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生命とは何か

2018年03月05日 08時04分34秒 | 健康
ガン細胞は生命誕生初期の未熟な状態に先祖返りした細胞です。ガン細胞の生い立ちを知るには、まず生命発生の起源に遡ることが必要です。

生命とは「同型のものを複製して自己増殖する有機的な物質」と定義されています。今から約40憶年前、地球上で生命はリボ核酸(RNA)やデオキシリボ核酸(DNA)として登場しました。RNAやDNAは遺伝情報を記録する物質です。今でもRNAやDNAだけを複製して生きている生命体がいます。それはウイルスです。ウイルスは自らの力ではRNAやDNAを合成できず、細胞に侵入し、細胞内でRNAやDNAを複製する装置を借りて増殖します。生命誕生の初期、RNAやDNAは海中の奥深い火山口の近くで、熱水が吹き出すエネルギーを化学反応に変えて複製されていたと考えられています。しかし、海中で化学反応によって自らを複製するのは余りにも増殖効率が悪かったのです。そこで、自らDNAを複製するための化学エネルギーを生み出すことができる細菌が登場しました。細菌のみの世界は10億年以上続きましたが、やがて生命の大躍進につながる大きな出来事が起きました。私たちの直接の祖先である古細菌と、大腸菌など好気性細菌の一種であるα-プロテオバクテリアとの共生です。酸素を利用できなかった古細菌は、酸素を利用して膨大なエネルギーを生み出すα-プロテオバクテリアの力を借りて巨大化し、種々の機能を営む細胞へと進化しました。細菌の大きさは約1立方ミクロン、細胞の大きさは約1,000立方ミクロンですから、細胞は1,000倍もの大きさに成長したのです。

α-プロテオバクテリアはその遺伝子のほとんどを細胞に預け、自らの意志では増殖できない細胞内小器官、ミトコンドリアに名前を変えました。なぜ、お互いに敵対していた細菌同士が共生するようになったのかは未だわかっていません。簡潔に表現すれば、お互いの利害の一致でしょうか。争わず、お互いに協力し合うことが生存のためには有利だったのでしょう。いわゆる戦略的互恵関係です。

古細菌とα-プロテオバクテリアとの共生は恐らく偶然の出来事だったのでしょう。生命は常に偶発的に起きる遺伝子変化、すなわち突然変異が生存に有利に働くことが条件となって進化します。1859年にチャールズ・ダーウィンとアルフレッド・ウォレスによって提唱された「自然選択説」です。「自然選択説」とは、進化を説明するうえでの根幹をなす適者生存あるいは自然淘汰の理論です。厳しい自然環境が選択圧となって、生物に無目的に起きる突然変異を選別し、進化に方向性を与えるという説です。α-プロテオバクテリアを取り込んで共生するという古細菌で起きた突然変異が、その後の生命進化を決定づけたのです。


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