BSフジLIVE「プライムニュース」では安倍元首相を迎え、今後の対中政策や安保戦略についてうかがった。

安倍氏「首脳や外相の訪中は国の意思表示、五輪競技と分けて考えよ」

安倍晋三 元首相、習近平 中国国家主席(画面左)、バイデン米大統領(画面右)
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新美有加キャスター:
アメリカが、北京冬季オリンピックの外交的ボイコットを発表しました。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
チベットやウイグル、香港を見てきた国際社会が、人権弾圧を憂慮している。今まで同様の対応で良いのか、各国が判断を迫られる。

反町理キャスター:
安倍さんはウイグル、チベットなど中国の人権状況については。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
もちろん是認しません。首相時代にも首脳会談で提議してきた。外交的ボイコットについて岸田総理は記者会見で「総合的に勘案し国益の観点から判断」と。恐らくもうだいぶ判断していると想像している。いつ意思を示すべきか考えておられるのでは。

反町理キャスター:
閣僚や議員が人権問題のある国に行くのは、お祝いするという誤ったメッセージになってしまうということか。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
首脳や外務大臣が行くことはオリンピックの競技と関係ない。国のひとつの意思表示になるから、分けて考えるべき。

 

新美有加キャスター(左)、反町理キャスター(中)、安倍晋三元首相

反町理キャスター:
自民党の最大派閥・清和政策研究会の会長に就任された。派閥領袖になり、総裁選に出て総理になるのが伝統的だが、安倍さんは順番が逆転している。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
確かに。総理大臣を長い間務め、派閥会長に戻る気持ちはなかった。だが若い仲間の支援、先輩含め世話になった人への恩返しをと思い会長になった。最大グループは政治の安定に一番大きな責任がある。

反町理キャスター:
もう一回首相に、ということは。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
考えていない。候補となる議員がたくさんいるので、後押ししていきたい。

安倍派のパーティーでジョークを言う岸田文雄首相

新美有加キャスター:
岸田首相から「ある外国の首脳が『シンゾウは国政選挙で6連勝している。秘訣を教えてもらった』と。私はまだ聞いていない」というジョークがありました。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
岸田首相とは同期で28年ほどの付き合いだが、今まで聞いた中で一番面白いジョーク(笑)。普段あまり冗談をおっしゃる方ではないが、余裕を感じさせた。

 

新美有加キャスター:
「台湾有事は日本有事だ。すなわち日米同盟の有事でもある。この認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」というご発言の真意は。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
中国への挑発ではない。ただ、中国が台湾に対して軍事的圧力を高めているのは事実。紛争は、能力のバランスが大きく崩れるとき、また相手の意思を見誤ったときに起こる。中国にとってのハードルを高くする必要がある。

反町理キャスター:
中国の反発として「公然とでたらめを言った」という副報道局長の発言があったが。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
副報道局長といえども、中国の意思を示したのだろう。いちいちこの発言に反応するつもりはありません。

反町理キャスター:
台湾有事とはどういう事態を想定しているのでしょう。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
上陸などの侵攻、サイバー攻撃、いろんな可能性がある。実態として、有事と平時の境がなくなりつつある。サイバー攻撃は、日本に対しても日常的に行われています。

反町理キャスター:
自衛隊と米軍の連携。平和安全法制で示された事態になるという理解でよいか。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
重要影響事態は、放置すれば我が国への直接の武力行使に至る恐れがあり、平和と安全に重要な影響を及ぼす事態。台湾は与那国島などから100kmほどしか離れておらず、そうなる可能性は高い。だから日本有事と表現しました。

反町理キャスター:
「見誤ってはいけない」。周主席だけでなく、日本国内へのメッセージの意味も?

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
そうです。アメリカは台湾有事に関し曖昧戦略をとってきたが、明確に示す方がむしろ地域の平和と安定に資するのではないかという議論もある。アメリカの安保関係者は日本より深刻に捉えている。日本は今、フロントラインに立っている。これを支えるのは日米同盟、クアッドによる日米豪印の協力、「自由で開かれたインド太平洋」の構想に賛同する国々。事態は厳しい。日本も自覚を持たなければ。

反町理キャスター:
アメリカには台湾関係法がある。日本版は必要か。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
法律を作る以上に、我々は台湾との関係を強化している。ワクチンの提供もあった。これからも民間同士の対話を行い、政府にもフィードバックしていくのが大切。また、台湾のWHOなどの国連組織への参加を後押ししていき、国際場裡に引き上げていくこと。

防衛力強化は軍拡ではなく、バランスを保つ努力

新美有加キャスター:
防衛力強化について、「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず」との岸田首相の発言がありました。

反町理キャスター:
安倍さんは2020年に首相として談話を出したが、敵基地という言葉を使っていない。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
日本の防衛の基本的な考え方は、日本は盾としてしっかり守る、矛の打撃力をアメリカが担うという分担。だが今の時代にそれで通じるのか。「アメリカは打撃力を使わないのではないか」と相手が思えば、抑止力は崩れてしまう。抑止力とは、日本に攻撃しようとする相手に思いとどまらせること。敵基地に限定せず、中枢に打ち込むことで機能を破壊できる能力を持っておくことが大切。打撃力、反撃力という方が正確だと思う。

反町理キャスター:
野党的な質問をすると、それは日本が軍拡競争に参加することになるのでは。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
あくまでも抑止力の向上。中国は30年間で軍事費が42倍になった。すでに我が国の防衛費の4倍。追い越すのではなく、日米、他の同志国と合わせて対抗し、バランスが崩れないよう努力するということ。

反町理キャスター:
防衛費をGDP比2%以上にすることも念頭に、というのが自民党の政権公約。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
2%の計算はNATO基準だから海上保安庁の費用も含むが、いずれにせよ相当努力していかなければ。アフガニスタンから撤退する際に、バイデン大統領は「自分の国を自分で守ろうとしない国民のためにアメリカの兵士は戦わない」とおっしゃった。当然のこと。

反町理キャスター:
安倍政権におけるアジアの安全保障戦略では、中国だけでなくロシアも視野に入れていた。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
日本は海を通して両国と国境を接している。そんな国は他にない。中露が手を組まないようにすることが大切で、ロシアとの関係改善の必要がある。残念ながら中露の艦船10隻が、日本列島周囲をぐるっと周る演習を行ったが。

反町理キャスター:
バイデン大統領が「民主主義サミット」をやろうとしていることについては。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
特筆すべきは台湾が入っていること。民主主義というのは基本的価値であり、評価する。ただ、こちら側の陣営にいるのに振り落とされてしまうASEANの国が出る。こうした国をすくい取りながら、日本がこういう会議体の提案をしてもいいのでは。

憲法改正は「憲法審査会で毎日でも議論すべき」

安倍晋三 元首相

新美有加キャスター:
視聴者からのメール。「憲法改正について、日本維新の会は参院選を期限として進めるべきと。同意しますか」。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
国民民主党も前向き。問題はどこをどう改正するか。それが大切なので、維新の会もその点を示してほしい。自民党は4項目を出している。憲法審査会で毎日でも議論すべきだと思う。

反町理キャスター:
「12月8日で真珠湾攻撃から80年。戦前日本の失敗をどう総括し今に活かすか」との視聴者からのメール。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
善悪の問題ではなく、国際的な出来事において判断を誤った結果、先の大戦の結果に行き着いてしまった。100年の時間軸を考え、70年談話を示した。そこに「日本は世界の潮流を見誤った」と書いた。このポイントは日本だけでなく、他の国も考えてもらいたい。

反町理キャスター:
なるほど、先日の談話と被ってくるわけですね。「見誤る」という言葉が。

安倍晋三元首相 清和政策研究会(安倍派)会長:
(笑)

BSフジLIVE「プライムニュース」12月7日放送

 

 

首相 臨時休校要請に理解求める 感染終息に向け協力呼びかけ

2020年2月29日 18時52分 NHK

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、安倍総理大臣は、29日記者会見し、全国の小中学校などの臨時休校を要請したことに理解を求めた上で保護者への支援に取り組む考えを示しました。そして、「率直に言って、政府の力だけでこの戦いに勝利することはできない」と述べ、感染の終息に向けて国民一人ひとりの協力を呼びかけました。

安倍総理大臣は、29日午後6時すぎから、総理大臣官邸で記者会見を行いました。

冒頭、安倍総理大臣は、現状では、感染拡大のスピードを抑制することは可能だとする専門家の見解を紹介した上で、「専門家の意見を踏まえれば、いまから2週間程度、国内の感染拡大を防止するためあらゆる手を尽くすべきだと判断した」と述べました。

そして、集団による感染をいかに防ぐかが極めて重要だと指摘し、全国的なスポーツ・文化イベントの中止や延期、規模縮小などを重ねて要請したほか、スポーツジムやビュッフェスタイルの会食など、不特定多数が接触するおそれが高い場所や形態での活動を当面控えるとともに、事業者に対し、感染防止のための十分な措置を求めました。

また、全国の小中学校や高校などの臨時休校を要請したことについて「学年をともに過ごした友だちとの思い出をつくる、この時期に学校を休みとする措置を講じるのは、断腸の思いだ」と述べるとともに「何よりも、子どもたちの健康・安全を第一に、感染リスクに備えなければならない」と述べ今回の対応に理解を求めました。

その上で、保護者の負担軽減に向けて、学童保育は、春休みと同様、午前中から開所するなどの各自治体の取り組みを全力で支援するとともに、新しい助成金制度を創設することで、正規・非正規を問わず、休職に伴う所得の減少にもしっかりとした手当てを行うなどの支援に取り組む考えを示し、「私が決断した以上、私の責任において、さまざまな課題に万全の対応をとる決意だ」と述べました。

そして、安倍総理大臣は、感染拡大の防止に向け、今年度予算の予備費2700億円あまりを活用し、第2弾となる緊急対応策を今後10日程度のうちに取りまとめる方針を明らかにしました。

また、外国人旅行者の減少や工場の製造ラインの維持など、中小・小規模事業者が直面する課題を把握し、雇用調整助成金を活用し、先月にさかのぼって支援するなど地域経済に与える影響に対策を講じるとともに、世界経済の動向を注視しながら、必要かつ十分な経済財政政策を行う考えを示し、「テレワークなどIT技術を活用しながら、未来を先取りした事業を一気に進めていく」と述べました。

盤石な検査・医療体制の構築に向けて、安倍総理大臣は、必要なウイルス検査が各地域で確実に実施できるよう国が仲介するとともに、検査に公的保険を適用し、来月中に新たな簡易検査機器の利用を目指すことを明らかにしました。

また、緊急時には、5000床を超える指定医療機関の病床を確保するほか、治療方法の確立に向けて、インフルエンザ治療薬の「アビガン」など3種類の薬の臨床研究を始めていると強調しました。

さらに、「一定の地域における急激な感染拡大などが見られた場合にどのような措置を取るか、その具体化は、もはや『待ったなし』だ」と述べ、感染拡大を抑制し、国民生活への影響を最小とするための立法措置を早急に進めていく考えを示しました。

そして、安倍総理大臣は、「今回のウイルスは、いまだ未知の部分がたくさんあり、よく見えない、よく分からない敵との戦いは、容易なものではない。

率直に言って、政府の力だけで、この戦いに勝利することはできない」と述べました。

その上で、「最終的な『終息』に向けては、医療機関、各家庭、企業、自治体をはじめとした国民の理解と協力が欠かせない。終息への道のりは予断を許さない。険しく、厳しい戦いが続いていくことも覚悟しなければならない。国民には、本当に大変な苦労をおかけするが、改めて一人ひとりの協力を、深く深くお願いする」と述べました。

東京オリンピック・パラリンピック
ことしの東京オリンピック・パラリンピックについて、「引き続き大会開催に向けて、IOCや組織委員会、東京都との間で緊密に連携をとりながら、アスリートや観客にとって安心できる大会となるよう万全の準備を整えていく」と述べました。

習主席の日本訪問
4月に予定されている中国の習近平国家主席の国賓としての日本訪問について、「現時点では予定に変更ないものの、中国の国家主席の訪日は10年に1度のことであり、十分な成果をあげることができるものとする必要があるとの観点から、引き続き日中間で緊密に意思疎通していく考えだ」と述べました。

 

 

中国の習近平国家主席(右)と握手する安倍首相(2019年6月27日、大阪市)

政府は5日、4月に予定していた中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の国賓としての来日を当面延期すると正式発表した。日中両政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、準備を円滑に進められないと判断した。感染症の収束状況や政治、外交日程を見極めて時期を再調整する。7~9月の東京五輪・パラリンピック後の秋以降が有力との見方がある。

菅義偉官房長官が5日午後の記者会見で発表した。「新型コロナウイルスの拡大防止を最優先する必要がある」と述べた。中国外務省の趙立堅副報道局長も「最も適した時期に、環境と雰囲気が整った上で実施し、円満に成功を収めなくてはいけない」と話した。

習氏の国賓来日は2019年6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)にあわせて実施した首脳会談で安倍晋三首相が要請した。20年の「桜の咲く頃」に招くと確認し、4月上旬を念頭に日程を調整してきた。

日中両国は国内の感染症対応に追われている。日本政府は2日から全国の小中高校に一斉に休校するよう要請した。中国は5日に開幕する予定だった全国人民代表大会(国会に相当)を延期した。訪日時に成果を打ち出すための事務レベルの準備協議も滞っていた。

菅氏は記者会見で、来日日程について「双方の都合の良い時期に行うことになった。外交ルートを通じて改めて緊密に調整する」と語った。茂木敏充外相は外務省で記者団に「日中両国が地域、国際社会が直面する課題に共に責任を果たしていくことを内外に示す機会にする考えに変わりはない」と強調した。

中国の国家主席の国賓来日は08年以来となる。両政府は習氏の来日で両国関係の改善を打ち出し、日中関係の「新時代」を印象付ける方針だ。新しい両国関係を定義する「第5の政治文書」の作成も検討している。米中対立を背景に、習指導部は対日関係の改善を最重要課題に掲げている。

国内外に成果を打ち出すには、新型コロナウイルスの収束にメドが立った後の方が効果的だとの判断がある。首相は2月28日に中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)政治局員と会談した際に「十分な成果をあげるために入念な準備をしなければいけない」との認識を示していた。

中国の国家主席の来日が延期された例は過去にもある。江沢民(ジアン・ズォーミン)氏は1998年9月6日に来日する予定だったが、中国国内で洪水の被害が深刻になったため同年11月25日に先延ばしした。

中国の習近平国家主席の訪日延期を記者会見で正式に発表する菅官房長官(5日、首相官邸)