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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

劇場版『機動戦士ガンダム00』-刹那のミーム-

2010年10月19日 23時30分16秒 | 映画

小説を読んだので、さらに感想を。

*

まず、イオリア・シュヘンベルグから。
天才科学者の功績は、

  • 意識を伝達する原初粒子の発見、
  • 粒子を製造する半永久機関の基礎理論の構築、
  • 量子型演算処理システムの発明、
  • 軌道エレベーター建造による太陽光発電システムの提唱、etc.

ということは、彼は、なにが意識の伝達を妨げているのか、知っていたはず。
単なるイメージですが、コミュニケーションは、

A:エンコーディング(符号化)→言葉→(復号化)デコーディング:B
A:デコーディング(復号化)←言葉←(符号化)エンコーディング:B

こういうものだと思います。問題ありありです。
AとBが使っているエンコード・デコードソフトはそれぞれが独自に開発、保守しているので、言葉を聞くにしろ読むにしろ、頻繁に復号の失敗が生じます。同じ言語でも、です。これが誤解。

(イオリア)「・・・私が嫌悪しているのは、知性を間違って使い、思い込みや先入観にとらわれ、真実を見失う者たちだ。それが誤解を呼び、不和を呼び、争いを生む・・・わかりあわせたいのだよ、私は・・・」

まあ・・・爺さん(あ、当時40歳だっけ)は閃いたんだろうな。言葉(現象)を介さず意識(本質)にアクセスすれば、意思を誤解することもあるまい、と。
個人の努力にまかせてちんたらやっていたら「来るべき対話」の前に人類は滅びる、ハードウェア(肉体を含む環境)を変えれば、生きるために適応しようとソフトウェア(意識)も変わる、変わらざるを得ない、というシンプルな発想だったと思います。
この原初粒子が後に、GN粒子(光)として「発見」され、光に対応した脳の活動の最小スケール―――脳量子(波)に覚醒したイノベイターが誕生した・・・無(非物質)と有(物質)の対応付けに成功したってことですかね。つくづくヘンタイな爺さんです。

次に、ティエリア・アーデについて。
ラスト・ミッションに向けて、イアン・ヴァスティが00クアンタにヴェーダの小型ターミナルユニットを搭載、そこにミレイナ・ヴァスティが「ティエリア」を転送しました。
転送と云ってたけど、これは転写(copy)だろうな。ダビング10じゃあるまいし、ムーヴ1回っきり、元は削除、なんてあぼんなシステムはあり得ない。
ティエリアは少なくとも、ヴェーダと00クアンタの中に“2人”、同時に存在することになったわけです。
イノベイドはヴェーダの生体端末で、本人が「肉体は意識(本体)の容れ物に過ぎない」と云っているので、その気になれば増産も可能です。つまり、同時多発ティエリア。
ところが、環境が変われば体験も変わる。
情報(input)が変わる。
行動(output)も変わる。
ティエリアAとティエリアBの過程(process)に差異が生じる。
よって、ティエリア(Origin)が「ティエリアとしての人格」の統合を望むのであれば、同期(synchronize)をとる必要があります。分散している自分のデータを収集、記憶し、入出力を繰り返してシステムを変え続ける。ティエリアA、ティエリアBにもフィードバックする。
すると、次の“2者間”における認知はどうなるのでしょうか。

  • ティエリア(O)⇒ティエリアA
  • ティエリア(O)⇒ティエリアB
  • ティエリアA  ⇒ティエリア(O)
  • ティエリアA  ⇒ティエリアB
  • ティエリアB  ⇒ティエリア(O)
  • ティエリアB  ⇒ティエリアA

今のティエリアなら問題はありません。ティエリア(O)、ティエリアA、ティエリアBは、
「わたしはティエリアの何なのか」
また、お互いに、
「あなたはティエリアの何なのか」
を知っているので、状況に応じて適正に判断を下し、それぞれの為すべきことを成すでしょう。それらはすべて「ティエリア」となります。
ヴェーダと分離させられ、「自分が何者なのか、わからない」という最悪のシステム障害に見舞われた時は、彼の事情を知らなかったので、乳離れしなさい、と思いましたが、自分とコミュニケーションができない・・・は、まったく笑いごとではなかったです。だよね。

そして、刹那・F・セイエイ。
脳の器質は気質に影響することもあるので、彼もまた2年間、「自分が何者なのか、わからない」という状態に耐えたのかもしれません。そして、人類の未体験スペースに突入した彼としては、感覚に対応する言葉がまだ存在しないがゆえに沈黙するしかなかった。もともと言葉で伝える人じゃないですしね。
それはそうと、優秀なドライバーは人を発見する前にハンドルを切るなりブレーキを踏むなりして回避運動を起こす、というデータをなにかで見ました。なんだったかな。見る前に、人は人に気づいている。
これは知覚か。知覚の前にある「なにか」か。それがあるとすれば、どこに?

人は、「外」からの入力をどの段階で(いつ)知り、どうやって知ったことを知るのだろう?

ティエリア(イノベイド)の意識は、量子型演算処理システム・ヴェーダの量子ビット(qubit)で記述されています。逆に云うと、彼の「心」を写しとるほどヴェーダは優れていた。どこへ転送されても、ティエリアはティエリアです。ミレイナの「大人の女」の告白どおり。
刹那(イノベイター)はどうか。彼は人間(human being)です。きっと、刹那の意識そのものをヴェーダは記述できない。「刹那≒刹那」は可能だとしても。
でも、意思を伝えることなら。
なにを云いたいのかと云うと、ELSの母星へ旅立った刹那の「その後」が50年間、地球にフィードバックされなかった・・・とは思えないんだな、これが。
Trailblazerなんだから。
脳量子波というインターフェースがあるじゃないですか。
人類(意識-個体)をモデルにしたと思われるシステム(ヴェーダ-イノベイド)をさらに超える、刹那・F・セイエイの「対話」が「人類の統合」を育むものであれば。

刹那のミーム。

ちょっと表現してみたい気もします。フェルト・グレイスはこんな感じで。

God, give us grace to accept with serenity the things that cannot be changed, courage to change the things that should be changed, and the wisdom to distinguish the one from the other.

The Serenity Prayer

神よ、
変えることのできない事柄については冷静に受け入れる恵みを、
変えるべき事柄については変える勇気を、
そして、
それら二つを見分ける知恵をわれらに与えたまえ。

異星体(ELS)は異性体(isomer)に掛けてるんですよね? ・・・ではないなにか(something else)とも。

*

劇場版『機動戦士ガンダム00』-A wakening of the trailblazer-
劇場版『機動戦士ガンダム00』-宇宙のパルーシア-


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