白い月

白い月

五月

2013-05-31 09:23:38 | 心事ポエム
海を見て居る ココシャネル
どうしても 煙草を止められない


張り付いた病棟の月
陥穽を 解き放つか五月の薔薇
いまだに告知が出来ないまま


ここからは 終わりの始まり
人の顔した月の横顔
埋められない頬の傷を持て余す


《明日の事など知りません》
賢者の自若のもち主も
星の出自を告げられない


置き去りにされた老俳優
《とても美しいトンネルだから ここからは独りで堪能して下さい・・・》
どうしても出口が見つからない

この世の是非も消息も 
もはや問う事も無いうちに 
わたしの五月が過ぎてしまう


逝く春

2013-05-23 11:33:21 | 心事ポエム
深夜 漂う気配 

おぼろな吐息 にじむ光彩

明滅し やがて消えゆくものたち


水底に落ち込む半月の翳

見知らぬ人の間をすり抜けながら

さりげない目配せで 許しを乞う


迫りくる晩鐘を背に

解き放たれた月の花  

滅びゆく夜のしじまの主となる


立ち眩みしている夢見る人形

深追いしてはいけません

今宵の眠りは凋滅の証し


閉ざされたままの扉開き

漂う想いかき寄せ集め

胸に留めよう黄金の針で




冷雨

2013-05-16 14:08:28 | 心事ポエム
あからさまに響き合う

音も色も境も無い

春浅い五月だから


神が死んだ後の

傷だらけの鳥

身をよじりながら落ちてきたり


置き去りにされたまま 

有意、無為の罠を逃れ

叢を彷徨う銀狐も一病を病む


固い凍土をこじ開け

したたかに芽吹く花芽たち

おまえの柔な影を踏まぬようにしよう


全ての夜 全ての朝 幾つも重ね

限りなく続く淵に縋りつつ

この混沌の海を漂う再びの旅


泡立つ想い忘れず 

横切る天使を おののき恐れ

暦日の薔薇を育てよう



 

 

名残り雪

2013-05-09 12:58:49 | ポエム
風も 空気も 光さえも
覆い尽くした五月の雪に怯む

地下舗道を闊歩する若い娘の
二の腕に 天使と百合のタトウ

思わず凝視してしまう
思わず祈ってしまう

年代物のふくれ織のコートに皮手袋
大きな帽子で隠す老女の動揺

朱、黄土色、橙色、濃い緑、銀色、
そよかぜのようにスカーフを絡ませた細い首が寒い女

欲しいものが見当たらないと彷徨う人の波 
もう得るものも 失うものも何も無い

うたた寝をしているうちに 仄暗い闇が迫る 
太陽光が無くとも生きていけそう

今日生きた証の為に いつもの回廊の暗がりに向かう
さりげなく確かめたシネマは「カルテット」

寄り添う人 座り込む人 笑う人 哭く人 謳う人 
人が人を呼んで 白い顔に白い影

わたしもよろよろと吸い込まれそうだから
そろそろ帰ろう キリンが待っている