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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

日本共産党の志位委員長が北京オリンピックへの外交ボイコットを求めたが、衆院選での反共攻撃を気にして中国共産党との違いを鮮明にしたいという意図なら良くない。政治と外交の究極の目的は戦争を避けること。

2021年12月15日 | 人権保障と平和

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 日本共産党の志位委員長は、2021年12月13日、来年2月に予定されている北京冬季五輪について声明を発表し、中国当局による香港や新疆ウイグル自治区での人権問題などを挙げて

「開会・閉会式への政府代表の不参加は当然」

「国際的な人権保障の取り決め、五輪憲章に反する事態が続いているもとで、政府代表を派遣することは、中国での人権抑圧の黙認となりかねない」

「日本政府は、中国政府に対して、従来の及び腰の態度をあらため、国際法にもとづく冷静な外交的批判によって、人権侵害の是正と五輪憲章の順守を正面から求めるべきだ」

と訴えました。

 

 チベットやウイグルではもう何十年も少数民族や宗教が中国共産党から弾圧される事態が続いています。

 香港のみならず、中国全土で思想良心の自由や政治的表現の自由が抑圧される状況はますます悪化しています。

 そして、人間にとってこれらの精神的自由権の保障は人格的生存、すなわち人間らしく生きるために必要不可欠な重要なことですから、命や健康に匹敵するくらい尊重されるべきは当然です。

 ですからむしろ日常的に中国共産党に対しては基本的人権を重視するように働きかけていくべきだったのです。

 しかし、今年夏の東京オリパラの時には何も言わないで、中国の番になったらいきなりボイコットをするというやり方は、中国政府を一番刺激するわけで、それがいいかどうかは別問題です。

 

 日本共産党の志位委員長が言っていることは、今自民党の右派議員が口々に言っていることと、内容的には全く変わりません。

 例えば、ヒゲの隊長の異名で知られる自衛隊出身の自民党の佐藤正久外交部会長は同じ13日の自民党の党会合で、日本政府に対して、北京冬季五輪の「外交ボイコット」を速やかに表明するよう求め、

「あまりもたもたしては『やはり日本は人権よりカネか』となる。早めに意思表示してほしい」

と述べています。

 同じく同日の衆院予算委員会では、与党自民党の高市早苗政調会長が岸田総理に対して「なあなあ」ではない異例の追及をしました。

 

 自民党の高市政調会長は、来年2月の北京五輪に日本政府が公的な外交使節団を派遣しない「外交的ボイコット」について、政府の姿勢を厳しく問う質問を繰り返した。

 まず高市氏は

「日本政府の方針を現段階でどう考えているか」

と質問し、これに対して岸田総理が

「対応については適切な時期に、オリンピックパラリンピックの趣旨、精神、外交上の観点といった諸般の事情を総合的に勘案した上で国益に照らして自ら判断する。適切なタイミングを選んでしっかりと明らかにしたい」

と答弁すると、高市氏はさらに

「総理がおっしゃる適切な時期とか、国益はどういったものか」

「総理は自ら、お決めになるとも言っているので、早期にしっかりとしたメッセージを、人権問題に取り組む日本の姿勢を打ち出してもらいたい」

と追及しました。

 普段から基本的人権を尊重している志位委員長と、人権なんてそっちのけの佐藤氏と高市氏なのに、こと北京オリンピックに対する政治的・外交的ボイコットについては言っていることが変わらないと言っていいでしょう。

コロナの感染拡大の中、中国の習近平国家主席を国賓として日本に招くことに執着して一回目の緊急事態宣言を招いた安倍元首相に、「台湾有事は日本の有事」などと発言して日本を戦争の危険にさらす資格は全くない。

 

 

 日本共産党による中国共産党の人権抑圧や覇権主義に対する批判はもう何十年も続けられてきたもので、いまとってつけて言い出したわけではありません。

周庭さんら保釈!菅官房長官「香港情勢について引き続き重大な懸念を有しております」。日本共産党の志位委員長「なぜ抗議の一つも言えないのか。日本政府は、自由と民主主義を標榜するなら、抗議を表明すべきだ」

 また志位委員長の声明の中にある

「中国女子テニス選手の問題で、IOCが、実際上、中国を擁護し、真相の隠蔽(いんぺい)に加担するのに等しい行動をとっていることは重大である。」

との指摘は非常に重要で、むしろこれこそがスポーツの祭典である五輪ボイコットの主要な理由になるべきだとさえ思います。

 しかし、いま、中国が台湾に侵攻するのではないかという中台危機が叫ばれ、安倍元首相や高市氏など右派勢力が

「台湾有事は日本の有事」

などと言い募って煽り、かえって戦争の危険を増している現在、中国に対する働きかけは非常にデリケートな問題です。

 平和主義と国際協調主義を基本とする日本国憲法を有する日本だからこそ、そして戦前には中国に侵略し台湾を植民地にした日本だからこそ、中台間の緊張緩和を平和的外交で進めることこそが我が国に求められる国際的な役割です。

 

 

 

 2021年10月の衆議院総選挙で野党共闘が成立したことを受けて、麻生太郎自民党副総裁が

「立憲共産党」

とレッテル張りして反共攻撃をし、それが一定の効果を上げたように見えているので、保守的な泉氏が新代表になった立憲民主党が共産党との協力関係を見直すと言い出して動揺しています。

共産党は「野党連合政権」構想を棚上げした方がいい。

野党5党が選挙協力で一致。国民連合政府構想を「凍結」した共産党は痛みに耐えてよく頑張った。

 

 

 今回、日本共産党の志位委員長があらためて北京オリンピックに対する外交的ボイコットを岸田政権に求めた背景には、共産党と立民では政策に違いがありすぎるのだから、閣外協力などは選挙目的の野合だと自公両党や維新などからしつこく批判されたことが影響されているように思います。

 しかし、反共攻撃ももう半世紀以上もずっと壊れたレコードのように繰り返されてきたもので、今更気にしても仕方ありません。

 また、立憲民主党がここで右傾化して共産党と距離を置くというのなら、来年夏の参院選では日本共産党は思い切って1人区でさえ立候補者を出しまくって、全力で議席を確保し、立民に力を見せつけてやはり野党共闘しかないとわからせてもいいのです。

この時点での田村智子氏の発言の方が慎重で正しい。

 

 

 政治的には全体主義、専制主義と言っていいけれども、経済的には日本にとって最重要な国になっている中国とどう共存していくかは、今世紀の日本と世界の民主主義にとって最重要の課題の一つです。

 日本共産党が自党の利益目的もあって今回の声明を出したのなら、それは近視眼的に過ぎると言っていいでしょう。

 今や護憲勢力にとって一番頼りになる政党である日本共産党には、毅然として右顧左眄することなく、大局からの行動を求めたいと思います。

岸田政権の抑制的な態度がむしろ光ってしまっている。

 

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「ウイグル絶望収容所」に2年で100万人を強制収容。ウイグル「自治」区への中国の弾圧が酷すぎる!

【まさに右も左もない】中国のウィグル・チベットなどでの少数民族弾圧に反対するなら、当然、今回の入管法改悪には反対すべき。難民を本国に強制送還して死なせてしまうなら、日本に人権を語る資格はなくなる。

香港民主派の若きリーダー周庭(アグネス・チョウ)さん、6月30日施行の国家安全維持法で逮捕される。日本政府は習近平国家主席の来日など拒否し、断固として抗議すべきだ。

香港市民の「立候補の自由」を強奪!中国共産党が香港の選挙制度を改悪し、「愛国者」と認定され、しかも中国共産党を「尊重」する人物だと認定されないと議会に立候補できない制度に。日本は欧米と団結して批判を!

第二次大戦後、休みなく他国に戦争を仕掛けて何百万人も殺し続けてきたアメリカ合衆国に、自由と民主主義の旗手を気取る資格はない。

 

 

 そんなに日本共産党に対する批判を書かない当ブログですが、

共産党が「天皇陛下御臨席」の国会開会式に出席する方針に転換、本当にいいことなのか。

に書いた天皇制の問題での妥協や、

「イスラム国」池内ツイート削除事件 志位共産党委員長まで乗せられた挙国一致と大政翼賛会化

の時のように、どうも志位委員長になってから、圧倒的な少数派になることを日本共産党が避ける、ためらうことが目立つ気がします。

しかし、正論が多数派になるとは全く限らない日本社会ですから、時には市民社会から理解されなくても仕方ないんですよ。

世論に迎合していたら日本共産党の存在理由や価値はないと言うべきです。

むしろ

志位共産党委員長の「北朝鮮にリアルな危険はない」「米国の戦争とイスラム国こそリアル」は間違っていない

の時くらい思い切ったことを言った方がずっと支持されると思います。

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2021年12月14日(火) しんぶん赤旗

中国に人権抑圧の是正と五輪憲章の順守を求めよ

――五輪開会・閉会式への政府代表の不参加は当然

志位委員長が声明

 日本共産党の志位和夫委員長は13日、「中国に人権抑圧の是正と五輪憲章の順守を求めよ――五輪開会・閉会式への政府代表の不参加は当然」と題する声明を発表しました。


写真

 一、来年2月の北京冬季オリンピックをめぐり、中国政府による重大な人権侵害・人権抑圧が世界であらためて注目されている。

 この間、中国政府によって行われてきた香港での民主化を求める勢力への弾圧は、「一国二制度」という国際公約に反し、一連の国際条約・取り決めにも反するものである。新疆(しんきょう)ウイグル自治区での少数民族への抑圧、強制収容などの人権侵害も、国際法の義務への重大な違反である。

 中国の政権党幹部から性暴力を受けたと告発した中国女子テニス選手の消息が不明になっている問題は、深刻な人権侵害であり、国際的な女子テニス協会(WTA)は、中国でのすべての試合開催の停止を声明している。

 これらの中国政府による人権侵害・抑圧は、中国政府自身も賛成してきた「世界人権宣言」(1948年)、国際人権規約(66年)、ウィーン宣言(93年)など国際的な人権保障の取り決めに反するものである。

 同時にそれは、オリンピックの目的を「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」(根本原則第2項)とし、「憲章の定める権利および自由は…いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」(同第6項)と明記しているオリンピック憲章とも両立しえないものである。

 一、日本共産党は、中国政府に対して、オリンピックを開催する以上、自ら賛成してきた国際的な人権保障の取り決め、およびオリンピック憲章を順守し、人権侵害の是正の措置をとることを厳しく求める。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、中国政府に対して、オリンピック憲章を順守し、人権侵害の是正の措置をとり、オリンピック開催国にふさわしい責任を果たすことを求めるべきである。この点で、中国女子テニス選手の問題で、IOCが、実際上、中国を擁護し、真相の隠蔽(いんぺい)に加担するのに等しい行動をとっていることは重大である。

 一、国際的な人権保障の取り決め、およびオリンピック憲章に反する事態が続いているもとで、大会の開会・閉会式に政府代表を派遣することは、中国での人権抑圧の黙認となりかねない。日本政府は、当然、政府代表を送るべきではない。そうした態度をとることは、大会運営には影響せず、政治によるオリンピックとスポーツへの介入にはあたらない。大会に向け懸命に準備してきた選手たちの参加は保証されなければならない。

 同時に、ことは、政府代表を送らないという対応だけですむ問題ではない。この間、日本政府は、中国政府による重大な人権侵害に対して、国際的な人権保障の取り決めを土台とした正面からの批判を行うことを回避する姿勢を続けてきた。北京冬季オリンピックへの対応が国際的に大きな問題となっている今こそ、日本政府は、中国政府に対して、従来の及び腰の態度をあらため、国際法にもとづく冷静な外交的批判によって、人権侵害の是正とオリンピック憲章の順守を正面から求めるべきである。

 

共産・志位氏が外交ボイコット要求 声明で中国批判

会見を行う日本共産党・志位和夫委員長=2日午後、国会内(矢島康弘撮影)
会見を行う日本共産党・志位和夫委員長=2日午後、国会内(矢島康弘撮影)

声明では「五輪を開催する以上、自ら賛成してきた国際的な人権保障の取り決め、および五輪憲章を順守し、人権侵害の是正の措置をとることを厳しく求める」と中国政府を批判。国際オリンピック委員会(IOC)に対しては「中国女子テニス選手の問題で、実際上、中国を擁護し、真相の隠蔽に加担するのに等しい行動をとっていることは重大である」と指摘し、是正を働きかけるよう注文をつけた。

 

 

主張はぶれない共産党(時事通信フォト)

 来年2月に開幕する北京冬季五輪について、新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権問題などを理由に、米国などが政府当局者を参加させない「外交的ボイコット」を打ち出している。岸田文雄・首相は12月13日の衆院予算委員会で日本政府の対応について、諸般の事情を総合的に勘案して「適切なタイミングを選んで明らかにしたい」と述べるにとどめたが、そうした中国共産党政府への姿勢について、厳しく批判の声をあげたのが、日本共産党の志位和夫・委員長だ。

 志位氏は13日、同党の公式HPで日本政府に対して外交的ボイコットを求める声明を発表。〈中国に人権抑圧の是正と五輪憲章の遵守を求めよ──五輪開会・閉会式への政府代表の不参加は当然〉と題した声明では、新疆ウイグル自治区での少数民族への抑圧や強制収容などの人権侵害、中国共産党幹部からの性暴力を告発した女子テニス選手が消息不明となった問題などについて厳しく批判している。

 そのうえで、〈国際的な人権保障の取り決め、およびオリンピック憲章に反する事態が続いているもとで、大会の開会・閉会式に政府代表を派遣することは、中国での人権抑圧の黙認となりかねない。日本政府は、当然、政府代表を送るべきではない〉と岸田政権に外交的ボイコットを求めたのだ。政権の座にある保守政党である自民党の対中外交の姿勢が軟弱であることを、野党で革新政党の共産党が叱るという興味深い構図となっている。政治ジャーナリストが解説する。

「中国共産党と日本共産党の関係は、一言では説明できない複雑なものです。ルーツは同じと言えるが、1960年代に中国で文化大革命が進められると、日本共産党はそれを厳しく批判し、30年以上にわたって両党の関係は断絶した過去がある。その後、1998年からは関係が正常化して交流が再開しますが、無条件にお互いのことを認めるという関係ではありません」

 2019年に日本共産党が綱領を改定した際も、中国などを念頭に〈いくつかの大国で強まる大国主義・覇権主義は世界の平和と進歩への逆流〉と批判する文言が盛り込まれた。意外なことに、対中国というポイントで自民党以上に強硬な姿勢を取ってきたのが、日本共産党なのだ。

今年2月には、東シナ海で中国側が領海への侵入を繰り返し、さらには中国政府が海警局に武器使用権限を与える海警法を施行したことで緊張が高まったが、この時も志位氏は「海警法の施行は国際法違反」と声をあげていた。当時、本誌・週刊ポストの取材に応じた志位氏はこう述べている。

〈この10年で中国には深刻な変質が起きている。そのひとつが覇権主義です。東シナ海、南シナ海で力ずくで現状を変更しようとしている。日本共産党は2017年の党大会の決議案に中国の覇権主義への批判を盛り込んだが、直前に当時の程永華・駐日大使が、『削除してくれませんか』と言ってきた。私は『それはできません』と何が問題なのかを1時間半くらい話した。私が中国と議論してきて思うのは、中国共産党はたいへんに大きな党だが、正論を言われるのが嫌なんです。向こうが正論を言われるのが嫌なら、なおのこと言わなければならない〉(週刊ポスト2021年3月12日号掲載)

 自民党内でも安倍晋三・元首相や高市早苗・政調会長ら保守派を中心に、外交的ボイコットに賛同するような声が出始めているが、岸田文雄・首相は衆院選後に外相として日中友好議員連盟会長を務めてきた林芳正氏を起用。中国に対してどこまで強気の対応が取れるのか、“正論”を述べることができるのか、注目されることになる。

 

外交ボイコット「もたもたするな」 自民部会長

2021年12月13日16時30分 時事通信

自民党の佐藤正久外交部会長=2月18日、東京都千代田区

自民党の佐藤正久外交部会長=2月18日、東京都千代田区

 

 

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1 コメント

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Unknown (高橋雅哉)
2021-12-16 23:59:50
そもそも、五輪を外交の手段とする事が間違っているでしょう。戦前のベルリンオリンピックから、国威発揚や、人権抑圧の免罪のために使われてきました。
今後、一切の外交団派遣を取りやめるべきです。
ついでに、五輪自体も。
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