白い月

白い月

心事

2019-03-27 13:15:15 | ポエム
愉悦の杜に来た再びの春


途方に暮れたいつかの些事は忘れた

不条理をことごとく異端視することの法楽

不寛容な私が許す唯一の至福は

けれんもなく、含羞もない冬日の日照


腎杯に留まったまま 沈黙を続ける二つの結石が

折あればと機を窺っているのも知っている


残したいものもはなかった

試したいのはほとんど試した

どうしても手放せないものも 

つい見落としたものも

縺れる脚を叱咤激励しながら捨てた


荷は軽く 装いは一層軽くふわふわと漂う旅をした

旅の終わりに すみれ色の椅子に座って異国の老人に見入った

《・・老いを引き寄せてはいけない・・・》

エンデイングソングがずーっと耳朶を占めている

  





解放

2019-03-07 09:16:29 | ポエム
無為の日にすら 暗黙の戒律に縛られてこわばっていた 


闇に溶けゆく 狼藉者の嗚咽を遠ざけて

息災の越冬をやり過した春が

ゆっくりと歩を進める


白面の男子の沈黙は潔い

身動きならぬ軛を 穏やかに 緩やかに 滑らかに 解きほぐしながら

細くて長い指が蒼い光の波をかき分けている


在るべきままの日常を受容

仮装する囚われ人の本性は隠せない


垣間見る傷痕を露わにする陽光

発散し飛翔する思惟に幸あれ