朝日新聞日曜版「世界 名画の旅」


 最近は新聞を読まなくなりました。以前は新聞を読むことはサラリーマンの義務のようなところもあり必ず目を通していましたが、インターネットで情報がオンタイムで読めて関連情報も自在に手に入れられる時代に新聞の果たす役割がなにか分かりません。1年前まではそうはいっても新聞は必要と思っていましたが、最近は書き手、発信源という重要性は分かるのですが媒体としては要らないことを実感しています。

 まだ新聞(と雑誌だけ)が世の中に多くの情報を提供していた頃、楽しみにしていた長期連載がいくつかありました。毎日新聞の色川武大の「うらおもて人生録」というエッセイ、朝日新聞の「世界 名画の旅」という名画を巡るエッセイ、産経新聞の歴史モノなどなど。

 特に朝日新聞日曜版に連載されていた「世界 名画の旅」は絵画の楽しみ方、見方を初めて教えてもらった読み物で日曜日の朝の楽しみでした。
 連載時もほとんどの紙面をコレクションしていましたが、それがまとまり出版された後も繰り返し眺めて、海外旅行で美術館に行く際には関連ページをコピーして持参していました。

 この連載は、天声人語を担当していた疋田桂一郎など朝日新聞の当時の名文家(本当に上手いです)による絵画、それが所蔵されている美術館、その都市を巡る絵画紹介文、旅行記、エッセイで、とてもおもしろく読めます。
 関連する絵も多く載っていて、何故この絵が名画なのかよく分かるとともに、この短いエッセイを読み終わると、その絵画が所蔵されている都市、美術館を訪れて実際に見てみたくなります。

 発売当初は、A4サイズの本だったので、連載時同様にかなり大きいサイズで絵を見られたのですが、現在この本は文庫本(7冊)となっているので、掲載されている絵画のサイズはとても小さいです。絵画の本は実物の写真なので実際に見るのと印象は異なりますが、せめて細部のタッチが感じられるサイズで見ないとその絵画のよさは分からないような気がします。大量出版の時代では仕方ないのでしょうが、この手の本は文庫本にする意味はないような気がします。

 冒頭に載せているのは、第2巻(当初版)で紹介されたベラスケスの「宮廷の待女たち(ラス・メニーナス)」です。付き合っていた時、妻が友人とスペイン旅行に行き、マドリードのプラド美術館にも行くというので、この本も含めてラス・メニーナスの関連資料をコピーして渡したところとても感謝されました。自画像を描いてもらっている途中で気分を害しふくれている王女様、とりなす待女、周りに画家(ベラスケス本人)、鏡に映る両親という構図については諸説あるようですが、美術館で聞いた最新の説(この連載時の記事とはかなり異なるもの)を帰国後いろいろと聞かせてもらいました。

 私も含め、素人が予備知識なしに芸術に感動することは残念ながら難しいと思います。絵画も綺麗な絵だと感じる程度であれば誰でも可能ですが、その先となるとなかなか分かりにくい分野です。この本の写真と文章は、奥深い絵画の世界への案内役としては最適なものの一つだと思います。
 この連載の続編でもよいので、新聞には日曜日が来るのが楽しみと思えるこういう連載を企画してほしいものです。

 それから、この本に掲載されている絵画を生きているうちに実際に見てみたいです。全ては不可能なので、せめて「プラド美術館」、フィレンツェの「ウフィツィ美術館」に行きたいなあと思います(妻はどちらも行っているので、もういいと言っていますが…)。
 ただ、見たい絵画と巡りあうのはなかなか難しいものです。これまでパリに2度行き、ルーブル美術館で膨大な絵画を鑑賞しましたが、2度ともフランス絵画を収蔵しているゾーンが修復中で一番楽しみにしていたダビッドの「ナポレオンの戴冠式」、「レカミエ夫人の肖像」を見ていません。同じくパリのマルモッタン美術館に行ったところ、モネの「印象・日の出」がどこにも展示されていません。おかしいなあと思っていたら上野の美術館に来日中でした。ニューヨークのホイットニー美術館にオキーフの「夏の日々」を見ることを目的に行ったところ、どこにもありません。スタッフに聞いたところ、「今は地下の収蔵室にあるよ。その代わり○○○を展示しているじゃないか、オキーフの絵を見たい特別な理由でもあるのか」と言われました。

 海外旅行には大きく分けて都市系とリゾート系とがあり、若い頃は絶対にショーや絵が観られる都市系でしたが、最近はリゾート系が多くなりました。まだ見ていない絵が多いなあと思うと、次回行く機会があるのであれば久しぶりに都市系もいいなあと思います。
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