どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」15

2023-04-02 09:59:00 | 日記
1ヶ月もすると、母子達は大分落ち着いて生活するようになった。

いつもワタリが母子の家に行くと、なぜか抄花が出てくる。アズサを呼んでくる役目なのだろうか?抄花は、ワタリのことをいろいろ訊いてくる。
「お仕事は現場監督ですか?」とか「お子さんはいますか?」とか。。。「王の補佐官」だということは公にはしていない。他の4人もそうだ。
「建築の現場監督です。子供どころか結婚もしていません。モテないのです。赤族の女性は慎重なのです。」とワタリは答えた。
そして、なんの気も無しに「高天原は“結婚も離婚も再婚も自由“だと聞いておりますが、抄花さんは結婚されているのですか?」と尋ねた。

抄花はなかなかの美人だった。


長く赤界に居れば居るほど赤男が問題を起こすかもしれない。ワタリは抄花に「ここは、あなた方には母子の家しか見えませんが、赤王宮の中心部で周りは建物に囲まれています。あまり外には出ない方が宜しいかと思いますよ。」とアドバイスした。

ワタリはセキにも相談した。
「高天原の女子は見目がいいです。シンの時のような騒動にならないか心配です。」と。
“高天原で武術研修“という名目で赤界を追放された赤男シンは他国出身の人妻に横恋慕した挙句、その夫から妻を奪おうとした。

抄花は、召し上げられて数十年。未だ経験も浅く、若くて少し浮ついていた。
神界の頂点、赤国に来て舞い上がっていた。
目に見える「母子の家」は高天原ではあり得ない可愛い家。赤族になって全部が見てみたいと思い始めていた。それには「赤男」と結婚すればいいと考えた。
ワタリは容姿が少し残念。。。だけど、仕事はできそうだし王妃ともよく話しているから、本当は重臣ではないかしらと取らぬ狸の皮算用をしていたら、亜遊が「抄花様、子供達に気をつけて。」と口を出された。

抄花は亜遊が苦手だった。
言葉遣いは丁寧で絶対に怒らないけれど細かいことを突いて口を出す。鬱陶しいオバサンだと思っていた。
抄花は亜遊が恐ろしく歳上なのには気がついていた。

「亜遊様はご結婚なされないのですか?」と嫌味を込めて抄花は言った。すると亜遊は「昔、一度結婚したことがあります。それでもう懲り懲りです。」と答えた。これには抄花が驚いた。亜遊は「結婚したからといって幸せになるとは限りませんよ。」と諭すように言った。
抄花は「私、ワタリ様のお嫁さんになりたいのです。」と亜遊を牽制した。亜遊とワタリが度々2人で話していたのを見ていたから。

亜遊は暫くの沈黙の後「ワタリ様は良いお方です。」彼の方なら幸せになれるでしょうね。」と静かに言った。

16に続く。。。