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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

劇場版『機動戦士ガンダム00』-宇宙のパルーシア-

2010年11月03日 21時31分40秒 | 映画

劇場版で『00』が完結したところで、そうだ、この物語はA.D.2307、

  • エネルギー資源(化石燃料)が枯渇
  • 中東地域で核汚染が発生
  • 太陽光発電システム(軌道エレベーター)の建設、世界の3勢力(ユニオン、AEU、人革連)への統合
  • 世界規模の化石燃料(石油)輸出規制
  • 中東諸国(原油産出国)が計画への不参加を表明
  • 20年以上に及ぶ太陽光発電紛争

を背景にしていた(※01)んだっけ。地球という限られたパイの奪い合い、何等分かのうち、大きな一切れをつまみ食いする者がいれば、テーブルの下で、せめてパイ生地の欠片でも落ちてこないかと見上げながら餓えて死ぬ者もいる、そういう歪んだ世界でしたね。今とあんまり変わらんな。
※01:『機動戦士ガンダム00 WORLD REPORT』(角川書店)。

皆、死にたくなかったわけです。生きるために奪った(殺した)。殺せば、報復を怖れて殺し続けなければならなくなる。そのうちに、なぜ殺す(殺した)のか、わからなくなるのかもしれません。
そういう因縁とは無縁に見える人々も、たとえばルイス・ハレヴィ(加害者)-ソラン・イブラヒム(被害者)という構造の中で生きていました。
そんな世界にもたらされた半永久的なエネルギー機関、GNドライヴ、「太陽炉」はまさに『00』のドライヴでした。気になって気になってしょうがなかったんだよ、あれ。
実に興味深いSF考証(※02)を読んだので、あと1回、映画を観ようか迷っています。

  • ELSはガス巨星の中の液体金属
  • ELSの生(運動)は思考=情報、「我思うゆえに我在り」
  • 現在、ELSの惑星系の恒星は白色矮星化し、彼らの母星は冷えつつある

ガス巨星―――木星みたいな、ね。そうそう、高温、高圧下で液体化した金属水素(H)みたいな。
そして、彼らもまたエネルギー資源の枯渇にさらされていたという事実。
※02:『ROMAN ALBUM 機動戦士ガンダム00-A wakening of the Trailblazer-』(徳間書店)。

これも飢餓というか、貧困というか。
それと、ELSはある程度以下に破砕されると活動停止に陥ることは映画を観ていてわかりましたが、全体が常態で、個体のままでは「分離不安」に襲われるっぽい。ほー。

「われわれは宇宙を征服したいわけでは全然なく、ただ、宇宙の果てまで地球(自分)を押し広げたいだけなんだ。」

「人間は自分のことを聖なる接触(コンタクト)の騎士だと考えている。でも、これが第二の欺瞞だね。人間は人間(自分)以外の誰も求めてはいないんだ。われわれは他の世界(他人)なんて必要としていない。われわれに必要なのは、鏡なんだ。他の世界(他人)なんて、どうしたらいいのかわからない。いまある自分たちの世界だけで十分なんだが、その一方で、それだけじゃもう息が詰まってしまうとも感じている。」

「それで、結局、これはいったい何なんだ?」
「われわれが望んでいたもの、つまり異文明とのコンタクトさ。いまやまさにそのコンタクトを体験しているんだ! その結果、まるで顕微鏡で見るように拡大されてしまったんだ、おれたち自身の怪物のような醜さ、おれたちの馬鹿さかげん、破廉恥さが!!!」

『Solaris』(スタニスワフ・レム/沼野充義訳/国書刊行会)

ELSにとっても、あの「最終決戦」は↑だったのかもしれないな・・・人類もパニック、ELSもパニック。調停者(mediator)がいなければ収拾がつかなかったでしょう。
本当に、刹那・F・セイエイと運命の出会いをしたものです。
中東出身であること、
生きるために殺してしまったこと、
祖国を失ったこと、
仲間を失ったこと、
すべてを、ELSを知ることに活かした、

(刹那)「俺には、生きている意味があった」

そういう知的生命体がコンタクトを求めて空から降りてきた。驚いたでしょうね。母星のELSは。

なんで、1人(個体)なの?

ELSは、脳量子波でつながるチャネルを持ちつつ独立が常態である人類(STAND-ALONE OPERATION SYSTEM)のアドバンテージを学習して、変革したんじゃないかな? 物質的な融合だけが相互理解への道ではない、情報(思考)の共有ではない、と。

(刹那)「俺達はわかり合う必要がある」

これが、とてつもない「未来思考」だったことが、SF考証から想像できます。
刹那、いや、ガンダムがELSにもたらしたのはGNドライヴ、エネルギー(光)。ELSなら、長い時間をかけてでも完全に理解したはず。
救世主(Messiah)だ。
冷えて死にゆく母星で、空を見上げていたELSにとって00クアンタは、ソラン・イブラヒムの0ガンダムのようではなかったか。
50年後、地球へ帰還した刹那の姿を見て、ああ、よかったな、ついに「花を咲かせて育てる(※03)」ことができたんだ、なんというか、成し遂げて満ち足りた魂を感じたのですが・・・そういうことだったと思います。
※03:『The beginning man.』。

GN粒子のことを考えていた時、原子核の周りを回る電子が内殻(低)軌道⇔外殻(高)軌道をジャンプして電磁波(光)を吸収したり放出したりするモデルを見て、粒子の世界はけっこうスカスカだな、と思ったものですが、

インターカレーション(intercalation)、

しちゃったんじゃないですか、刹那。
炭素(C)生命体と金属生命体のハイブリッド(hybrid)。刹那がホスト、ELSがゲスト。
ガンダムひとつであっさりと、座標もよくわからないELSの母星へ旅立ってしまったので、おいおい、どうやって食っていく、と心配しましたが、どうやら彼は個体レベルでも「エネルギー問題」を解決したようですね。生きるために殺す、人類の宿業に終止符を打った。
カッコいいよ。カッコよすぎるよ。

(ロックオン)「刹那、これだけは聞かせろ。おまえはエクシアでなにをする」(1st#19)
(刹那)   「戦争の根絶」

A.D.2364。刹那・F・セイエイ、ミッションコンプリート。

*

劇場版『機動戦士ガンダム00』-A wakening of the trailblazer-
劇場版『機動戦士ガンダム00』-刹那のミーム-


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