覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた東京都町田市の男性(47)に、東京地裁立川支部は十六日、逮捕、起訴の決め手となった尿が、男性のものと認められないとして、無罪(求刑懲役二年)を言い渡した。

 判決で深野英一裁判官は、警察が鑑定の段階で「他人の尿にすり替えた可能性を否定しきれない」と指摘。強制採尿の際に虚偽の調書が作られていたことも指摘し「捜査は極めてずさんで、およそ信用できない」と非難した。

 検察は、男性の尿を検査した結果、覚せい剤の陽性反応が出たとする警視庁科学捜査研究所(科捜研)の鑑定書を証拠提出していた。しかし、同支部は証拠として認めていなかった。

 男性の弁護人によると、男性は逮捕後から、一貫して容疑を否認している。通常、覚せい剤取締法違反容疑の事件では、容疑者から採取した尿の保存容器に、容疑者の署名や指印が入ったシールで封をする。

 しかし、公判で証拠として提出された尿の保存容器には、白紙のシールが貼られていたという。男性は公判で、捜査段階でシールに署名したと証言している。

 男性は昨年三月二十五日に警視庁町田署員に職務質問され、採尿を拒んだ後、令状に基づき強制採尿させられた。東京都内や神奈川県内などで覚せい剤を使ったとして五月に逮捕され、六月に起訴されていた。十一月に保釈されている。

 判決は、強制採尿から逮捕まで一カ月以上経過しており「相当日数、事件処理を放置していた」と、捜査のずさんさも指摘した。

 男性はグレーの上下スーツ姿で法廷に出廷。深野裁判官は「被告人は無罪」と言い渡し、退廷する際には「お疲れさまでした」と声を掛けた。

 弁護人は判決後、取材に「科捜研の鑑定書は、被告に弁解を許さないほどの強い証拠。それなのに尿が本人のものか確認されずに作られていた。この実態からすれば、過去にも尿のすり替えがあったと疑わざるを得ない」と話した。

 東京地検立川支部は、控訴や関係者の処分について「判決内容を精査し、対応を検討したい」と述べた。

 

覚せい剤事件「証拠すり替えた疑い」 東京地裁支部が無罪判決 

2016/3/16 13:12 日本経済新聞

 覚せい剤取締法違反(使用)罪に問われた東京都町田市の男性(47)の判決で、東京地裁立川支部は16日、無罪(求刑懲役2年)を言い渡した。深野英一裁判官は「警察が採取した尿を誤って廃棄し、これを取り繕うために尿をすり替えた疑いがある」と証拠捏造(ねつぞう)の可能性に言及。「捜査は極めてずさんで、信用できない」と警視庁の対応を批判した。

 警察が採取した尿の容器は通常、容疑者の署名と指印がされたシールを貼って保管されるが、男性の場合、シールは白紙だった。男性は公判で「署名をした」と話し、検察側はうそだと主張。深野裁判官は、覚醒剤の成分が検出されたとする尿の鑑定書を証拠採用していなかった。

 判決理由で深野裁判官は「警察官らは一人として白紙だった経緯や理由を説明できていない」と指摘。強制採尿に関する調書についても「実際に関与していない警察官が報告し、実際の経緯とも異なる。明らかに虚偽内容だ」と非難した。

 男性は、昨年3月上旬から同25日の間に覚醒剤を使用したとして、昨年6月に起訴された。捜査段階から一貫して否認していた。

 判決後、男性の弁護人を務める石田拡時弁護士は「警察はずさんな捜査の実態と背景を検証すべきだ」と話した。東京地検立川支部の名倉俊一副部長は「判決内容を精査し、今後の対応を検討する」とし、薬物事件を担当する警視庁組織犯罪対策5課の八十嶋宝課長は「尿を取り違えた事実は確認できなかった。(鑑定書が)証拠採用されなかったのは残念。捜査員の指導を徹底する」とコメントした。〔共同〕

 

 

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