1986年
一年前には、いや半年前には想像もできなかった姿だ。九回二死二塁、相川は代打・若松を二ゴロに仕留めて初めて顔を緩めた。ナインに握手で迎えられる。横浜高からドラフト5位入団、高校卒のルーキーの初完投の瞬間だ。「今日は立ち上がりから直球が走っていましたから。でも最後の最後まで、完投できるなんて思っていなかった」「ブルペンではリリーフエースの斎藤が時折、投球準備をしているのが視野に入っていたに違いない。でもひょうひょうと投げ切った。これでプロ入り4勝目。「今までは勝ちをもらってましたから。ローテーション入りしたし、一度ぐらいは自分の力で取りたかった」との願いも達成した。「最後までマウンドにいられる、というのは気持ちいいですねえ。できれば完封したかったけど」と改めて勝利の味をかみしめていた。孫のような相川の白星に、近藤監督も久しぶりに会心の笑み。「相川は球の切れがいいから。高校卒のルーキーが完投勝利したんですよ。最後までスピードが落ちなかったし。二、三年後にはウチの投手陣の柱になってもらうんだから」と手放しだった。
1987年
今季初勝利は99%手中にしていたものの、プロ入り二年目の初完封がピンチだった。九回二死満塁、打者永尾。「ものすごく意識しましたよ。その分、力が入りすぎて…。最後は捕ってくれ、と祈りました」その最後の打球は三邪飛、山下が慎重に捕球して相川に思わずガッツポーズが出た。計5イニングも無死から走者を許している。が、ホームは最後まで踏ませなかった。「きょうはコースより、力のあるボールを真ん中に投げようと思った。市川さんにも、追い込むまでコースに構えないでくれ、と言ったんです」言ってみれば、走者を背負っても逃げない大胆な攻めが活路を開いたといったところか。「ものすごくうれしい」の言葉にも当然、実感がこもっていた。六十一年のドラフト5位で地元横浜高から大洋入り。昨年、ルーキーの年に4勝を稼ぎ将来に期待がかかる十九歳だ。「六回真弓さんから始まったところがヤマ。完封はその時まだ意識してなかったけど、六回を乗り切ってよし完投だと思いました」札幌で大洋の若い有望株が芽を一つ出した。
相川が六月十三日の阪神戦(甲子園)以来の白星を挙げた。「久々の勝ちでしょ。九回は緊張しましたよ」強心臓の相川にしてはおとなしい発言。「杉浦さんに本塁打を打たれてからは五回までのつもりで。その後は何も考えずに投げていた」と言う。散発3安打ながら8与四死球とコントロールは荒れ気味だったが「一発長打を警戒しすぎて。逆に荒れていたのが良かったのかも」昨季の勝ち星「4」まであと一つ。「何とか勝ちたいですね。投げさせてくれるかな」
一年前には、いや半年前には想像もできなかった姿だ。九回二死二塁、相川は代打・若松を二ゴロに仕留めて初めて顔を緩めた。ナインに握手で迎えられる。横浜高からドラフト5位入団、高校卒のルーキーの初完投の瞬間だ。「今日は立ち上がりから直球が走っていましたから。でも最後の最後まで、完投できるなんて思っていなかった」「ブルペンではリリーフエースの斎藤が時折、投球準備をしているのが視野に入っていたに違いない。でもひょうひょうと投げ切った。これでプロ入り4勝目。「今までは勝ちをもらってましたから。ローテーション入りしたし、一度ぐらいは自分の力で取りたかった」との願いも達成した。「最後までマウンドにいられる、というのは気持ちいいですねえ。できれば完封したかったけど」と改めて勝利の味をかみしめていた。孫のような相川の白星に、近藤監督も久しぶりに会心の笑み。「相川は球の切れがいいから。高校卒のルーキーが完投勝利したんですよ。最後までスピードが落ちなかったし。二、三年後にはウチの投手陣の柱になってもらうんだから」と手放しだった。
1987年
今季初勝利は99%手中にしていたものの、プロ入り二年目の初完封がピンチだった。九回二死満塁、打者永尾。「ものすごく意識しましたよ。その分、力が入りすぎて…。最後は捕ってくれ、と祈りました」その最後の打球は三邪飛、山下が慎重に捕球して相川に思わずガッツポーズが出た。計5イニングも無死から走者を許している。が、ホームは最後まで踏ませなかった。「きょうはコースより、力のあるボールを真ん中に投げようと思った。市川さんにも、追い込むまでコースに構えないでくれ、と言ったんです」言ってみれば、走者を背負っても逃げない大胆な攻めが活路を開いたといったところか。「ものすごくうれしい」の言葉にも当然、実感がこもっていた。六十一年のドラフト5位で地元横浜高から大洋入り。昨年、ルーキーの年に4勝を稼ぎ将来に期待がかかる十九歳だ。「六回真弓さんから始まったところがヤマ。完封はその時まだ意識してなかったけど、六回を乗り切ってよし完投だと思いました」札幌で大洋の若い有望株が芽を一つ出した。
相川が六月十三日の阪神戦(甲子園)以来の白星を挙げた。「久々の勝ちでしょ。九回は緊張しましたよ」強心臓の相川にしてはおとなしい発言。「杉浦さんに本塁打を打たれてからは五回までのつもりで。その後は何も考えずに投げていた」と言う。散発3安打ながら8与四死球とコントロールは荒れ気味だったが「一発長打を警戒しすぎて。逆に荒れていたのが良かったのかも」昨季の勝ち星「4」まであと一つ。「何とか勝ちたいですね。投げさせてくれるかな」