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クルレンツィス指揮/ムジカエテルナ「モーツァルト フィガロの結婚」
これは事件です。何てフレッシュな躍動感、今生まれたばかりのような音楽を聴く喜び。天才の楽譜に生命を吹き込んだクルレンツィスの天才。1786年に作曲されたオペラ、230年間も演奏され続けているのに、今、こんなに驚きの演奏を聴けるとは。
古楽器を使用した演奏も素晴らしいのですが、驚愕したのは、歌い手の自然で生き生きとした歌です。滑らかなフレーズ、激情した時のアグレッシブな声、ため息をつくようなかすれた声などこういう表情付けはこれまでもありましたがとにかく自然。こういう歌い方が一般にあるのか不勉強で知らないのですが、ヴィブラートを抑えていて、これまで聴いてきた歌い方と明らかに違います。刻まない、例えるならフルートのようなオケと一体となった歌い方です。コシ・ファン・トゥッテの冒頭でこういう歌い方を聴いたことはありますが、これを全編で聴くのは初めてです。
それと録音の関係なのか演奏なのか分からないのですが、低音部がズシンと響いて聴こえて音域の幅が大きいです。
また、楽器と歌が掛け合ったり、レティタティーボのピアノが、たまにつぶやくように葬送行進曲のように超超スローで語り始めたりと、これまで聴いたことのないフレーズに溢れています。どんなに優れた演奏でも3時間はちょっと長く、有名なアリア、合唱待ちで途中は飽きるのですが、この演奏は違います。
「クラブ・ステラ」のディスクガイドで知った演奏です。指揮者のクルレンツィスは、「ギリシャの鬼才、ついにその全貌を現わす。」とCDの帯にありました。
特薦されても、フィガロはこれまで何十枚と聴いてきて、何となく想像できるので初めはパスしていました。仮に一度聴いて感心したとしても、3時間かかるオペラを残りの人生でどれだけ聴く機会があるか。
ユーチューブで、このディスクのものか分からないのですが、オケのメンバーが立ってフィガロの序曲を生き生きと演奏している様子を観て、これはちょっと違うぞと、思わず注文してしまいました。
モーツァルトの天才を、音楽を聴くワクワクした喜びを、改めて知りました。推薦の柳沢功力氏に、指揮者のクルレンツィスに感謝です。
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