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バーンスタイン/NYフィル「チャイコフスキー 交響曲第6番《悲愴》」
レコード芸術の8月号に「時代を創った名盤たち」という特集があり、チャイコフスキーの悲愴で旧ソ連からやってきたムラヴィンスキーの衝撃が紹介されていました。このディスクの凄さは承知していますが、興味が湧いたのは、関連で紹介されていた終楽章17分の86年のバーンスタイン盤です。ムラヴィンスキーの影響を受けて非感傷的な表現様式がその後主流となっていたところ、その呪縛を解いた。バーンスタインの悲愴がいいなんて読んだことありませんでした。
早速購入して聴いてみたのですが、テンポの遅さです。演奏時間の比較はあくまで参考ですが、名盤と比較してもかなりの違いがあります。ムラヴィンスキーとバーンスタインでは全体で14分も差があります。
ムラヴィンスキー 17:41/8:07/8:22/ 9:47
カラヤン 18:19/8:47/8:29/ 9:43
ゲルギエフ 18:20/6:57/8:11/10:26
バーンスタイン 22:32/8:30/9:51/17:09
ただ、この内容主義の演奏は結果としてこのテンポになっているので決して不自然な遅さではありません。メロディの美しさも損なわれていない。それでも所々の立ち止まる様な沈黙、リズムの刻み方、金管の咆哮、ティンパニの最強打は何だこれはという驚きがあります。死にたくなくてもがいているのか、この音楽が終わると死んでしまう、少しでも長く演奏して生きていたい、とでもいうのか。
終楽章は長く悲痛な溜め息、死への歩み。有名なベートーヴェンの弦楽四重奏曲の管弦版や大好きなバーバーの弦楽のためのアダージョで聴かれる時間が止まるかという緊張感高い壮絶な演奏を期待しましたがそれではありません。ここは諦めです。最後にもがいてみますが運命が許してくれない、もうダメという悲しみの音楽です。
悲愴は既存盤で十分と思っていましたが、凄い演奏をこれまで聴いていませんでした。
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