ORGANIC STONE

私達は地球を構成する生命を持った石に過ぎないのですから。

小作人の悲劇:ザ・フィールド(1990)

2006-07-03 18:37:10 | 映画:アイルランド系
The Field (1990)

骨太アイルランド物を撮るために監督やってる感のあるジム・シェリダン1990年の作品。大戦前のアイルランドの田舎に住む頑固おやじ"ブル"(リチャード・ハリス、アイリッシュです)の、土地への執着と、悲劇。アラン島ロケの美しい風景を見て、なんて素敵なところなの!なんて言うのはアウトサイダーだけ。現実は、映画にも描かれるように、芋つくるのも精一杯の痩せた土地。地の果てまで来たな・・・って感じです、実際は。

小作人の"ブル"は、地主が土地を売ろうと考えているのを知り、買い取って自分の物にしようと考えます。ところが金持ちのアメリカ人(トム・ベレンジャー)が、その土地を買う計画をしているのを知り、食い止めようとするのですが・・・
"ブル"の息子がショーン・ビーン。いつの日か村を出て、新しい人生を夢見る好青年を演じます。ショーンが、好青年(笑)。今日も頑固おやじの顔色を伺いつつ、羊を追うのであった。ティンカーと呼ばれる、ジプシーの女を好きになり、おやじはそれが気に入らない。(「ティンカー」とは流れ者のグループで、キャラバンで移動し、歌や踊り、占いで生計を立てていました。現在あまり使ってはいけない呼び名です。)しかしリチャード・ハリス、ジョン・ハート、ブレンダ・フレッカーという大御所に囲まれ、「3すくみ」ってやつ?存在感ありません・・・映画の落ちはショーンファンには辛い。
ジョン・ハートは"ブル"の、少々エキセントリックな飲み友達。相変わらずどんな役でも持って生まれた性格のように演じてしまうのですよ、この方は。けっしてハンサムじゃ無いのですが、存在感があり、なまりも最高。ミッドナイト・エクスプレスで「この人、上手い!」と思って以来のファンです。
「マイ・レフト・フット」アカデミー助演賞受賞女優ブレンダ・フレッカー演じるのは、"ブル"の寡黙な奥さん。女は黙って働く!みたいな農家の女。この3人、よく揃えたな・・・って感じです。

決してこの映画の後味は良く有りません。風景は美しいのに、がつーんと暗くなります。アイルランド人農夫を代表するような人物"ブル"。スーパー頑固でお金なくて、奥さんの作る超まずそうなシチューを毎日文句言わず食べ、パブで一杯やるだけが楽しみ。あんなに痩せた土地でも「俺の土地だ、俺がここまで耕したんだ!他所ものにやるものか!」と、頑固一徹。一生自分の村を離れず、決して目の前に有るもの以外望まないで、一生を生きて行くはずだった彼。しかし一旦、物事が悪い方向へ向かい出すと、人生とはなんて残酷なのでしょう・・・見ていて切ないです。(見終わった空しさは、アラン・リックマンの「恋する季節」並み。つまり空しさ最高ランク。)ジム・シェリダンはこの映画で、何を言いたかったのでしょうか。当時のアイルランドの厳しい現実と、ある悲劇、って感じなのでしょうか・・・

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