白い月

白い月

終章

2013-12-28 21:04:09 | 心事ポエム
冷えて 星も凍り付いた
やせ細った白い月に今年最後の夜を讃えよう 


昏い物影にも密やかに差し伸べる光の手 

凍った川に迷い込む冬鳥にやさしく息を吹きかけ

在りもしない手で 水色のレースを拡げる


銀色の巻き毛をかきあげてピンでとめる

あなたの起こした乱調の兆し

取り乱したまま 夢見心地のそぞろ歩き 


腕の中から するりと身をかわす 

解き放たれた猫のように

うっすらと けだるい終わりの月


さらさらと

仄暗い彼方へ傾きながら 

ひたすら記憶を遠ざけようとする


すり抜けて逝く陽よ 月よ あなたよ 

何処へ帰る

此の世を浸しつくして消える日々のいとしさよ







鎮魂

2013-12-21 16:50:22 | 心事ポエム
深い地底に 
寄り添い座る

なりゆきのまま
そよぐ風の音

翳落とすひととき
黄色い吐息

花踏む雨
空を舞う過去

溢れてこそ
水は水

今枯れて
何処を彷徨う

引き延ばした
無為の季抱えて

たった一つの
不具合嘆く月

山鳴りも聴かず
耳朶をくすぐり

越えるべき丘も持たず
平野を結ぶ光は幻

生きものたちの遠のく声
すべてのあなたを連れ去った

還らぬ日よ 月よ 朝よ 夜よ
・・・・闇よ

他界から

2013-12-15 12:32:37 | 心事ポエム

清浄な碧い地を埋め尽くす 唐突な雪

際限のない乱舞に私は眩暈する

小春日の 甘やかな陽の滴を食べながら

降り沈む渦の中に 巻き込まれた海からの便りを披く


宣託者のなりゆきのまま
こころは霧に閉ざされて つい謀反の道を選んだの
 
涼やかに生きた証しに 降臨の加護を
哀しみの代価に換えてしまったの

身を浸す至福の盃を溢れさせながら
豊饒の果実受け取り それすらも捨てたの


他界に家を探す子よ
独り生まれ 死にゆく者よ わたしの日常よ

果てしも無く湧き上がる寂寥が 
今激しく降りしきっている


冬の蝶

2013-12-08 10:51:00 | 心事ポエム
うっすらと白いレースのような雪が
凍った芝生を覆っています

ふっと 息を吹き込んだ風が
薄いレースを持ちあげて 
あけぼの色の宙に浮かせています

《ごらんよ 蝶が隠れている》

今日はあなたの弔いの日

わたしの躰じゅうの血が凍えている

爪が剥がれ、ささくれ あちこちを傷つけ

肋骨には針が刺さって 勝手に音楽を奏でている

ふあふあと視野が揺れ 縮み

渇いた眼球が軋み開かない

舞い降りる花弁の憂鬱 聴く耳も朧ろ

うつつな思い 巡らせて又戻り 彷徨い惑う 

ああ そこに居るのはあなたか  

蝶になって来てくれたのか。