「監督失格」(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

              

 最近の新聞、雑誌の映画評で賛否両論ありと紹介されていて面白そうだったので観ることにしました。

 先行上映は六本木のTOHOシネマズ一館です。ネットでみたところ初回でも比較的空いていたので予約しました。上映初日に観たことはありますが初日の第1回は初めてです。

 久しぶりの六本木ヒルズ、オープン当初に観光で親を連れて来て以来です。しゃれた近代的な街並みで、さすがは東京の最新スポットです。劇場は5割程度の混みようでした。

 平野勝之監督と恋人のAV女優林由美香との愛と冒険、別離後の姿を追ったドキュメンタリー。メインは以前映画として公開されたという「由美香」の再編集です。平野と由美香が自転車で北の果て、北海道礼文島を目指します。しっかり化粧をして、日除けのための長袖、帽子を被ってどこか街にでも出掛けるような格好の由美香が、トラックがバンバン走る国道の脇を必死にペダルをこいでいる姿に魅入ってしまいます。涙流して、泣き言いって、ケンカして、泥酔して、同じような放浪者と交流しての二人の一カ月にわたる珍道中。真夏の移動でひどく辛そうですが、本当に幸せそうな二人。

 ドキュメンタリー番組は深夜や日曜昼のテレビでも結構深刻、重い内容も放映しているので、男と女のじゃれ合いに正直、期待外れというか、どうしてこれが映画なのという気持ちで観ていたのですが、北海道自転車旅行のロードムービーは何ともいえない魅力があります。自由、無計画、奔放さへの憧れです。私は憧れてもできない。

 この旅行の後に二人は別れることになります。平野監督は同じような北海道自転車旅行モノを撮り続けるけど行き詰ってしまう。8年近い年月が流れて、久しぶりに由美香の姿を映像に残す作業を始めた矢先、突然の死を迎えた由美香を平野監督が発見することになる。由美香の死の発見シーン、その後いろいろあって最終的に「由美香」の続編として本編をまとめるまでの記録です。
 この後半もショッキングですが、それでも見所は前半のロードムービーだと思います。

 ドキュメンタリー映画としての評価は難しいです。製作者側に都合のいい映像だけの編集だろうし殊更美化するのはどうかと思います。他人様が観るべきなのかどうかは私には分かりません。ただ、この映画にはリアルな迫力があります。さわやかな青春映画のような後味が残る。私は面白かった。「由美香」を観たくなり、帰宅後探しましたが、今は絶版のようです。


 上映後、庵野秀明プロデューサー、平野勝之監督による舞台挨拶、マスコミ向け撮影会がありました。こういうのを見学するのは初めてです。庵野氏は来年公開のエヴァで頭が一杯で矢野顕子の歌まで入った完成版は観ていないと言っていました。新劇場版エヴァQも待ち遠しいです。
 平野監督は矢野顕子に歌をお願いして、出来上がった曲の題名が「しあわせなバカタレ」と聞いて笑って泣いたと話していました。


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