白い月

白い月

独居

2014-07-28 08:43:20 | 心事ポエム

今日は何を残し 何を捨てる?  


何も見ていない風の気まぐれも

すがすがしい沈黙をも許すのは

眩しく光る お前の順心


まがまがしい 警告音、電子音を消す。


ひたすら教えを乞う求道の童子の旅は遥か

わたしはあなたの同行者になりたい


ひとり海から生まれ ひとり海に死ぬ

出自を窺う人魚の恋物語読みながら

澄んだ空き地に開く朱い花を想う


見抜かれていた 下手な言い訳

傍に居て欲しいだけの老女の真昼

居心地の悪さはいつまで続くの?


闘争の連鎖に終わりは無い

鬱々と晴れぬ瞳の痛み抱えて

キリンとするそぞろ歩き。


(いずれ誰も居なくなる)

寄り添うひよどりの叫び声と
                
丸窓に張り付いた蔓草の葉に気を紛らせているのです。


塞がれた目

2014-07-22 17:31:20 | 心事ポエム
《それは謎です 当分は眼を使ってはいけません》
何が無くとも・・ しかし眼は・・・。

玉ねぎ、セロリを薄くスライス
烏賊を軽くゆでて冷やし
黄色と赤のパプリカ入りの甘酢漬け 

わたしは毎日そればかり食べている

あなたが目を閉じている間に

彼方の国の空飛ぶ棺が毀れて
雲間を抜け乍ら たくさんの人が落ちてきました

地下トンネルを蛇のように這い 吹き飛ばした弾丸が
生きものや建物から魂を抜き取りました

時ならぬ雹が一面を白く煙らせ 地を叩き
人も樹も鳥も虫も押し黙らせ、眠らせました。

《一刻も早く疲れた目を治さねばなりません
暗闇でメールを打つのを止めて下さい》

寡黙なキリンの深い吐息は聴こえる。
   
耳朶を通した丸い輪飾りが揺れるのも見える。

果てしも無い草叢をゆっくり歩ける。

これで良しとしよう 
引き裂かれた夏の日の寂光よ。







泡立つ日々

2014-07-13 11:14:24 | 心事ポエム
わたしの街を逸れていった巨大台風

途切れた雲間に嵌めこまれた

大きな黄色い月。


この一年で一人が旅立ち

一人が寡婦になる

音もなく忍び寄る鈴の音が聞こえる


跳躍する猫

視線の先で竦んでいる幼鳥

病葉がふりしだく午後はモノクロ。


なりゆきまかせが常態

雨も風も猛暑も嫌・・・

まさぐるこころの潮時の法悦にひたる


漂う人の波に溺れ乍ら

あなたの姿を探していた。

渡しそびれた伝言がある














風一夜 

2014-07-05 13:34:54 | 心事ポエム
只事でない

いきなり眼が 痛み 瞼が塞がる 

心筋が震え 血が逆流する

子が生まれた話はめったに聞かぬのに

子に先立たれた老夫婦 一人逝く幼児の悲話に泣く


緑葉が食い尽くされた気味の悪さ

塔を巻き込む偏西風が駆け抜け 

唐突に地が沈み込み 灯りが消える

歩道に溢れる水の元凶はゲリラ雨

無人のビル群の沈黙の無為

どこまでも灰色一色の空に鳥は居ない

魚はみな死んだ異国の河。


空涙する泣き男 
笑う旅人 
鬱を病む人魚 
骨折の薔薇 
演じる着ぐるみ 
ガラス玉のような七月の月・・・・。


浸しつつ 満たし 
溢れつつ 毀れる 
消えゆく幻の船に乗るわたし。