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「ヴェルディ イル・トロヴァトーレ」(METライブビューイング2011)
一度体験してみたいと思いながら4時間、5時間を超える上映時間に躊躇してきたメトロポリタン歌劇場公演のライブビューイングです。今シーズン12作中の11作目「イル・トロヴァトーレ」です。上映時間3時間とシリーズの中では長さがほどほどだったのとヴェルディの人気作なので思い切りました。
人気作といってもそんなに聴いている訳ではないのでまずCDで復習です。セラフィン、カラヤン指揮のディスクがあったように記憶していましたが見つからなかったので、ジュリーニ/ドミンゴ盤、ムーティ/スカラ座盤を聴きました。ジュリーニはゆったりしたテンポでシンフォニックにオケを鳴らし歌手に歌わせて最高です。ムーティのヴェルディについては鉄板で文句の付けようがありません。スカラ座初期の激しくリズム処理する演奏も魅力的ですがスカラ座後期はバランスよく完成度の高い演奏です。
「イル・トロヴァトーレ」は作曲時期では「リゴレット」と「椿姫」の間に位置する中期始めの傑作です。リゴレットと椿姫が大好きで(リゴレットは全オペラの中でも一番目か二番目に好き)よく聴くのに比べると、これまで機会が少なかったですが改めて聴くといい音楽だなあと思えました。
雨天の日曜日、会場はいつもの新高島にある109シネマズです。事前にネット予約します。このシリーズは3500円です。思い出しましたがこの値段の高さも少し気になるところでした。3500円あれば輸入盤DVDも買えそうです。それでも豪華歌手を揃える方式のMETは現地でも何万円もする筈です。まあ仕方ないのかなあ、この3500円の価値があるのかどうかの検証でもあります。
シアター11は全席110席程度の小さい方の劇場です。当日予約してもど真ん中の席だしガラガラなのかなあと考えていたら意外や結構な人です。ぱっと見ですが2/3くらい埋まっていたかもしれません。観客のほとんどは結構な年配者です。50代、60代でしょうか。たまにしか行かないけど実際のクラシック音楽のホールは若い人も結構多いですが、この劇場は年齢層高めでした。
入り口で貰ったタイムスケジュールによると次のような進行です。
1.解説(ルネ・フレミング)/1幕&2幕 75分
2.主演2人のインタビュー/METゲルブ総裁による来シーズンの紹介 9分
3.休憩(客席映像) 15分
4.次回作「ワルキューレ」主演ヴォイトのインタビュー/助演2人のインタビュー 9分
5.3幕&4幕 66分
6.カーテンコール 6分
合計 180分
そして、「指揮・・・マルコ・アルミリアート 当初予定されておりましたジェイムズ・レヴァインは体調不良の為、降板となりました。」とあります。がくっ。MET来日公演の指揮も降板だそうです。最近は椅子に座っての指揮姿でしたが大丈夫でしょうか。あの大柄な体格、笑顔とアフロヘアーを一目見たいと思っていましたが残念です。それでも演奏は何ら問題なく聴こえました(比較できるほどレヴァインを聴いていないので。もしかしたら全然違うのかもしれません。)。
このライブビューイングとは何なのか、家で観るDVDとの違いは何か、それを知ることが第一目的でした。正直な感想はDVD映像を大画面、大音響で再現しているだけです。もしかしたら何か特殊な技術が駆使されているのかもしれませんが分かりません。1ヵ月前の最新の舞台(本公演は4/30)を間を空けずにここ日本でも観賞できるというものです。特別な驚きなしは少し期待外れでしたが、スーパースター揃いの高水準オペラを安定的に観られる。それはそれで素晴らしいことだと思います。
マンリーコ、レオノーラ、ルーナ伯爵、アズチェーナの4人の主役級の歌唱は万全です。最近のオペラスターはほとんど分からなくて名前は知りませんでしたが歌の圧倒的な魅力を堪能させていただきました。唯一知っていた銀髪、イケ面のホヴォロストフスキーには会場も熱狂的な歓声をあげていました。
演出はD・マクヴィガー。初めて知った演出家ですが(というか最近は誰も知らない)オーソドックスな美術装置を駆使した舞台、演出だったのだと思います。回転舞台をインタビューの中で出演者が絶賛していました。
予習も含めて今回、続けて「イル・トロヴァトーレ」を聴いて、観た訳ですが、始めは意外とイケるなと思ったのですが、リゴレット、椿姫の完成度の高さに比べると少し落ちますね。脚本も未完成というか十分に練られていない箇所があります。音楽も聴かせどころが続いて一般的な見方では高水準な作品ですが、両脇に聳える大傑作と比較すると劇的、印象的な旋律に乏しくて単調に聴こえます。いくつかの合唱以外はこれといったメロディを思い出せません。
それでも声の威力、オペラの豪華さを久しぶりに堪能できた3時間でした。3500円の価値はあった・・・かな。
METライブビューイングを鑑賞した結論(?)は・・・勿論、個人の好みですが、大好きなオペラ作品の最新舞台であれば3500円の価値はあるかもしれません。来シーズンのラインナップが発表されていますが、「ドン・ジョバンニ」、「神々の黄昏」を観てみたいと思いました。
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