origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

四方田犬彦『ハイスクール・ブッキッシュライフ』(講談社) 

2008-10-14 19:35:01 | Weblog
四方田の本は『空想旅行の修辞学』『アニマとしての読書』『ハイスクール1968』『日本映画史100年』に続き今回で5冊目。本書は少年期の読書傾向を綴った『アニマとしての読書』の続編となる。
著者が高校生だったころに影響を受けた書物について語ったエッセイだ。冒頭の『ヨハネ黙示録』はブレイク、ローレンスなどを交えつつ、新約聖書の黙示録について考察した批評である。ローレンスにとって黙示録とは、神学や哲学を知らぬ庶民のためのものだった。彼らは自らが持つ怒りを黙示録の中の過激な暴力にたくした。炭鉱夫の息子だったローレンスにとっては、ニーチェの反キリスト教的哲学さえも貴族主義的なものだった。
その他にはロートレアモン、ランボー、プルースト魯迅、ジョイス、カフカ、フォークナー、セリーヌ、ボルヘス、レアージュといった前衛好みの著者らしい対象が選ばれている。
ジョイス『ユリシーズ』の章では、ハインズとマリガンの対立に焦点が当てられている。アイルランドを研究するイギリスの民俗学者ハインズが豊かな者であるのに対して、アイルランド文化を重んじるマリガンは貧しい者である。支配する者・支配される者、持つ者・持たざる者の対立はこの長編小説の至るところに見受けられる。
プルーストの章では、著者のこの小説家に対する深い愛が露になる。『ガリヴァー旅行記』を修士論文に選んだのは対象と距離が取りやすかったからで、深く愛しているプルーストの小説などは研究対象にできなかった、という話は頷けた。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。