origenesの日記

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エリック・ホッファー『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』(作品社)

2008-09-23 22:24:12 | Weblog
労働者としての視点から哲学書を書き続けたホッファーの自伝。
彼はアーレントと同じく労働というのを極めて否定的に捉えており、人間は一日6時間、週5日以上は働くべきではない、余暇を他のことに費やすべきだ、と提言している。事実、彼は日雇い労働者として働きつつも、労働の余暇には本を読み、自らの思想を編み出していった。
貧しい環境で育った著者は弱者に目を向け、弱者による歴史に注目する。それはニーチェが強者の歴史を描き出そうとしたこととは対照的である(しかしホッファーのニーチェ批判は疑問も残る。ニーチェの力・強者とは経済的・社会的なコンテクストで捉えるべきものではないのでは)。名もなき無数の労働者によってつくられていく歴史。名もなき無数の労働者の中の一人によってつくられていく思想。
多くの者が労働に長時間、身を費やさなければならない現代においては、広く読まれるべき本である。職業の傍ら思索に勤しむことの重要さを教えてくれる。哲学書としては無類の読みやすさであり、彼がモンテーニュの『エセー』と出会って哲学に目覚めたという点は示唆的。

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