チェット・ベイカー「チェット・ベイカー・シングス」


 ジャズではチェット・ベイカーに嵌っています。トランペッターの素人っぽい歌にです。
 ジャズの巨人の一人にチェット・ベイカーという白Tシャツにジーンズ姿のジェームス・ディーンのような格好をしたトランペッターがいることは知っていたのですがこれまで聴く機会がありませんでした。最も人気のある代表作が歌を入れたアルバムということが避けてきた理由だったかもしれません。

 CDショップでたまたま目に入ったのであまり期待せずに買ってみました。1500円だし、外れでも損害は小さい…。
 1曲目の「ザット・オールド・フィーリング」でチェット・ベイカーの歌声を聴いた瞬間、想像外の不思議な音楽に驚くと共にすぐに聴き入ってしまいました。これかぁ・・・女性的、中庸な歌声、アンニュイ、ボサノバ誕生のきっかけ、ヘタウマ、囁くような、それでも誰もが好きになった・・・納得です。
 この歌声は聴いてもらうしかないですが、加えて伴奏時に付ける本業のトランペットの響きにも魅了されました。クリフォード・ブラウンにも似た深い味わいのある静かでストレートな咆哮。トランペットはこう鳴らして欲しいよなあというプップップォーンと響き渡るホーンに聞き惚れます。

 歌なし本業のディスクのうち、村上春樹が薦めているカリフォルニア時代のカルテットのアルバムの他、ニューヨークに移った後のビル・エヴァンスやペッパー・アダムスと入れた「チェット」もいいです。私は朗々と鳴らすトランペットの響きに弱いようです。どのディスクを取り上げるか最後まで迷ったのですが、やはり最後は皆さんと同じでこの1枚目の「シングス」です。個性が際立つだけでなく何度聴いても飽きない味わいがある演奏集です。

 クリフォード・ブラウン、マイルス・デイビス、ビル・エヴァンス、ビリー・ホリデーに続いて心を動かされるジャズ演奏者に巡り合えました。


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