清き心と未知なるものの為に⑳・・・ダグ・ハマ-ショルドの日記より
鸚鵡(おうむ)はただ一羽、霧のなかに包まれて、じっとり濡れた、流れのうえにそそり立つ、
黒い石の欄干にとまっている。それは肥えており、お尻が重く、ふっくらした羽毛でまるみを
帯びた曲線を描くからだを蔽われ、しなやかな筋肉の波打つ頸を誇らしげに立てている。恥知
らずの琥珀色の眼は、むきだしの貪欲さ以外なんの表情も浮かべていない。獲物をあさるよう
にできた、黄色い、がっしりした嘴(くちばし)。だがそこには、猛禽類にみられる、あのほっ
そりした、残忍な優雅さは備わっていない。
彼らが潮の流れにつれて浮きつ沈みっしながら、腐った食べ物の屑をまとに争っているのを、
私は見たことがある。彼らが飛び立ってぐるりと旋回し、それから、休日のあと波止場のそば
の澱みに流れこんできたコンド-ムを突っつきまわしているのを、私は見たことがある。秋の
じめじめした不愉快な日々、彼らが畑地のねっとりぬかった畔溝に入って、よたよた尻を振り
ながら歩き、ばっくり壊れている地面の裂け目------その側面は雨に濡れてぬるぬるし、またす
べすべしている------のなかから地虫をぶざまな恰好でつまみだしているのを、私氏は見たこと
がある。