ホテル屋日記

誰もが旅を楽しむことができるための情報を発信していきます。

ホテル屋が見たホテリアー 3

2007-05-25 12:04:18 | テレビ

鳴り物入りで登場した日本版「ホテリアー」。視聴率が8%前後に低迷し、かなり苦戦の模様。私も過去辛口の感想を書いてきたが、昨夜(5/24)OA分はなかなか良かったな。
小田桐(上戸)のセリフ「ホテルはただの箱じゃないんです!」。そうなんだ、単なるコンクリートの箱ではない。事実、同じ建物、名称でも経営者が変わることで全く風合いの違うホテルになるってことはよくあることである。
それから、30年前新婚時代に東京オーシャンホテルに宿泊したという初老の夫婦がそのときと同じ客室に泊まりにやって来る。当時ワケありで結婚式を挙げられなかったこの夫婦にGM以下スタッフがチャペルでの挙式をプレゼントする。そんなことあるわけないじゃないか、と言うなかれ。
ホテル屋という職業は宴会にしろ宿泊にしろゲストの心の中にある目的、理想をいかに引き出し、実現していくかというところに難しさがあり、面白さがあるのだ。その面白さを感じることができなければ、こんなに待遇の悪い職業は続かない。
手前ミソながら私の経験で具体例を挙げさせていただくと、こんなことがあった。

[宿泊編]
客室予約を担当していた頃一本の電話を取った。個人の宿泊問い合わせだったが、中身は少々違っていた。「自分の母親をお宅に泊めてやりたいんだが、実は末期ガンで余命幾ばくもない。死ぬ前に一度泊めてやりたい。ストレッチャ―でしか移動できないし、点滴、酸素などいろいろと部屋に持ち込まないといけないが、受け入れてくれるだろうか?」。
ここは親孝行な息子さんのリクエストになんとか応えたい。ストレッチャーでしか移動できないゲストの動線をいかに確保するかなど苦労はあったが、最終的には希望に添うことができた。

[宴会編]
知り合いがOGであることから、ある高校の同窓会を受注した。出席者の中に末期ガンを患った男性がいた。長い闘病生活でここ数ヶ月は病院から出たことがないというこの男性を半ば無理矢理引っ張り込んだのだそうだ。
それからちょうど1週間、その方は亡くなった。幹事さんの話では同窓会に出席できて本当に楽しかったと何度も繰り返されていたらしい。われわれが特に何をしたというわけではないが、そういう時間、空間を提供できたということはホテル屋として本望である。

いずれも取りようによっては暗い話になるかもわからないが、ホテル屋をやっていて良かったと感じる一シーンである。マニュアルで動くことしか教えないホテルに勤務していてはわからなかっただろうが。

ちなみに今回の視聴率はちょっと持ち直して9.3%。 



最新の画像もっと見る