古細菌とα-プロテオバクテリアとの共生が次の生命進化のステップである「多細胞化」へと進むためには、乗り越えなければならない大きな壁がありました。なぜ細胞同士が協力して生きていく多細胞化が必要かというと、細胞は自ら食料を獲得しなければ30分と生きていくことができないからです。生命は寿命が長くなければ子孫を安定的に残せません。細胞の寿命を延ばすには、細胞が役割分担をすることが必要でした。つまり、餌を捕まえる細胞、その餌を消化する細胞、栄養を全身に運ぶ細胞などが一緒になって個体を形成することです。それには、細胞同士が争いをやめる必要がありました。細胞は自らを増やすため、餌をめぐって本能的に他の細胞と争います。他の細胞と接触した時には、その細胞を倒してでも増殖を続けようとします。これでは、細胞同士が協調して多細胞化し、臓器や個体へと成長していくことはできません。寿命を延ばすことができないのです。「子孫を残す」という生命の究極の目的が、細胞同士の戦争に歯止めをかける増殖制御装置の構築に繋がったのです。
人間の体内には約60兆個の細胞が存在し、協調して生きています。それらの細胞がめったにガン化しないのは増殖制御装置が正確に作動しているからです。ところが、何かの拍子にこの装置が機能しなくなり、進化した動物の中にも分裂、増殖に歯止めのかからない細胞が出てきます。これがガン細胞です。ガン細胞は先祖返りした未熟な細胞です。正常細胞は、それぞれが自分に与えられた役割を果たすために分化していますが、ガン細胞は自らに課せられた役目を放棄し、自分勝手に増え続けることだけを目的にした遺伝子のみを機能させています。
分化した細胞では、分裂、増殖してもお互いが接触した際には争いを避け、細胞間の紛争を未然に防ぐシステムが確立されています。細胞に備わった最も強力な増殖制御装置がcontact inhibition(接触阻止)です。細胞同士は接触阻止の法則に従って相手の立場を尊重すると共に、お互いの情報をやり取りして自分たちはどのような働きをすればよいのかを認識します。国と国とが主権を尊重しつつコミュニケーションを取り合って、互いに発展していくのと同様です。私たちの祖先が単細胞の壁を乗り越え、多細胞化し、人体というグローバルな小宇宙にまで進化できたのは、この接触阻止という戦争をしない遺伝子のおかげなのです。接触阻止遺伝子は、いわば、遺伝子の憲法9条です。この遺伝子を無力化し、戦争ができるようになった細胞がガン細胞です。
人間の体内には約60兆個の細胞が存在し、協調して生きています。それらの細胞がめったにガン化しないのは増殖制御装置が正確に作動しているからです。ところが、何かの拍子にこの装置が機能しなくなり、進化した動物の中にも分裂、増殖に歯止めのかからない細胞が出てきます。これがガン細胞です。ガン細胞は先祖返りした未熟な細胞です。正常細胞は、それぞれが自分に与えられた役割を果たすために分化していますが、ガン細胞は自らに課せられた役目を放棄し、自分勝手に増え続けることだけを目的にした遺伝子のみを機能させています。
分化した細胞では、分裂、増殖してもお互いが接触した際には争いを避け、細胞間の紛争を未然に防ぐシステムが確立されています。細胞に備わった最も強力な増殖制御装置がcontact inhibition(接触阻止)です。細胞同士は接触阻止の法則に従って相手の立場を尊重すると共に、お互いの情報をやり取りして自分たちはどのような働きをすればよいのかを認識します。国と国とが主権を尊重しつつコミュニケーションを取り合って、互いに発展していくのと同様です。私たちの祖先が単細胞の壁を乗り越え、多細胞化し、人体というグローバルな小宇宙にまで進化できたのは、この接触阻止という戦争をしない遺伝子のおかげなのです。接触阻止遺伝子は、いわば、遺伝子の憲法9条です。この遺伝子を無力化し、戦争ができるようになった細胞がガン細胞です。
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