雫井脩介「火の粉」


 会社近くの有隣堂ランドマークプラザ店の文庫コーナーで手書きPOPで大袈裟にプッシュしてあるエンターテーメント本が複数あり、今年に入って続けて読みました。ほとんどの作家はそれまで知らなかった一般にはマイナーな著者が中心ですがどれも面白く、さすがに専門家は読むべき本をよく知っています。最近増えていますが、タワーレコード、HMVなどの音楽ショップ同様に本屋さんもこういう推薦機能を持っていると数多在る本屋さんの中でこのショップに行きたいと思わせます。

 マイナー本を読む楽しみは、著者、ストーリーについての予備知識が一切ないので、この先一体どうなるんだろうというページをめくる喜び、ストーリを追うドキドキ感を味わえることにあると思います。私は本を買ってくるとすぐにカバーを外してしまいカバー後ろの紹介文が目に入らないようにします。今回、読んだ本も手書きPOPでの「なんなんだこれは」、「戦慄」、「史上最恐の犯人像」といった大書きコメント以外何も知らずに読んで物語の面白さを堪能できました。


 それぞれの小説の概要は省略して、読んだ本の個人的水準(ランク)だけご紹介したいと思います。一読していただく価値はある本ばかりです。

○圧倒的/痺れる/最高

・雫井脩介「火の粉」
・盛田隆二「夜の果てまで」
・奥田英朗「イン・ザ・プール」(ただ、続編で直木賞を取った「空中ブランコ」はワンパターンでイマイチ)

○高水準/読む価値あり

・赤井三尋「翳りゆく夏」
・志水辰夫「行きずりの街」
・吉田修一「パレード」
・岡嶋二人「99%の誘拐」

○個人的には合わなかった

・荻原浩「コールドゲーム」
・本多孝好「MISSING」
・加納朋子「ガラスの麒麟」



 その他読んだ本では、桐野夏生の「魂萌え!」も良かったです。桐野ワールド爆発で「OUT」、「柔らかな頬」、「ダーク」などに並ぶと思います。桐野夏生はやはり主人公が女性の作品がエグいです。
 楽しみにしていた村上春樹の新訳「グレート・ギャツビー」、「ロング・グッドバイ」はそれほど乗れませんでした(村上春樹の作品は本人の長編がずっと低迷しているのに比べて、翻訳ものはほとんどがよいのですが…)。

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