丼大全1の続き。
<うな丼>
そもそもうなぎの拵え方が東西で異なるのはご承知の通り。東はまず背開き、そして一尾を2~3切れにして竹串を刺す。そして素焼きして蒸し、そしてたれをつけて焼く。西は腹開きで、頭をつけたまま切らずに5尾ほどまとめて金串に刺す。そして蒸さずに香ばしさを生かして焼く。そこにまず地域性が出る。
「江戸前うな丼」
全国的に標準のうな丼と言えば東京風のことを指すのだろう。ちょっと2、3触れる。
僕は京都生まれであるので、関東風の蒸したうなぎは小さい頃食べたことなかった。それで初めて食べたときは、「うわぁ美味しい」とさすがに思った。味覚は完全に関西人の僕だが、うなぎは東京に脱帽である。初めて「野田岩(高島屋の支店だが)」に行った時、「志ら焼丼」そして「中入れ丼」を食べた。ふんわりとしたうなぎは絶妙である。白焼きはわさびをたっぷりつけて醤油であっさりといただく。これも美味い。値段もそれ相応ではあるけれども。
「ひつまぶし」
これが丼か?と言う意見はさておいて、今や全国区の「名古屋の櫃まぶし」である。知らない人は少数派だと思うが、うなぎは細かく刻まれ、めしにのっけて「櫃」に入って出てくる。そこから各自よそって食べる訳だが、一膳目はそのまま、二膳目は葱、海苔、山葵などの薬味を混ぜて、三膳目は出汁をかけてお茶漬け風で食べる。「あつた蓬莱軒」で最初食べたが美味いものだなあ。変化するのが嬉しい。
「きんし丼」
京都の「かねよ」では、大きく焼いたふんわり出し巻き卵をうな丼の上に乗せて供する。卵とご飯の間でうなぎが程よく蒸されて柔らかくなる。蒸さない直焼きの関西ではいろいろ工夫をしている。しかし錦糸玉子ではなくふわふわ出し巻きをのせているのになんで「きんし丼」なんだろう。
「まむし」
大阪では、前述した直焼きうなぎの対処法として、あつあつのご飯の間にうずめて供する。めしの間でほどよく蒸されて柔らかくなる。関東の「中入れ」と同じ。これが「まむし」。何故まむしと言うかについては、うなぎの形状が蛇に似ているからではなくつまり「間蒸し」であると言われる。また「飯(まま)蒸し」からとも。道頓堀の「いづもや」では、上にうなぎが乗っていないうな丼がある。つまり、掘り返さないと出てこないというわけ。
「せいろ蒸し」
福岡柳川では、焼いたうなぎをご飯と共にせいろの器にあつらえ、タレをしみこませてそれごと蒸し上げる。うなぎとご飯が完全に一体となって、タレもごはん一粒一粒にまぶさって美味いんだな。「元祖本吉屋」でいただいたが、また食べたくてしかたがなくなる。
<海鮮丼>
海鮮丼の定義は難しく、ちらし寿司を範疇に入れてしまえば無限に広がる。
そもそもちらし寿司と言うものも地域性があるのではないだろうか。僕達の子供の頃の京都では、刺身をめしの上にづらづらと並べて供するかたちのちらし寿司はなかったような気がする。調理した穴子や海老、桜でんぶや錦糸玉子などを綺麗にもりつけたものだと思っていたのだが…。また「寿司編」でも書いて分類してみようかと思う。ここではほんの少しだけ触れる。
「うに丼」
北海道ではあちこちで「うに丼」を供されるが、口コミで聞いた積丹の「なぎさ食堂」のうに丼は本当に美味かった。夏季限定の季節営業店でうに丼だけしかメニューにない店なのだが、あまりの美味さに翌年も札幌から車飛ばして食べに行ってしまった。絶品だと思う。トロリとしたうにの味わいは新鮮さそのものだ。
ところで、個人的なことなのだけれども、礼文島あたりでうに丼を注文すると、煮てタマネギと一緒に卵でとじたものが出てきたりする。いくら産地とは言えあれはうにがもったいないと思うのだが…。
「いくら丼」
「いくら丼」もあちこちで食べられるが、僕はやはり小樽の「一心太助」が好きだ。有名店なのであまりにもお客さんが多いが、質量値段全て秀逸だと思う。一番最近食べたのは4年くらい前だけれども、昔あった長蛇の列は治まっていた。かつてはカウンターに座っても後ろに人が並んでいて急き立てられるようで閉口したものだったが、今は情報量豊富な時代で客も分散しているのだろう。
ついでなのだが、釧路の和商市場では、「勝手丼」なるものが流行っている。市場でご飯を買って、市場内各々の店で海鮮類を少しづつ買ってのっけてもらって食べる…という趣向なのだが、あれは案外高くつく。あれもこれもと乗っけるからだろうが、市場で売ってるご飯が結構高いのだな。ほか弁のご飯を持ち込んだら怒られるのかな?
<その他の丼>
「豚丼」
帯広名物の「豚丼」。狂牛病問題で某吉野家その他が供した豚丼とは全く違うもので、厚く切った豚にタレをつけて炭火で焼き、ご飯の上にたっぷりのせた丼で、香ばしくて実に美味い。帯広に行けばどうしても食べてしまうものです。有名な駅前の「ぱんちょう」を始め、各店舗でメニューに載せられ、駅弁にまで登場している。
「深川丼」
江戸前丼の代表選手で、あさりをネギといっしょに味噌で味付けしてめしにぶっかけて食べる逸品である。
さて、この深川丼なるものはバリエーションがあって、どれが正統なのかよくわからない。「深川めし」と言われるあさりを炊き込んだもの、そして前述のめしに味付けあさりをのせたもの、そしてあさりの剥き身の味噌汁をめしにかけた、いわゆる味噌汁かけごはん(カッコよく言えば芳飯)と、いろいろ種類がある。好みなんですけどね。
「木の葉丼」
木の葉丼なる丼を関東の人に聞くと「知らない」という。関西(特に京都)では一般的でうどんやにはたいていメニューにあるのに。これは、かまぼこやしいたけ、三つ葉を卵でとじた丼なのだが(親子丼の鶏肉がかまぼこになったものに近い)、どうも関西限定らしい。僕の親父はこれが大好物でいつも食べているのだが。なんで「木の葉」か? と問われれば窮してしまうのだけれど。
ついでに書くと、関西限定(らしい)丼は他に「きつね丼」がある。これは細かく刻んだ油揚げと九条ネギを煮てめしにのせたもの。きつねうどんと言えば甘辛く煮た大きな揚げがのっているが、丼では細かく刻む。大阪では「信太(しのだ)丼」とも言う。これは大阪に信太山という場所があっていわれのある稲荷神社があるからだが。このきつね丼を卵とじにすると「衣笠丼」となる。これも京都では普通のメニュー。
また「他人丼」も関西以外では一般的でないらしい。これは親子丼の鶏を牛肉に変えたものだが(牛と卵だから親子じゃなくて他人)、普通のメニューだと信じていたら他所ではあまりない。まれに関東方面では「開化丼」と言うらしい(四足のものは文明開化の象徴だからか)。ただ、牛じゃなくて豚を使ったりすると聞く。
まれに関西では「いとこ丼」というのもあって、これは鶏ではなく鴨を使うので、鳥の仲間だから従兄弟ということか。ちょっとこれは行き過ぎのような気もするが。
丼については以上で終わるが、もう一編蛇足を付け加えさせて欲しい。「めし」ものではなく「ライス」の世界を少しだけ書いてみたい。次回に続く。
<うな丼>
そもそもうなぎの拵え方が東西で異なるのはご承知の通り。東はまず背開き、そして一尾を2~3切れにして竹串を刺す。そして素焼きして蒸し、そしてたれをつけて焼く。西は腹開きで、頭をつけたまま切らずに5尾ほどまとめて金串に刺す。そして蒸さずに香ばしさを生かして焼く。そこにまず地域性が出る。
「江戸前うな丼」
全国的に標準のうな丼と言えば東京風のことを指すのだろう。ちょっと2、3触れる。
僕は京都生まれであるので、関東風の蒸したうなぎは小さい頃食べたことなかった。それで初めて食べたときは、「うわぁ美味しい」とさすがに思った。味覚は完全に関西人の僕だが、うなぎは東京に脱帽である。初めて「野田岩(高島屋の支店だが)」に行った時、「志ら焼丼」そして「中入れ丼」を食べた。ふんわりとしたうなぎは絶妙である。白焼きはわさびをたっぷりつけて醤油であっさりといただく。これも美味い。値段もそれ相応ではあるけれども。
「ひつまぶし」
これが丼か?と言う意見はさておいて、今や全国区の「名古屋の櫃まぶし」である。知らない人は少数派だと思うが、うなぎは細かく刻まれ、めしにのっけて「櫃」に入って出てくる。そこから各自よそって食べる訳だが、一膳目はそのまま、二膳目は葱、海苔、山葵などの薬味を混ぜて、三膳目は出汁をかけてお茶漬け風で食べる。「あつた蓬莱軒」で最初食べたが美味いものだなあ。変化するのが嬉しい。
「きんし丼」
京都の「かねよ」では、大きく焼いたふんわり出し巻き卵をうな丼の上に乗せて供する。卵とご飯の間でうなぎが程よく蒸されて柔らかくなる。蒸さない直焼きの関西ではいろいろ工夫をしている。しかし錦糸玉子ではなくふわふわ出し巻きをのせているのになんで「きんし丼」なんだろう。
「まむし」
大阪では、前述した直焼きうなぎの対処法として、あつあつのご飯の間にうずめて供する。めしの間でほどよく蒸されて柔らかくなる。関東の「中入れ」と同じ。これが「まむし」。何故まむしと言うかについては、うなぎの形状が蛇に似ているからではなくつまり「間蒸し」であると言われる。また「飯(まま)蒸し」からとも。道頓堀の「いづもや」では、上にうなぎが乗っていないうな丼がある。つまり、掘り返さないと出てこないというわけ。
「せいろ蒸し」
福岡柳川では、焼いたうなぎをご飯と共にせいろの器にあつらえ、タレをしみこませてそれごと蒸し上げる。うなぎとご飯が完全に一体となって、タレもごはん一粒一粒にまぶさって美味いんだな。「元祖本吉屋」でいただいたが、また食べたくてしかたがなくなる。
<海鮮丼>
海鮮丼の定義は難しく、ちらし寿司を範疇に入れてしまえば無限に広がる。
そもそもちらし寿司と言うものも地域性があるのではないだろうか。僕達の子供の頃の京都では、刺身をめしの上にづらづらと並べて供するかたちのちらし寿司はなかったような気がする。調理した穴子や海老、桜でんぶや錦糸玉子などを綺麗にもりつけたものだと思っていたのだが…。また「寿司編」でも書いて分類してみようかと思う。ここではほんの少しだけ触れる。
「うに丼」
北海道ではあちこちで「うに丼」を供されるが、口コミで聞いた積丹の「なぎさ食堂」のうに丼は本当に美味かった。夏季限定の季節営業店でうに丼だけしかメニューにない店なのだが、あまりの美味さに翌年も札幌から車飛ばして食べに行ってしまった。絶品だと思う。トロリとしたうにの味わいは新鮮さそのものだ。
ところで、個人的なことなのだけれども、礼文島あたりでうに丼を注文すると、煮てタマネギと一緒に卵でとじたものが出てきたりする。いくら産地とは言えあれはうにがもったいないと思うのだが…。
「いくら丼」
「いくら丼」もあちこちで食べられるが、僕はやはり小樽の「一心太助」が好きだ。有名店なのであまりにもお客さんが多いが、質量値段全て秀逸だと思う。一番最近食べたのは4年くらい前だけれども、昔あった長蛇の列は治まっていた。かつてはカウンターに座っても後ろに人が並んでいて急き立てられるようで閉口したものだったが、今は情報量豊富な時代で客も分散しているのだろう。
ついでなのだが、釧路の和商市場では、「勝手丼」なるものが流行っている。市場でご飯を買って、市場内各々の店で海鮮類を少しづつ買ってのっけてもらって食べる…という趣向なのだが、あれは案外高くつく。あれもこれもと乗っけるからだろうが、市場で売ってるご飯が結構高いのだな。ほか弁のご飯を持ち込んだら怒られるのかな?
<その他の丼>
「豚丼」
帯広名物の「豚丼」。狂牛病問題で某吉野家その他が供した豚丼とは全く違うもので、厚く切った豚にタレをつけて炭火で焼き、ご飯の上にたっぷりのせた丼で、香ばしくて実に美味い。帯広に行けばどうしても食べてしまうものです。有名な駅前の「ぱんちょう」を始め、各店舗でメニューに載せられ、駅弁にまで登場している。
「深川丼」
江戸前丼の代表選手で、あさりをネギといっしょに味噌で味付けしてめしにぶっかけて食べる逸品である。
さて、この深川丼なるものはバリエーションがあって、どれが正統なのかよくわからない。「深川めし」と言われるあさりを炊き込んだもの、そして前述のめしに味付けあさりをのせたもの、そしてあさりの剥き身の味噌汁をめしにかけた、いわゆる味噌汁かけごはん(カッコよく言えば芳飯)と、いろいろ種類がある。好みなんですけどね。
「木の葉丼」
木の葉丼なる丼を関東の人に聞くと「知らない」という。関西(特に京都)では一般的でうどんやにはたいていメニューにあるのに。これは、かまぼこやしいたけ、三つ葉を卵でとじた丼なのだが(親子丼の鶏肉がかまぼこになったものに近い)、どうも関西限定らしい。僕の親父はこれが大好物でいつも食べているのだが。なんで「木の葉」か? と問われれば窮してしまうのだけれど。
ついでに書くと、関西限定(らしい)丼は他に「きつね丼」がある。これは細かく刻んだ油揚げと九条ネギを煮てめしにのせたもの。きつねうどんと言えば甘辛く煮た大きな揚げがのっているが、丼では細かく刻む。大阪では「信太(しのだ)丼」とも言う。これは大阪に信太山という場所があっていわれのある稲荷神社があるからだが。このきつね丼を卵とじにすると「衣笠丼」となる。これも京都では普通のメニュー。
また「他人丼」も関西以外では一般的でないらしい。これは親子丼の鶏を牛肉に変えたものだが(牛と卵だから親子じゃなくて他人)、普通のメニューだと信じていたら他所ではあまりない。まれに関東方面では「開化丼」と言うらしい(四足のものは文明開化の象徴だからか)。ただ、牛じゃなくて豚を使ったりすると聞く。
まれに関西では「いとこ丼」というのもあって、これは鶏ではなく鴨を使うので、鳥の仲間だから従兄弟ということか。ちょっとこれは行き過ぎのような気もするが。
丼については以上で終わるが、もう一編蛇足を付け加えさせて欲しい。「めし」ものではなく「ライス」の世界を少しだけ書いてみたい。次回に続く。