多くの火災が起きて被害が拡大しました。また、津波、土砂災害なども発生し、死者・行方不明者は10万5千人余にのぼりました。

 今と違って地震が予測されていたわけではありませんし、大正12年の頃ですから、家も倒れやすく燃えやすかったでしょう。

 すべての犠牲者の方々のご冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。

 

 

 私もまだ勉強中ですが、そんな地獄のような恐怖の中、この日本で、日本人の市民が朝鮮人・中国人の方々を大量に虐殺するという事件が起こりました。

 大変な大混乱の中、内務省は今「地獄逝こう」=自国維公が作ろうとしている緊急事態条項に基づく緊急事態宣言にあたる戒厳令を発布し、各地の警察署に治安維持に最善を尽くすことを指示しました。

 しかし、そのときに、内務省が各地の警察署に下達した内容の中で

「混乱に乗じた朝鮮人が凶悪犯罪、暴動などを画策しているので注意すること」

という内容が含まれていました。

 この通知は行政機関や新聞、民衆を通して広まり、朝鮮人や間違われた中国人、日本人(ろう者の方や沖縄の方などが東京弁を上手く話せなくて疑われて殺される、社会主義者が混乱に便乗した軍に殺されるなど)が殺傷される被害が発生したのです。

 それは東京だけではなく全国各地に広がりました。

 よく関東大震災における朝鮮人虐殺は、自然発生的に起きた

「不逞朝鮮人が井戸に毒を入れた」

というような流言飛語で起きたと説明されるのですが、実はその発端は政府の戒厳令とデマによるものだということを忘れてはなりません。

毎日新聞特集ワイド、「本当に必要?『緊急事態条項』」。「関東大震災では戒厳令で軍や警察が弾圧した」

 

 

 この虐殺の正確な犠牲者数は不明ですが、政府が開いた2008年3月の中央防災会議では、恐ろしいことに関東大震災全体の犠牲者の1~数パーセントが日本人自警団などによる殺害によるものと推定されています(すなわち、1000~数千人)。

 また、当時の官庁記録としては、司法庁報告書では民間で殺害し起訴され裁判になった件数だけでも、殺された朝鮮人233人、内地人58名、中国人3名となっています

 また、政府の戒厳業務詳報によれば日本軍によって殺害された人数だけでも少なくとも朝鮮人39人、内地人27人です。

 同詳報では、軍と自警団による軍民共同の殺害による犠牲者として朝鮮人約215名とも報告されています。

 さらに、内務省は248名、朝鮮総督府東京出張員は見込み数として813名を犠牲者数として挙げています。

 これに対して、岸田政権の松野博一官房長官は2023年8月30日の記者会見で、関東大震災の直後に起きた朝鮮人虐殺について

「調査した限り、政府内で事実関係を把握できる記録が見当たらないところだ」

と述べたのですが、これほどの政府によるフェイク、デマ、歴史修正主義はありません。

 もう、言語道断で、満腔の怒りをここに表明したいと思います。

『横浜における関東大震災時朝鮮人虐殺』より

 

 

 岸田政権だけでなく、東京都の小池百合子知事も「東京100年史」にさえ記載がある朝鮮人虐殺を認めたがらず、歴代知事が続けてきた朝鮮人虐殺の犠牲者追悼式への追悼文送付を見送っています。

小池百合子都知事が出馬表明。自民党のネット監視創始者、日本会議国会議員懇談会の副会長、核武装論者、関東大震災での朝鮮人虐殺否定、幸福実現党と選挙協力。こんな極右政治家を首都の知事に再びしてはダメだ。

 

 

 今、北朝鮮が人工衛星や弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、さらには中国・北朝鮮が日本の汚染水放出に激しく抗議しているということで、またナショナリズムや反中・嫌朝意識が勃興してきています。

 100年前に朝鮮・中国人に対する虐殺が起こったのは昔のこと?まだ情報流通も民主主義の浸透もなかったから?

 しかし、普通の善良な市民が政府のデマ宣伝に乗せられて、残虐な行為をするということは今でも考えられませんか?

 いやむしろ、SNSなどが発達したネット社会だからこそ、流言飛語が巧妙に大量に流れてきて、善良な人々がとんでもないデマを信じて陰謀論に走るという姿は、毎日毎日見せつけられているではありませんか。

 松野官房長官の記者会見と小池都知事の追悼文送付見送りを象徴とする国家権力の歴史修正主義を放置することは、すなわち私たちの内なる差別意識を温存すること。

 100年前の私たちも、普段から朝鮮人差別をしている罪悪感があり、だから復讐されるというやみくもな恐怖心を抱いたのでしょう。

 これから私たちが誇り高く生きるためには、政府に歴史に直面させること。

 そして、我々自身が我々の先祖がやっていたことを直視して、反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないために不断の努力を続けることが必要だと思います。

朝鮮人虐殺の目撃証言などを集め、追悼活動に取り組む一般社団法人「ほうせんか」の西崎雅夫代表=8日、東京都墨田区

2023年8月31日時事通信 『朝鮮人虐殺「教訓伝えねば」 証言集め、追悼活動続ける―関東大震災100年』より、朝鮮人虐殺の目撃証言などを集め、追悼活動に取り組む一般社団法人「ほうせんか」の西崎雅夫代表

石原慎太郎氏の差別発言と暴言を「石原節」とごまかすマスコミはジャーナリズムの放棄だ。悪い政治家が亡くなったら即座に批判することがこれからの世の中を良くするのだから。

 

 

参考記事 村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより

関東大震災における朝鮮人虐殺事件。過去の教訓的史実を消す権力者や国家は、現在の現実について嘘をつき、偽り、自ら誤り、自ら失敗し、いずれ自らを滅ぼす。

 

kojitakenの日記さんより

関東大震災から100年。震災直後に起きた朝鮮人虐殺に関する歴史修正主義とレイシズムについては松野博一もひどいが小池百合子も最悪

 

関東大震災時の朝鮮人迫害―全国各地での流言と朝鮮人虐待

山田 昭次 | 2014/9/1
 
 
 
 
 
 

わたくし、実は本当に気が弱い人間で、地上波のニュースも急に事件や事故の映像を出すのでほとんど見ないのですが。

勇気を出して、歴史を直視するために、森達也監督渾身の「福田村事件」。

これは観に行こうと思います。

この困難な作品に出演された有名無名の俳優さんたちと森監督以下のスタッフを尊敬します。

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 1923年9月1日の関東大震災から今年で100年。死者・行方不明者は10万5000人に上り、混乱のさなかに朝鮮人だけでなく中国人も、軍や警察、自警団によって虐殺された。学者や弁護士、ジャーナリストらでつくる「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺百年犠牲者追悼大会実行委員会」は政府に事実を認め、賠償することを求めている。来月には東京都内で記者会見を開く予定だ。 (大杉はるか)

◆「放火」「井戸に毒」 戒厳令下でデマ広がり

内務省警保局から各地方長官に送られた電信の記録を示す林伯耀さん

内務省警保局から各地方長官に送られた電信の記録を示す林伯耀さん

 「関東大震災の朝鮮人・中国人虐殺を主導したのは日本政府という事実と責任を認め、国家として犠牲者に謝罪し賠償すべきだ」
 同実行委の世話人で、「関東大震災中国人受難者を追悼する会」共同代表の林伯耀りんはくようさんが話す。
 大震災では戒厳令下で「朝鮮人が放火した」「井戸に毒を入れた」といったデマが広まり、植民地支配下にあった朝鮮人とともに、中国人も虐殺された。内閣府中央防災会議の2008年の報告書は「殺傷の対象となったのは、朝鮮人が最も多かったが、中国人、内地人も少なからず被害に遭った。加害者の形態は官憲によるものから、官憲が保護している被害者を官憲の抵抗を排除して民間人が殺害したものまで多様」とし、犠牲者は「震災による死者数の1〜数%」と推計している。
 林さんが「虐殺を主導したのは日本政府」と考える根拠の1つは、内務省警保局が9月3日に海軍船橋送信所に「朝鮮人は各地に放火し、爆弾を所持し、放火する者あり。厳重なる取り締まりを加えられたし」との電文を持っていき、各地方長官に送られたことだ。政府が流言を否定せず、虐殺を容認する空気がつくられた。

◆中国人虐殺は最大750人 「意図的に殺している」

2018年9月11日、王希天氏が虐殺された東京都江東区の逆井橋近くの現場を訪れ追悼する遺族ら=木野村間一郎氏撮影・提供

2018年9月11日、王希天氏が虐殺された東京都江東区の逆井橋近くの現場を訪れ追悼する遺族ら=木野村間一郎氏撮影・提供

 中国人の虐殺は、目撃者から直接聞くなどして調査した高校教諭仁木ふみ子さん(故人)らの研究があり、日弁連も2003年、被害者は最大750人との報告書をまとめている。それらによると、特に大きな被害を出したのが大島町(現東京都江東区大島)で起きた虐殺。同町に住んでいた浙江省温州市出身の中国人労働者らがターゲットになり、支援していた「僑日共済会」の王希天会長も軍に殺害されたという。
 なぜ中国人労働者が狙われたのか。林さんは「震災前から日本の官憲や日本人労働者との間に緊張関係があった」と指摘する。日本は1920年に不況に陥り、中国人の入国制限や強制送還が始まっていた。「当時の日本政府の文書には朝鮮人と間違えたという『誤殺』の文字があるが、中国人独自の服装をしており、誤殺とは認められない。意図的に殺している」
 林さんの父親は13年、福建省福清から来日。東京で呉服の行商人をしていたが、震災発生で「中国人も襲われる」と感じ、同居人らと警視庁に保護を求めた。通行証を発行され、難を逃れたという。

◆認めない政府に怒り「いつかまた世相が問題起こす」

 虐殺はその後中国側も知ることとなり、国際問題となる。23年11月に外務省条約局が中国人虐殺問題に関して国家の責任を調査した文書には「暴動の行為が外国人に対し行われた場合は、官憲に身体財産の安全を確保する義務があると推定され、国家に賠償責任がある」と書かれている。中国側の調査団派遣などを受け、日本政府が24年5月に「支那人傷害事件慰藉いしゃ金20万円責任支出の決定」をした記録や、交渉が中断し支払われなかった記録も残っている。
 にもかかわらず、日本政府はこの問題を公式に認めていない。野党議員が2015年以降、質問主意書で繰り返し聞いているが、「事実関係を把握できる記録が見当たらず、お答えは困難」と回答している。
 林さんは、中国人虐殺の事実を認めない日本政府に「怒りを覚える」と話す。「嫌朝鮮、嫌中国という今の日本の世相が、いつかまたこのような問題を起こすのでは」。温州市を中心とした被害者の遺族会約250人は2014年、政府に要望書を提出。国家としての責任と事実を認め、謝罪と賠償を行うこと、次世代に事実を伝え教訓とすることなどを求めている。

◆バイデン氏は100年前の虐殺現場訪問 小池知事は…

 海外では100年前の虐殺事件に向き合った国のトップもいる。1921年に白人暴徒による黒人虐殺事件が起きたオクラホマ州タルサ市を、バイデン米大統領が2021年に訪問。推定300人の被害者を追悼し「あまりにも長い間、歴史は闇に覆われていたが、なかったことにはできない」と強調。「良いことも悪いこともすべてを知るべきだ。それが偉大な国家のすることだ」と続け、「ここで起きたことは憎しみとテロであり、今日でも存在している」とも語った。
 日本はどうか。朝鮮人虐殺すら否定する保守系団体は19年、東京都墨田区で開かれた犠牲者追悼式の近くで「犯人は不逞ふてい朝鮮人、朝鮮人コリアンだったのです」などと発言。都は翌年、ヘイトスピーチ認定をしたが、小池百合子都知事は17年以降、この式典への追悼文送付をやめている。
 20年には川崎市ふれあい館に「在日韓国人をこの世から抹殺しよう」と書かれたはがきが届く事件があった。21年には、名古屋韓国学校や京都府宇治市のウトロ地区の家屋などに放火する憎悪犯罪(ヘイトクライム)も起きた。
 中国人に対しても、20年に東京都港区の街宣活動で「支那人をたたき出せ」「鬼畜支那人を叩き出せ」との言動があり、東京都がヘイトスピーチと認定している。

◆事実を認めないことは「セカンドレイプと同じ」

関東大震災犠牲者のために中国から贈られた「幽冥鐘」の前で追悼する中国人犠牲者遺族ら。中国人の追悼碑はまだない=2015年9月5日、東京都墨田区の横網町公園で(木野村間一郎氏撮影・提供)

関東大震災犠牲者のために中国から贈られた「幽冥鐘」の前で追悼する中国人犠牲者遺族ら。中国人の追悼碑はまだない=2015年9月5日、東京都墨田区の横網町公園で(木野村間一郎氏撮影・提供)

 こうした動きをどう考えたらいいのか。東京造形大の前田朗名誉教授(人権論)は「この10年ほど、国際的には歴史的事実の否認や隠蔽いんぺい、忘却を巡る問題が議論されている」と話す。前田氏によると、ラテンアメリカの軍事独裁政権による弾圧や、欧州諸国のアフリカ植民地支配など、重大人権侵害の歴史論争で形成されてきたのが「真実の権利」だ。「被害者や遺族、コミュニティーの知る権利を出発点とし、国家全体で記憶にとどめるべきだ」という考えを基本としている。
 すでに30カ国以上で、歴史の否定や称揚が犯罪化されており、「アウシュビッツのうそ」とも呼ばれるホロコーストの否定論争にも決着はついているという。前田氏は「被害者のコミュニティーにとって、自分たちの歴史はアイデンティティー。公然と否定することは民族の尊厳に対する攻撃という議論が欧州では広がっている」と続ける。
 関東大震災時に起きた朝鮮人・中国人の虐殺を、前田氏は「ジェノサイド」(集団破壊を意図して行われる暴力的行為)と位置付ける。「日本でも重大な人権侵害の事実を公然と否定することは犯罪化できた方が良い」との考えを示した上で、こう続ける。「日本では、あいまいにし責任を逃れてきた。事実を認めないことは、被害者を改めて傷つけるセカンドレイプと同じ。国際社会における日本の名誉ある地位が損なわれている」
 一橋大の田中宏名誉教授(日本アジア関係史)は「ブッシュ米大統領は1990年以降、太平洋戦争時の日系人強制収容を謝罪し、補償金も払って歴史の清算をした。ソ連のゴルバチョフ大統領は91年、来日時にハバロフスク郊外に立ち寄り、シベリア抑留犠牲者の墓に献花している」と指摘。被害者と向き合わない日本政府の姿勢は「理解できない」とし、「歴史への向き合い方では、相手の立場で見るということが大事だ」と語った。

◆デスクメモ

 写真の「幽冥鐘」があるのは、関東大震災と東京空襲の遺骨が眠る東京都慰霊堂がある横網町公園内。都慰霊協会のサイトによれば、震災の甚大な被害を知った中国の仏教関係者が来日して慰問を行い、外相らに寄贈を申し出た。日中関係がぎくしゃくする今こそ、訪れたい場所だ。(本)
 

 

 

記者の目

関東大震災と朝鮮人虐殺 差別意識を克服できたか=島袋太輔(東京社会部)

沖縄出身の男性ら3人が虐殺された「検見川事件」について語る島袋和幸さん=東京都葛飾区で2023年6月16日、島袋太輔撮影

 私たちの社会は、おぞましい虐殺の根底に横たわる差別意識を克服できているのだろうか。10万人超の死者・行方不明者が出た関東大震災が、1923年9月1日の発生から100年を迎えた。犠牲者は建物の倒壊や火災旋風に巻き込まれただけではない。朝鮮人による武装蜂起や放火が起こるとの流言を引き金に、自警団に命を奪われた人もいる。だが、残念ながら各地で起きた虐殺は、全容が解明されることなく、歴史に埋もれそうだと言わざるを得ない。

思い込みからか 沖縄県人も被害

 虐殺の全体像に関する公的な記録は残っていない。内閣府中央防災会議の報告書(2009年)は、震災における死者・行方不明者全体の1~数%が虐殺されたと推計した。朝鮮人虐殺とも呼ばれるが、朝鮮人と疑われるなどして殺された日本人も100人超に上るという。

 教科書に載る歴史上の出来事をどう取材するか。私は春先から、当時の新聞など資料を読みあさった。関心を抱いた事件の一つが、「沖縄県人」の肩書とともに記された人を含む男性3人が命を落とした「検見川事件」だ。

 1923年11月27日の東京日日新聞(毎日新聞の前身)は、自警団の関係者たちの刑事裁判について報じた。記事によると、同年9月5日、千葉県検見川町(現在の千葉市花見川区)の自警団が東京から避難してきた3人を日本刀や竹やりで殺害したとされる。

 出身地の沖縄にまつわる歴史的な出来事を自費出版などを通して記録している東京都葛飾区の島袋和幸さん(75)によると、3人は朝鮮人の襲来を警戒していた自警団に捕まった。警察官は3人が朝鮮人ではないと判断したが、駐在所は群衆で混乱し、自警団が虐殺に及んだという。

 島袋さんは、沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身だ。2人もなまりを理由に殺されたとみる。

 似たような話は他にもある。震災当時、上京していた沖縄出身の歴史学者、比嘉春潮(しゅんちょう)(1883~1977年)の著作によると、比嘉は「朝鮮人だろう」「言葉が少し違う」と詰問されるなどした。虐殺を免れたのは警察官の知人がいたからだ。

 虐殺された日本人は新聞でフルネームが掲載される一方、朝鮮人は「氏名不詳」とされるのが大半だった。公的機関から連絡があったとは考えづらく、朝鮮人は大切な人の死を知るのは難しかっただろう。一方で沖縄の男性の場合、なぜか新聞各紙で名前の表記が異なっていた。日本人でもその死を遺族が気づけたかどうかは分からない。

 私が検見川事件に関心を持ったのは、殺された男性と同じく沖縄で生まれ育ったからだ。大学に進んで沖縄を出た私は「内地で差別されていないか」と祖母(91)に心配された。戦争の前後に出稼ぎで県外に行った人の多くが、飲食店で「沖縄出身者はお断り」の張り紙を目にするなど、つらい経験をしたからだ。

繰り返さないため教訓の共有が重要

 朝鮮人だから武装蜂起をしようとしている、知らない言葉を使うから、発音が滑らかでないから朝鮮人に違いない――。こんな思い込みは、どれも差別意識の産物に他ならない。試しに朝鮮人を日本人に置き換え、自分が海外にいると想像すればよく分かる。

 幸いにも私は出身地を理由に差別された経験がない。でも、差別意識がうかがえる出来事は今も散見される。沖縄では16年10月、米軍施設工事に反対する市民を機動隊員が「土人」という言葉で侮蔑した。在日コリアンが集住する京都府宇治市のウトロ地区で起きた21年8月の放火事件を巡り、京都地裁判決(22年8月)は「偏見や嫌悪感に基づく、独善的かつ身勝手な犯行」と指摘した。

 こうした状況を踏まえ、島袋さんは「(隣人への)無関心が行き着く先は差別だ。(虐殺の)教訓を学ばないから差別は繰り返されるのではないか」と危機感を募らせる。

 虐殺の聞き取り調査に取り組む市民団体によると、当時を知る住民からは証言を拒まれることが多いという。不都合な記憶について加害者の多くが口をつぐみ、周囲に語っていないことは想像に難くない。被害者の遺族は、身内が虐殺に遭ったと特定できていない可能性もある。

 負の歴史を直視して実態を解明し、同じことを二度と起こさないように教訓を共有する――。私たちは節目の時を迎えるにあたり、そんな機運を高められたのか。非業の死を遂げた犠牲者を追悼する人もいるが、社会の大多数が同じ立場だとは言い切れない。記者としてできることを考えたい。

 

 

松野博一官房長官=29日、首相官邸

 

小池都知事、追悼文送らぬ意向 朝鮮人虐殺、7年連続

東京都の小池百合子知事

 1923年の関東大震災の際に虐殺された朝鮮人らを悼む9月1日の式典に、東京都の小池百合子知事が今年も追悼文を送らない意向であることが16日、都への取材で分かった。都が同日までに実行委員会に伝えた。不送付は2017年から7年連続。実行委の宮川泰彦委員長は「悲惨な歴史から目を背ける姿勢の表れだ」と批判した。

 都は不送付の理由について、式典とは別に都慰霊協会が主催する大法要で、小池氏が「大震災と、その極度の混乱の中で犠牲になられた全ての方々へ哀悼の意を表している」と説明した。

 実行委は墨田区の都立横網町公園にある朝鮮人犠牲者追悼碑の前で式典を開催。歴代都知事が追悼文を寄せてきた。

© 一般社団法人共同通信社

 

 

 

2023年8月29日(火) しんぶん赤旗

主張

大震災100年と虐殺

政府は事実隠さず調査・謝罪を

 10万人以上の犠牲者を出した関東大震災から9月1日で100年です。教訓を学ぶ中で忘れてはならないのは、震災直後から“朝鮮人が放火や暴動”などのデマが拡散され、無辜(むこ)の朝鮮や中国の人々が、関東一円で軍、警察、自警団に集団虐殺された事実です。日本政府は、重大な人権侵害の全容を調べ公開し、謝罪すべきです。

植民地支配の中で

 当時の政府資料、元兵士や目撃者の証言、報道には、軍だけでなく、各地域で在郷軍人会や消防団、青年団を中心に自警団が急きょ組織され、刀、こん棒や竹やりなどを手に、朝鮮の人々を襲った多くの事件が記録されています。朝鮮人組織の集計で犠牲者は6000人以上に上ります。中国人の虐殺も700人以上と言われます。

 2008年発行の内閣府・中央防災会議の報告書は、当時の日本が「朝鮮を支配し、その植民地支配に対する抵抗運動に直面して恐怖感を抱いていた」「無理解と民族的な差別意識もあった」と指摘しました。日本は明治以来、朝鮮半島に大軍を派遣し、抵抗する何万もの人々を殺りくしながら植民地化を進めました。1910年の「韓国併合」後も三・一独立運動(19年)などの抵抗を弾圧しました。社会には朝鮮人への警戒、敵視が植え付けられました。

 地震直後から政府は「不逞(ふてい)の挙に対して、罹災(りさい)者の保護をする」などとして戒厳令を東京、神奈川、埼玉、千葉にしき、軍と警察の治安行動を強化しました。9月3日には内務省が「朝鮮人は各地に放火し、不逞の目的を遂行せんとし…爆弾を所持」「厳密なる取締を」と各地へ伝達し、デマを抑えるどころか拡散しました。同じ被災者である朝鮮の人々を取り締まれとの指示が、軍隊だけでなく、自警団による虐殺につながりました。軍は日本共産青年同盟委員長だった川合義虎など社会主義者、労組活動家らも虐殺しました。

 政府は公式謝罪や被害者・遺族への補償をしていません。虐殺の全容調査も拒んでいます。東京都の小池百合子知事は2017年、歴代知事が行ってきた日朝協会などによる9月1日の朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付をやめました。政府や都の姿勢は、虐殺否定を含むヘイトスピーチや憎悪犯罪を許す温床になっています。小池知事は追悼文を送るべきです。

 世界では人権など普遍的な視点から、過去の植民地支配の見直しが広がっています。オランダ国王は今年7月、奴隷貿易や植民地支配を「人道に対する犯罪」として謝罪しました。ドイツ、英国も植民地時代にアフリカ各地で奪った美術品を返し、フランスは19世紀に虐殺したアルジェリアの独立活動家の遺骨を返還しました。米国では1921年の白人暴徒による黒人居住区の破壊・虐殺の犠牲者を大統領が100年で追悼し、人種間格差の是正を表明しました。

宣言引き継ぐなら

 日本政府は1998年の日韓パートナーシップ宣言で、過去の植民地支配への「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」をのべ、両国は、若い世代はじめ国民の「歴史への認識を深めることが重要」と合意しました。岸田文雄首相は今年3月、同宣言を引き継ぐと表明しました。100年背を向けてきた虐殺の調査と謝罪、補償に踏み出すことが政府に求められています。

 

 

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3 コメント

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石原慎太郎氏でさえ (時々拝見)
2023-09-01 17:23:31
追悼文を寄せていたというのに。都民ファーストの会は、都民ファシストの会の誤植だったようです。
短絡思考の結果でしょうが、藤原信勝氏監修の「教科書が教えない歴史」でも、虐殺を明確に認め、被害者数も数千人としていたと記憶してます。虐殺には軍隊(軍人ではなく)も加わったとの記述もあったように記憶しています。
Unknown (津木野宇佐儀)
2023-09-02 00:48:04
私は毎年9月1日はETV特集「関東大震災と朝鮮人 悲劇はなぜ起きたのか」を視ることにしています。
番組では司法省(当時)資料や、大臣の回顧録はもちろんのこと、末端で働いていた警察官へのインタビューや農村のリーダーに送られた書簡等、虐殺を証明するたくさんの一次・二次資料が扱われています。

一方、記者会見での官房長官の「調査した限り、政府内で事実関係を把握できる記録が見当たらないところだ」発言とその日本の大手メディアの「報道」、まさに「大本営発表」の垂れ流しと同じ!!
こんなの、日本以外では絶対に通用しないよ(怒)!

福田村事件、日本の暗部の最奥部での出来事ですよね
私も映画「福田村事件」は絶対に観に行かなければと思っていますし、書籍「福田村事件」(五月書房新社)も・こそ読まなければいけないなと思います。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909542557
Unknown (河内のおじいちゃん)
2023-09-02 07:12:52
今年は関東大震災後の朝鮮人虐殺の報道を良く目にしますね。
クローズアップ現代を始めTBS、テレ朝など政府や小池都知事への批判も併せて放送していました。
福田村事件というのも初めて知ることができました。
同じ過ちを繰り返さないためにも、政府や報道機関には正しい情報の発信が望まれますね。

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