清き心の未知なるものの為に㉔・・・ダグ・ハマ-ショルドの日記より
夜は近きにあり
------「わが居るところに汝らもおらん」という約束に較べれば、この世の楽しみなどに
ものであろうか。
絶滅の渦巻く炎のうちにあり、
仮借な自己減却による
冷徹な犠牲的行為のうちにあるときなら、
おまえは死をよろこび迎えもしよう。
しかし、日一日と、それが
おまえのなかでおもむろに成長するとき、
おまえは不安にさいなまれる。-----おまえの生命の頭上に懸かることばなき判決の重さの
もとにあるがゆえに。
そのあいだにも、愚者の楽園では木の葉が散って行く。
選ぶとき、自分が運ぶ対象と心かなうのを覚える。者の味わう幸福、
磁場の磁力線のままに向く鉄片の静穏、
自我をすべて脱ぎ去って、
諧和(やわらぐ)のうちに憩う魂の安心------
この幸福は、ここにいま
宇宙的な永遠のいまの瞬間にある。
おまえのうちにある幸福------しかし、おまえの幸福ではなく。
孤独の不安にあるとき、死の不安という嵐の中心から吹きおこる風がおまえめがけて
押し寄せる。いまは他人のものであるものだけが、まことに存在するものとなる。なん
となれば、おまえが他人に与えたものだけが------ありがたく受け入れて、感謝を与えた
だけであろうと------さもなくばおまえの人生が化かしてしまうかもしれぬ虚無のなかか
ら浮かび上ってくるであろうから。