イスラエルの首相府は1日、アメリカ連邦議会の上下両院合同会議での演説への招待を受け入れる旨の声明を発表しました。

声明でネタニヤフ氏は、「私たちを破壊しようとする人たちに対する、公正な戦争についての真実を伝えることができる栄誉だ」とし、「非常に心が動かされる」などと述べました。

演説の日程は決まっていませんが、ネタニヤフ首相は過去に3回、アメリカ議会で演説していて、4回目を行えば外国の首脳として最多となります。

 

 

画像提供,KENT NISHIMURA/GETTY IMAGES

画像説明,米連邦下院のマイク・ジョンソン議長(中)

アメリカ連邦下院は4日、国際刑事裁判所(ICC)関係者への制裁を可能にする法案を可決した。ICCがイスラエル政府首脳の逮捕状を請求したことを受けた措置。

ICCのカリム・カーン主任検察官は5月下旬、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐる戦争犯罪容疑で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相に対する逮捕状を請求した。

アメリカの親イスラエルの共和党議員らはこれを受け、この裁判に関わるICC関係者のアメリカ入国を阻止する法案を提出していた。

ICCはイスラム組織ハマスの指導者に対しても、同様の容疑で逮捕状を請求している。

共和党が過半数を占める米下院は4日、247対155の賛成多数で、この法案を可決した。共和党議員2人が、実質的な棄権となる「出席(Present)」票を投じた一方、民主党の親イスラエル議員42人が法案を支持した。

法案は下院で可決されたものの、法制化される見込みはない。

この法案は、上院を支配する民主党によって無視される可能性が高い。上院で可決されなければ、法制化に必要な大統領の署名は得られない。

ジョー・バイデン大統領は、法案に「強く反対」する意向を示している。ホワイトハウスも3日に発表した声明で、イスラエル指導者に対するICC検察官の逮捕状請求は「言語道断」だが、ICCへの制裁は支持しないと述べた。

だが、もし法案が成立した場合、ICC関係者のアメリカ入国ビザ(査証)が剥奪されるほか、アメリカ国内での財産取引も制限されることになる。

一方、強力なイスラエル支持派として知られるジョン・フェッターマン上院議員(民主党、ペンシルヴェニア州選出)などは、ICCを制裁する法案を支持すると述べている。

フェッターマン議員はイスラエル首脳への逮捕状請求について、「これを理由にICCに制裁を与えたい。あれはばかげていた」と述べている。

この「非合法裁判対策法案」を下院に提出したチップ・ロイ議員(共和党、テキサス州)は、ICCは「アメリカの主権に対する大きな脅威だ」と述べている。

これに対し、法案に反対する民主党議員らは、イスラエルを支持しているものの、ネタニヤフ首相の保守政権を批判している。民主党の反対派からは、ICCを支持する同盟国すべてを、アメリカが制裁せざるを得なくなる危険性があるという指摘も出た。

同法案が3日に下院の規律委員会を通過したとき、民主党のジム・マクガバン議員(マサチューセッツ州)は、「この法案は、アメリカがその成立に寄与した、規律に基づく国際秩序をあざ笑うものだ」と指摘した。

ICCの検察官に批判の嵐

ICCのカーン主任検察官は、イスラエルとネタニヤフ首相とガラント国防相に加え、ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏と軍事部門トップのモハメド・デイフ氏、ガザ地区における指導者ヤヒヤ・シンワル氏について、ガザ地区での戦争犯罪と人道に対する罪で「刑事責任を負う」と信じるに足る「合理的な根拠」があるとしている。

ICCが、アメリカの重要な友好国の首脳に容疑をかけたのは今回が初めて。

米下院のマイク・ジョンソン議長は4日、「ICCはこの動きについて罰を受けるべきだ」、「我々はこの事態を放置することはできない」と述べた。

「もしICCがこのようなことを許され、自分たちの行動に反対する国の指導者を追及できるなら、なぜアメリカを追及しないのだろうか?」

イスラエル政府とハマスも、カーン主任検察官の動きに怒りを表明している。

ネタニヤフ氏は、自分とガラント氏への逮捕状請求は「歴史的な道徳的暴挙」だと非難した。ガラント氏も、検察官は「あさましくも」イスラエルとハマスを同等に置き、イスラエルの自衛権を否定したと批判した。

ハマスも逮捕状請求の取り消しを求めており、カーン検察官による「被害者と死刑執行人を同一視しようとする試み」を非難するとの声明を発表した。ハマスは、アメリカやイスラエルを含む多くの国にテロ組織と認定されている。

ICCの判事らが逮捕状の発行を決めた場合、同裁判所に加盟している124カ国は、その執行について判断することになる。加盟国には、イギリスなど多くのアメリカの同盟国が含まれる。

2002年に設立されたICCは、国家当局が訴追できない、あるいはしようとしない場合に、集団虐殺(ジェノサイド)や人道に対する罪、戦争犯罪の責任者を調査し、裁判にかける。

イスラエルとアメリカはICCに加盟しておらず、同裁判所の根拠となる「ローマ規程」にも批准していない。一方で、ICCが過去に行ってきた、イスラエルやパレスチナ人とは関係のない訴追や逮捕状を支持してきた。

アメリカはトランプ政権下の2020年、アフガニスタン紛争でアメリカなどが犯したとされる戦争犯罪の調査をICCが開始した後、カーン氏の前任者を含むICC幹部に対して制裁を科した。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃。イスラエル当局によると、ハマスは約1200人を殺害し、251人を人質として連れ去ったとされる。

これを受けて始まったイスラエルの軍事作戦により、少なくとも3万6470人が殺されたと、ハマスが運営するガザ地区の保健省は発表している。