森麻季「ピエ・イエス」


 森麻季については、昨年だったかテレビのN響の第9で初めて見た後にイタリア・オペラ・アリアを集めたディスクを購入しました。

 CDで改めて聴いた印象は、大好きな(今は所在不明の)キャスリーン・バトルの声質に似ていて好みのタイプだと思いました。安定感のある硬質で透明な声、バトルほどではないけどチャーミングな歌い回し、リリックソプラノというのでしょうか愛すべき歌声。日本人にもこういう声を出せる人がいるとは少し驚きでした(不知なだけで実際には沢山いるのかもしれませんが)。
 ただ、そのディスクで取り上げてあるアリアはルチアや椿姫などどちらかというとドラマチックなソプラノの歌が中心で、こういう志向なのかなあと声の印象と選曲とに若干違和感を感じたものでした。

 今回、ドレスデン国立歌劇場の来日公演(ゾフィー)に併せて新作が出たのですが、宗教曲中心というのでパスかなあと思っていたところ、試聴するととてもよい印象だったので購入しました。
 宗教曲中心ですが、まさにリリックソプラノの魅力全開という感じでとてもよい出来です。モーツァルト、ハイドンでの愉悦感、バッハの厳かな透明感に加えてフォーレのピエ・イエズでの天国的な響きです。天国に行けばこういう音楽が聞けるのかと思えた程で、それだと褒めすぎかと思ったので改めて所有しているコルボやクリュイタンスなどのピエ・イエズを全て聴いてみたのですが、やはり森さんの声の響きのほうがよく聴こえました。

 私は原語の発音や発声法などの技術的な部分は分からないのですが、声音の魅力だけだと世界でもトップレベルにあるような印象を持ちました。今後、どういう予定があるのか知りませんが日本人ソプラノがこれまで成し得なかった大きな歌劇場での活躍を期待したいです。
 ツェルリーナ、スザンナ、デスピーナ、ゾフィーだけでなく前作からすると主役級も歌うのだと思いますがオペラや宗教曲の実演を聴いてみたいソプラノです。


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