ビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビイ」(完全版)

              

 ビル・エヴァンスによる不朽の名作「ワルツ・フォー・デビー」と「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」の完全版。1961年6月25日(日)、ニューヨークのヴィレッジ・バンガードで開催された5回のコンサート全てを順番に収録した3枚組です。

 この5回のセットから編集されて、2枚の傑作アルバムが生まれています。歴史に残るコンサートであればファンならその全貌をノーカットで聴きたくなって当然ですが、実際にノーカットで聴くと冗長だったりして、やはりオリジナルがいいと感じることが多いのはマイルス・デイビスの演奏とプロデューサーのテオ・マセオによる編集の関係で有名なところです。

 この演奏については、時代を考慮すると奇跡的に生々しい録音のよさも相俟って、決して冗長ではなく、素晴らしいトリオを隅々まで堪能できます。客席の談笑、食事中の皿、グラスがカチカチ鳴る音。歴史的な演奏をBGMに仲間と笑って食って喋っているニューヨーカー。張りつめた緊張感のある演奏と遠くに聞こえる客席のリラックスした雰囲気。不思議な空間です。

 このディスクは2002年に発売されたものがSHM-CDになり、アルバム名も変更となって再発売されたものだそうです。私は初めて聴いたのですが、改めて、エヴァンスのピアノ、スコット・ラファロのベースに酔いしれます。人類の至宝と呼んでいい演奏の記録だと思います。


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