フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

後悔のない恋

2005年11月02日 22時39分41秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
今日、学校で放課後の清掃をしていると、
「もう今年も冬だね~。物悲しいねぇ~」
と、窓から見える枯れ木を見ながらトモが溜息をついていた。
「・・・そうだけど、どしたの?トモ??えらくセンチじゃん?」
スズが勢い良くほうきでゴミを掃きながら言った。

「そー言えば、最近、カレ来なくなったねぇ」
私が最近気に掛かっていたことをさりげな~くトモに聞いてみると、彼女はあっさり、
「あー。あいつ?別れた・・・」
「えーーーー!!!なんでぇ~?あんなにアツアツだったのに?」
私とスズが驚いてそう叫ぶと、
「まぁ~、なんちゅぅの?好きなだけじゃダメと言うか・・・、それが分かったんだな~」
「意味不明・・・」と、私。
「え?それ以外に何が必要なのぉ?」と、スズ。
「いいじゃん。私のことは。それより、ハルナこそトオル君と上手くいってるの?」と、反撃を受けてしまった。

「いいじゃん。私のことは」と、言いながら、私はさりげな~く、目線を外した。
「・・・まさか進展なし?」と、トモ。
「・・・まさかエッチも・・・まだ?」と、スズ。
「・・・トオル君、もしかして、不能?」と、二人。

「・・・い、いいの。別にそんなことは!エッチはなくても愛はある・・・だもん」
(・・・多分。)
「おお~!おこちゃまが開き直った」と、どこまでも二人は攻撃の手を緩めない。

実はトオル君は最近、キスをしている最中、密かに手を胸の近くまで移動させてくるようになってきていた。
でも、私はそれこそさりげなく体をずらしたり、気を逸らしたりして、彼の手からスルスルと逃げてきたんだ。

キスから先に進めない原因は、私にある。

私はまだかずにぃときちんと話をしていない・・・
そして、トオル君にかずにぃとのことを言っていない・・・
未遂だったとしても、かずにぃに抱かれそうになったことは事実な訳で・・・
時折、本当にふとした瞬間に、あの日の夜の感覚が私の体に蘇ってきて、胸を熱くする。
まだ、過去の事だってふっきれていない自分がいる。

やっぱり、トオル君には言わない方がいいのかな。
でも・・・、それって、ズルイのかな。

「いいけどさ。後悔しない恋をしなよ!ハルナ」

トモが珍しく、大真面目な顔で言った。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


ワルツ

2005年10月31日 23時56分48秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
その夜はなかなか寝付けなかった。

私はすやすやと寝息を立てて眠るトモとスズを起こさないようにそっとベッドから抜け出すと、カーディガンを羽織って外へ出た。
洋風の別荘の中にはキレイに手入れされたパテオがあった。

「すごい・・・。どの花も手入れが行き届いてる・・・」
私がベンチに腰を下ろそうとすると、微かにピアノの音が聞こえてきた。
誰が弾いてるんだろう。

何だか心に染み入るような切ない曲・・・

私はピアノの音のする方へ歩いていった。
「トオル君?!」
私の声に、ピアノの演奏が中断してしまった。


「どうしたの?もしかして、ハルナちゃんも寝れないの?」
「・・・も、って。トオル君・・・も?」
「・・・何となくね・・・」

私はトオル君の近くまで歩いて、トオル君の顔を覗き込んだ。
月の光の加減のせいか、普段から白い肌がより青白く見えた。

「トオル君、ピアノも弾けたんだね」
「・・・遊び程度にね」
「ふーん。でも、私はピアノなんて全く弾けないけど、凄く上手だったような気がする。
さっき、弾いてたのって、なんて曲?」
「ショパンの夜想曲、ノクターンだよ」

そう言いながら、彼はピアノをしまい始めた。
「もっと弾いてほしいなぁ」
「寝れないんだったら、軽く体を動かそうか?足は大丈夫?」
彼の言葉に私は胸がどきっとした。

「何を、するの?」
トオル君は部屋の隅っこに行くと、1枚の黒い円盤を手に持ち、プレイヤーの針を落とした。
「うっわぁー。このプレイヤー、すんごくレトロな感じがするねぇ。この黒いのは?」
「レコードだよ。CDが発明される前は大部分がずっとこれだったんだって」

時折、ポツポツとノイズが入るとても古いレコードは、不安定で懐かしい音を出し始めた。
「この曲、聴いた事がある・・・。なんて言う曲?」
「ヨハン・シュトラウスの『美しく青きドナウ』だよ。
有名なウィンナ・ワルツなんだ。良かったら踊ろう・・・」
「えええ?!無理だよ!踊れない!!ムリムリムリ!!」
「大丈夫だよ。僕が右足を出したら、君は左足を引いて、逆に僕が引いたら、君は足を一歩出す。そして、横に出したら、君も同じようにすればいい。
後は、リードを任せて」

トオル君の差し出す手に手を乗せて、後は彼のリードに任せて踊った。
「トオル君って、ホント、出来ないことってないんじゃないのかな?」
私の素朴な疑問に、彼は、
「そんなことないよ。出来ないことばっかりだよ。
特に、どうしたら僕の目の前にいる女の子にもっと好きになってもらえるのか、只今、奮闘努力中だしね」
と、笑いながら私を持ち上げてクルクル回した。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


くちびる

2005年10月31日 23時18分43秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
別荘に向かう車中――――
私達は黙って、車の中で手を繋いでいた。
トオル君はその手をゆっくりと開くと、徐々に私の指を開きその間に彼の指を滑り込ませてきた。
私の全神経が手に集中し、息が震えていた。

「着きましたよ」
と、言う運転手さんの声に現実に引き戻された。

「え!ここが!?」
私は言葉を呑み込んだ。

古い洋館の作りながらもとても大きな別荘だった。
古い煉瓦造りのその家の庭は今もなお若々しい新芽を出す花々で埋め尽くされていた。

車の到着を聞きつけたトモやスズ達が家の中から出てきて、
「おっそいよ~!心配したんだからね~」
と、プンプンに怒っていた。

トオル君の友人達も「そうだよ。おっせーよ!」と、抗議の声を挙げていた。

私達は「ごめんなさい」と謝ると、彼らを宥めて一緒に広間の方に行った。

赤々と明かりが灯る広間に入ると、突然、トモが、
「あれぇ?トオル君、口紅付いてるよ」
と、言った。
トオル君は、慌てて、「ホント?!」と、唇を押さえながら真っ赤になっていた。
私も慌てて、唇を押さえてしまっていた。

「・・・そこじゃ、な・く・てぇ~・・・、シャツの胸の辺りのことを言ったんだけど・・・」
みんなの疑惑の目は私の方にも向けられた。

「この二人、チョーあやっしぃ~」
「なんかあったのぉ?」
「俺、ハルナちゃん狙いだったのに、なんでトオルが連れ出してんだよ!」
「それを言うんなら私こそトオル君狙いだったんだよぉ」
と、皆が皆、大きな膨れっ面をしながら怒っていた。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


キス、キス、キス

2005年10月30日 23時00分24秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
私達は湾岸沿いに海を眺めながら、運転手さんの待つ江ノ島駅へと向かった。

水面に優しく月の光が反射していた。
私達は暫く海の波の音を聞いていた。
この優しい波の音も、柔らかい月の光もトオル君だ。
温かく私を包み込む・・・
決して情熱的ではないけれど、優しく私の心の中に染み込んで来る温かな彼の思い。

私は安らぎを感じて、ゆっくりと彼の胸に頬を寄せた。

そっと、顔を上げると、そこにはトオル君の優しい眼差しがあった。
「・・・ハルナちゃん。さっきのお礼、今貰ってもいいかな?」
トオル君はいたずらっぽく笑い、そして次の瞬間、真剣に私の顔を覗き込んだ。


私達二人は自然に目を閉じて、唇を重ねた。


それから、私達は何度も何度もキスをした。
何度目かのキスでトオル君は私を抱いたままその場に座り込み、私をきつく抱きしめると、更にキスを求めてきた。
息をするのも忘れて私達は夢中になってキスをした。

「さっきは本当はこうしたかった」
「・・・じゃ、どうして・・・」
そうしなかったの・・・

「ラブホじゃ、嫌だったんだ、初めてのキスも、・・・それから、その先も・・・」
トオル君は私を抱きしめると、またキスをした。

・・・気が遠くなりそう。
唇を離す間もないキス。

波の音も、月の光ももう私には届かなかった。

感じるのはトオル君の体温と吐息だけ・・・・・・

私は、この時、はっきりと自分の気持ちに気が付いたんだ。
「・・・好き」
私が好きな人はトオル君だったんだ――――――
「トオル君が・・・好き・・・」

私の言葉に「嬉しいよ・・・」と、はにかむように呟くと、彼は私の両頬に手をあてがい、目眩のするような深いキスをしたんだ。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


雨の後

2005年10月30日 22時00分37秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
突然抱きしめられたので、私はビックリしてドライヤーから手を離してしまった。

ゴトン

熱風で熱くなったドライヤーは私の捻挫した方の右足の甲に勢い良く落ち、熱風が足に向かって噴き出した。

「いたっ!あつっ!」
「ハルナちゃん!」

トオル君はびっくりして、私を抱き上げるとバスルームに連れて行き、直ぐに水で冷してくれた。

「・・・ごめん」
「あ。ヘーキ。気にしないで」
そんな顔しないで・・・。
抱きしめられて嬉しかった。
本当は、そう言いたかった・・・。


トオル君は受付のおばさんからもう一枚湿布を貰ってきて、今度は私の足の甲にそぉっと貼ってくれた。
「ハルナちゃん、あの・・・」

トオル君が何かを言いかけた時、運転手さんからケイタイに電話が入った。

「浴衣を着せるから、軽く羽織って」
トオル君は、私に浴衣を渡すと背を向けた。

「浴衣、着たよ」
私が、告げると彼は振り向き、
「立っているのはつらいと思うけど、暫く我慢してて」
私は彼の鮮やかな着付けに感心するばかりだった。

「じゃ・・・、出ようか」
「・・・うん」
何だろう、この物足りないような感じは・・・
急に切なさが込み上げてきた。

フロントではおばさんが、
「ああ。日本語の上手な外人さん。彼女は大丈夫だったかね?」
と、心配そうに尋ねてきた。
「先程は、湿布、どうも有り難うございました。助かりました」
そう言ってトオル君がお金を払おうとすると、
「いいよ。そんなの。彼女がそんなんじゃ、どうせなぁんも出来なかったんだろ?」
と、おばさんはトオル君に同情しつつ、手を横に振りながら言った。

外は雨の去った後で少し涼しくなっていた。
花火の後で混んでいた道も大分すいていた。

トオル君はひょこひょこ歩く私に気付き、
「抱っこしてあげるからおいで」
と言うと、三度、私を抱き上げた。




人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


健全

2005年10月29日 07時17分47秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
「ハルナちゃん・・・」
「・・・はい?」
微かに震える声で相槌を打つのが精一杯だった。

トオル君の広い胸の中にすっぽり包まれて、思考不可能だ。
心臓の音がバクバク言ってる。
・・・これはトオル君の心臓の音?それとも、私?

どれ位、抱きしめられていたんだろう・・・
トオル君は私から体を離すと、
「時間がない・・・始めます・・・か」
と、言ってやおら立ち上がり、洗面台の方へ向かった。

暫くするとカチカチと言う音と共にドライヤーの音がした。

私は取り残されたような、ちょっと惨めな思いがした。
・・・私、魅力ないのかな・・・
そんな考えに、自分自身でびっくりした。

私は頭を振ると、
「トオル君、私がやるからいいよ!」
と、洗面台にいるトオル君からドライヤーを奪い取った。

ブォーっと言う軽快な轟音に、隣りの淫らな声はたちまち掻き消されてしまった。
「ふふっ♪ラブホでこんな健全なことしてるのって私達くらいだよね」
と、言えるゆとりも出てきた。

「・・・じゃ、不健全なことでもする?」
トオル君はそう言うとそっと後ろから抱きしめてきた。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


気持ち

2005年10月28日 23時20分08秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
「はい。もしもし。・・・佐々原か。・・・え?!そっか。・・・うん、大丈夫だよ。
え・・・っと」
トオル君は言葉を切ると、一瞬、私の方をチラッと見て、
「あー、一緒だけど・・・。え!違うよ!・・・江ノ島の駅・・・の近くかな。
・・・うん。・・・うん。・・・分かった。じゃぁ、また後で」
と、言ってケイタイを切った。

「どうしたの?」
私が尋ねると、
「佐々原達、今、カラオケだって。それが終ったら、家に来るって。・・・それで・・・」
「それで?」
「・・・・・・まさか、僕達がラブホに入っているんじゃないだろうなって言ってたよ」
トオル君は、複雑そうな顔をして答えた。

私は言い当てられた恥ずかしさで真っ赤になってしまった。
「江ノ島の駅にいるってことにしといたから」
「うん」
私は小さく頷いた。

トオル君は、ベッドに腰掛けると、私の方をじっと見ていた。
そして、タオルを頭から外すと、私の方に手を伸ばしてきた。

・・・来る!

私が身構えていると、その手は私を通り過ぎて、
「どうせ聞くなら、音楽の方が楽しいよね」
トオル君は、そう言いながら音楽のチャンネルを回し始めた。

・・・抱きしめられるのかと思った。
私はちょっとほっとしたような、残念なような・・・えっ!?残念?
私の中にトオル君に抱いて欲しいと思う気持ちがあるの?
・・・自分で自分の気持ちが分からない。
・・・どうして?


そんな考えを廻らせていた時、チャンネルからチャンネルへと移る無音の合間を縫って、時折、隣りの部屋から、男女の喘ぎ声と、ベッドの軋む音が聞こえてきた。

ふと、トオル君と目が合ってしまった。
私は真っ赤な顔を見られるのが恥ずかしくて咄嗟に彼から目を背けて、顔を手で覆ってしまった。

隣りからの喘ぎ声は段々激しくなってきて、もう音楽では掻き消せなかった。

不意にトオル君は、下を向きながら口をきゅっと結ぶと、私の両腕を掴み、その胸に私を抱き寄せた。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


緊張

2005年10月28日 23時13分29秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
私がお風呂から上がると、ベッドに転がってトオル君は熱心に「利用案内」を読んでいるところだった。

「お先に。アリガト。トオル君、どうぞ」
「お帰り」
と、トオル君は微笑むと、ベッドから起き上がった。

そして、私に、
「ここに座って」
と椅子を差し出した。

「フロントのおばさんに貰ったんだ」
トオル君は冷蔵庫に閉まった湿布を出して、私の腫れた右足首に貼ってくれた。
「いつの間に・・・。有り難う・・・」
トオル君は何も言わず、柔らかく笑うと、
「じゃ。お風呂に入ってくるから、ハルナちゃんもくつろいでて」
私の頭をポンと叩いて、バスルームへと向かった。

私は改めてベッドルームを見回して、呆然とした。
ベッド・・・おっきぃ・・・

段々、胸がドキドキしてきた。
壁が薄いのか時折、どこかの部屋から女の人の叫ぶような甲高い声が聞こえてきて、胸がきゅっとなった。
このラブホは満室で・・・ってことは、つまり、みんな・・・その、してるってことで・・・。
私は全身が火照ってくるのが分かった。

「私が嫌がることはしないって言ってたけど・・・でも・・・」
トオル君が、バスルームでシャワーを浴びる音がした。
その音を聞いただけで、体がどんどん熱くなる・・・。

トオル君はどんな気持ちでこのベッドの上で「利用案内」とか読んでたんだろう。

・・・・・・僕は好きだよ。
・・・君のことが

トオル君の言った言葉を思い出し、今更ながら胸がドキドキしてきた。

私はベッドの上で、じっとしていられなくなって、辺りをキョロキョロ見回していたら、ふと枕元に機械のような物があることに気が付いた。

「あれ?!これ、FMとかAMとかって書いてあるけど・・・、ラジオ?」
機械をあれこれいじっていると、街の雑踏音とか、駅のホームの音とか面白い音が聞こえてきた。
「なんで、こんなものが入っているのかなぁ」
と、私が訝しがっていると、
「アリバイ工作サウンド、じゃないかな」
と、背後からトオル君の声がした。


突然の声に私は全身がびくっとした。
「トオル君、もう上がったの!?」
彼はバスローブに身を包み、タオルで頭を拭きながら出てきたところだった。

「うん。もうソロソロ始めないと、時間ないしね」

え?!は、始めるって・・・何を??
まさか・・・

私の体が緊張のあまり強張ってきた。

その時、
「○×行きの電車が発車致しますぅ~」
と、間延びした電車の発車を告げる放送がタイミング良く掛かった。

「凄いタイミングだね」
と、トオル君は言うなりいきなり噴き出し、私もつられて噴き出してしまった。
緊張していた気持ちが一気にほぐれて行く。

二人で大笑いしていると、トオル君のケイタイが鳴った。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


バスルーム

2005年10月27日 10時39分29秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
「でも、何でトオル君、そんな事知ってるの?」
やっぱり、トオル君はラブホ慣れしているのでは・・・と疑ってしまった。
「うちにもあるから。これ」
「一般家庭に?!」
「うん」
「ジャグジーが?!」
「そう」
トオル君の謎は深まるばかりだ。

そうこう話している内に確かにジェットの勢いが止まってきた。
「あ~。ホントだ。トオル君の言った通りだねぇ。良かったぁ」
と、胸を撫で下ろして・・・・・・・いる場合じゃないよ!!

「な、なんで!!トオル君、こっ、ここにいるの!!」
私は初めてこの状況に気付いた。
「だって、君が呼んだから・・・」
「呼んでも来ちゃだめ」
「・・・矛盾してるなぁ」
トオル君はくしゃくしゃな顔をして笑うと、また、ジャグジーのボタンをポンと押した。

「きゃー!せっかく止まったのに!何でまた押すの!!トオル君のイジワル!!!!」
そんな私の抗議の声を無視して、トオル君はシャンプー台付近で何やらガサガサ探し始めて、
「あった」
と、言いながら、何かの袋を破くと、白い液体をバスに流し込んだ。


暫くすると、シャボン玉のような泡が湯船いっぱいに広がり、ふわふわの泡風呂になっていった。
「わぁ~!すご~い・・・。何だか外国の映画で見るお風呂みたいだねぇ~」
私は、パチパチ手を叩きながら喜んだ。
「君って、ホント、無邪気だね・・・」

トオル君は、笑いながらバスルームから出て行こうとした。
私は、トオル君の背中に向かって、
「ごめんね。それと、ありがとう」と、お礼を言った。

トオル君は戸を閉めながら、
「どういたしまして。・・・お礼は後で貰おうっかな」
と、笑った。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


パニック

2005年10月26日 22時51分58秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
「じゃぁ。そっちに、ドライヤーと浴衣、持って行きます」
と、私は言いながら洗面台まで来てぎょっとした。
このドライヤー・・・据え付けてある。
移動できないって事は・・・。
まさかトオル君、このお風呂の前でドライヤー掛けるつもりなの?!

・・・この戸・・・ガラスで・・・丸見えなんですけど・・・中が・・・。

「あの。トオル君、いいよ。ドライヤー、しなくても」
私は冷や汗を流しながら大きな声で話し掛けた。

トオル君は、「何?どうしたの?そっちに行ってもいいかな?」と尋ねた。
彼は私が手に持ったドライヤーとガラス扉を見て瞬時に事態を把握してくれた。

「じゃぁ、ハルナちゃんが上がってからドライヤーで乾かすよ。
ゆっくり入っておいでよ」
と、言ってくれた。

ほっ・・・

私は、真っ暗なお風呂に入っていった。
電気を点けたかったんだけど、その場所が結局分からなかった。

お風呂に入ると何となく家のと違う。
ごつごつする変なお風呂・・・

「あれ?このボタンなんだろう?」
ボタンを押すと、いきなり色々な明かりが点いて物凄い勢いでお風呂が噴出した。

「きゃーーーー!!なになに??」
私はびっくりして大声で叫んでしまった。

「どうした!」
トオル君が、慌てて駆けつけお風呂の扉を開けた。
「・・・一体、どうしたの?ハルナちゃん」
「あ!トオル君!!どうしよう!私、お風呂壊しちゃったみたい」
「え?一体、何をしたの?」
トオル君は冷静だった。

「私がこのボタンを押したらお風呂が、ほら、ボコボコになっちゃって・・・」
私は、半べそをかきながら答えた。

すると、トオル君はぷーっと噴き出すと、大きな声でゲラゲラ笑った。
「あのね。ハルナちゃん、これ、ジャグジーだから」
「え?!」
私は目が点になった。

ジャグジー・・・
なんかの本で読んだことがある。
確か、泡が出るお風呂の事だっけ・・・?

「あ!でも、止まんないよ。ブクブクが」
と、私が反論すると、トオル君は、
「暫くしたら止まるよ。自然にね」
と、やっぱり大笑いして言った。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS